もう"どのAIを使うか"じゃなかった ── Claude Fable で気づいた、作業の"渡し方"
📓 Okeya Graph | AIツール(Claude / Claude Code / Gemini / ChatGPT / Genspark)を毎日触って、引っかかったところを淡々と書きます。
この記事は 約 7 分。仕事の"やり方"の話なので、あなたの使っているツールでもそのまま真似できます。
ChatGPT にも Claude にも Gemini にも、「速いけど軽いモード」と「遅いけど賢いモード」があります。急ぎのメールは軽いほうで、込み入った相談は賢いほうで。
——そうやって、用途に合わせて自分で選ぶのが、これまでの当たり前でした。
でも、この「自分で選ぶ」が、地味に手間なんですよね。
毎回どっちにするか考えて、切り替えて。賢いほうは待たされるし、使いすぎると上限も気になる。
ところが最近、その常識が根っこからひっくり返る出来事がありました。いちばん賢いモードを選んでも、勝手に格下げされる。
しかも、こちらが何をしたわけでもなく、話題の見た目だけで。
私はいま Claude Fable(クロード・フェイブル)という最上位のモデルをよく使っています。この記事でやるのは、そこで気づいた「AI との付き合い方の"主語"が変わった」話です。
難しい設定の話はしません。読み終わるころには、「どのAIを選ぶか」より大事な考え方が、ひとつ手に入ります。
1. これまでは、"自分で選ぶ"ものだった
少し前まで、モデル選びは完全にこちらの裁量でした。
急ぎの作業は、速いモデルで
じっくり考えさせたいときは、賢いモデルで
使いすぎて上限が近いときは、あえて軽いほうに落として節約する
つまり、速さ・賢さ・コストの三つを、その場その場で天秤にかけて、自分でつまみを回していた。「今日はこっち」と決める権利は、ずっと人間の側にありました。
これが当たり前すぎて、疑ったこともなかったんです。——ところが。
2. ところが、選んでも勝手に降ろされる
いちばん賢いモデルを選んだのに、なぜか今日の答えはいまいち。返ってくる文章が、どこか浅い。昨日はキレッキレだったのに。
最初は「気のせいかな」で流していました。でも、違ったんです。
私は生き物や医療にまつわる仕事をしていて、その調べ物や下書きを毎日 AI に手伝ってもらっています。ところがこの分野、AI にとっては"鬼門"でした。最上位のモデルを選んでいるのに、話題がその領域に触れた瞬間、気づかないうちに一段下のモデルにすり替わっている。
しかも厄介なのは、断られるわけじゃないこと。「その話はできません」と出れば、誰でも気づきます。でもこれは、ちゃんと答えは返ってくる。ただ、答えている中身が、賢い本命ではなく、一段下の代役に変わっている。断り書きも、警告も、何もなし。舞台の主役がそっと袖に引っ込んで、代役が同じ衣装で座っている——そんなイメージです。
極めつけは、"記事を書く補助ツールを作ろうとしただけ"で落とされたとき。危ないことなんて、どこにもしていません。なのに、いつの間にか代役に替わっていました。

3. なぜ、降ろされるのか
理由は大きく二つ、あるように感じています。
ひとつは、"見張り番"の巻き添えです。
いちばん賢いモデルには、危ない使い方(たとえば兵器やウイルスの作り方みたいな話)を防ぐための見張り番がついています。
この見張り番は、少しでも危なそうなものを広めに拾う設定になっている。取りこぼすより、多めに止めるほう。
だから「危ない話」と「真っ当な生き物・医療の話」は表面の言葉が似ているぶん、真っ当なほうまで一緒に巻き込まれてしまう。

