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助産師母娘が『母』と『ばあば』になった日 第2話|東京で帯祝



帯祝いに乗り気でなかった娘を変えたのは、娘婿の一言だった。そして腹帯を巻く前に、私にしかできないことをした。

帯祝いのために、東京へ

長女の妊娠が落ち着いてきた頃、帯祝いのために上京することになった。
高知から東京へ。娘のお腹に新しい命が宿っている。
そのことだけで、飛行機の中の私はずっとそわそわしていた。
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まず、墓前へ

東京に着いてすぐ、娘の嫁ぎ先のお墓へ向かった。

一昨年、お義父さんが亡くなった。帯祝いに行く前に、
まずそのことをご報告したかった。

これからお腹の子の帯祝いに行ってまいります。
どうか天国から、娘とお腹の子を見守ってください。

手を合わせながら、そう思った。きっと見守ってくださっている。そう信じている。
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「帯祝いってするん?」

実は娘は最初、帯祝いに乗り気ではなかった。
「帯祝いってするん?」「腹帯、よう巻かんけど…」
「戌の日じゃなくてもいいん?」

助産師のくせに、と思わないでもなかったが(笑)、
今どきの若い人にとって帯祝いはそれほど身近ではないのかもしれない。

ところが気がつくと、娘は暦を気にするようになっていた。
聞いてみると、娘の旦那さんが言ってくれたらしい。
「大切な日だから」「高知からせっかく来てくださるから」

二人で子どもを迎える親になる準備をしているんだな。
そう思ったら、胸がじんわりと温かくなった。
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水天宮、朝いちばん

東京で安産祈願といえば水天宮さんが有名らしい。
関西では中山寺、東京では水天宮さん。
戌の日や土日は参拝者が多く、神殿に上がるのに人数制限があるとのことだったので、戌の日をはずし、朝いちばんにお詣りした。
おかげで比較的ゆっくりお参りすることができた。
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夫が腹帯を買った

境内でお守り付きの腹帯が売られていた。
娘は「もったいない」と二の足を踏んでいた。
ところが夫が、さっと買ってやっていた。
普段あまり表に出ない人なのに。
おじいちゃんになる自覚が出てきたのだろうか。

買われた腹帯を、娘も娘の旦那さんも、そして夫も、
珍しそうにしげしげと眺めていた。

助産師の私には見慣れたものだ。
でもそういえば、今どきの若い人には珍しいのかもしれない。
娘も助産師なのに、こんなに珍しそうにしている。
そのことが少し、さみしくもあり、だからこそ伝えなければとも思った。
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腹帯を巻く前に、助産師である私は秘密兵器を取り出した。
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「動いてる…」

腹帯を巻く前に、持参した超音波機器で赤ちゃんを見せてあげることにしたのだ。
娘の旦那さんは、実際にエコーで見るのは初めてだという。
画面に小さな命が映し出された。

ぴんこぴんこ。

小さな赤ちゃんが、跳ねている。
まだ娘が胎動を感じない時期なのに、こんなに元気に動いている。

「動いてる…」 夫も、娘の旦那さんも、声を失っていた。
見えることで、存在がぐっと大きくなる。
少し涙ぐんでいるようにも見えた。
おじいちゃん、おとうさん、よろしくね。
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娘に、腹帯を巻いた

その日、娘に腹帯の巻き方を教えた。
さらしを体に当てて、丁寧に、丁寧に巻いていく。
何度もやってきた手つきで、でも今日は娘のお腹に。

戌の日。帯祝い。はらおび。
安産を願い、子を守る日本独自の風習。
医療行為を許可されていない助産師が、妊婦の体を護り、子を想う心を育てる一助として、大切にしてきた文化だ。

娘に巻きながら思った。後輩の助産師たちにも、伝えられたら。
いぬのひと…の活動の中で、この文化をつないでいけたら。

形は変わっても、願いは変わらない。
こんぴらさんの安産守り、水天宮のお守り付き腹帯、そして帯祝い。
どれも、ただ「元気に産まれてきてほしい」という祈りだ。
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変わるものと、変わらないもの

帰りの飛行機の中で、ぼんやり考えた。
ニューボーンフォト、ジェンダーリビール、ハーフバースデー——
新しい文化がどんどん生まれている。
でも帯祝いの水天宮には、同じように手を合わせる人たちがいた。
形は変わっても、親の祈りは変わらない。
それが、なんだかとても嬉しかった。
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娘のお腹に手を当てながら、私もただの母になっていた。
助産師 おび~さん
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