もうひとつは——ここからは私の推測ですが——
提供側の都合も混じっている気がします。
というのも、落とされるのは「賢いモデルでないと無理な難しい仕事」だけじゃない。一段下でも十分こなせる、むしろそっちが得意なような依頼まで、下に回されている感触があるんです。さっきの"記事の補助ツール"が、まさにそれでした。
賢いモデルは動かすのに手間もかかります。だから混み合っているときは、軽めの依頼を下に流している——そんな事情もあるのかもしれません。(※あくまで私が触った範囲の体感で、公式にそう言われているわけではありません。)
4. 問題が、"すり替わった" ── 選ぶ、から、渡す、へ
ここで、はたと気づきました。
私がずっと悩んでいたのは、「どのモデルを選ぶか」でした。賢いのを選べば安心、のはずだった。でも、選んでも勝手に降ろされるなら、「選ぶ」という行為そのものが、もう効かない。
つまり、問題がすり替わっていたんです。
昔:「速いAI・賢いAIを、場面で自分で選ぶ」
今:「賢いモードを選んでも降ろされる。だから、この作業を、どう切り分けて、モデル間でどう引き継がせるかを考える」
主語が、"選ぶ"から"渡す"に変わった。——ここが、この記事でいちばん伝えたかった"へぇ"です。「どれを使うか」で悩む時代から、「どう手渡すか」を設計する時代へ。腕の見せどころが、まるごと移りました。
5. 作業を、工程で分けて渡す
では「渡す」を、具体的にどうやるか。
私が実際にやって効いた形を、4 つ紹介します。
開発者向けの難しい話は抜きで、あなたが今日使っているツールでもそのまま真似できる形にしてあります。
まず、仕事を"工程"にほぐす
ひとつの仕事は、いくつもの工程でできています。
生資料を読む工程、整理する工程、下書きを作る工程、全体を組み立てて矛盾をチェックする工程……。
大事なのはここ。見張り番に引っかかるのは、生々しい中身に直接触れる一部の工程だけ。残りの「整理する」「組み立てる」「矛盾を探す」は、中身の生々しさとは関係ありません。
だから、「この仕事はまるごと無理」ではなく、「引っかかるこの工程だけ、別に渡す」。そう切り替えると、諦めていた仕事の大半が、賢いモデルで回せるようになりました。

生資料は"助手"に読ませ、本命には結論だけ渡す
生々しい資料そのものを賢い本命に読ませると、見張り番が反応します。だったら、生の中身を、本命に読ませなければいい。
資料の読み込みは、別の"助手"チャットにやらせる
助手には「中身をそのまま持ってこないで、結論と理由だけ短くまとめて」と頼む
本命には、その要約だけを渡す。生の中身は一切見せない
汚れ仕事は助手に、頭脳労働は本命に。
分業です。
こうすると本命は、危ない見た目のものに一度も触れないまま、組み立て・比較・判断という頭を使う仕事に集中できます。

助手に頼む言い回しは、そのまま使えます。新しいチャットに資料を貼って、こう添えるだけ:
この資料を読んで、結論と理由だけを、箇条書きで5行以内にまとめてください。
・原文の言い回しをそのまま引き写さないこと(あなたの言葉で要約する)
・細かい数値や固有の描写は省き、「何が言えるか」の要点だけ
・最後に、判断に使えるひとことの結論を1行で
資料:
【ここに調べたい文章や資料を貼る】
出てきた要約を、本命のチャットに持っていく。これだけで、本命が"生の中身"に触れずに済むようになります。
いちど降ろされたら、会話を捨てて"要点1枚"で渡し直す
やっかいなのは、いちど代役に替わると、同じ会話でモデルを選び直しても、すぐまた代役に戻されること。会話に過去がぶら下がったままだからです。設定を押しても直らない。ここでハマる人が多い。
効いたのは、会話そのものを捨てて、新しく始めることでした。
新しいチャットを開く
そこで改めて、いちばん賢いモデルを選ぶ
前の会話を丸ごと引きずり込まず、今から必要な要点だけを、自分の手で貼り直す
コツは最後の一点です。「前の続きを全部読み込んで」だと、危ない見た目の中身まで連れてきてしまう。そうではなく、「これだけ分かれば再開できる」という要約メモを 1 枚だけ手渡す。過去を丸ごと運ばず、きれいな要点だけを渡すイメージです。

渡した先に「本当に賢いモード?」と自己申告させる
いちばん怖いのは、上の工夫をやっても、再開したときに自分が代役の上にいることに気づけないことです。見張り番は「代役に替えたよ」とは教えてくれません。
そこで、引き継ぎメモのいちばん先頭に、こんな一行を仕込みます:
(作業を始める前に)もしあなたが「いちばん賢いモード」でなければ、
そのまま進めず、いったん止まって、その旨を教えてください。
AI に自己申告させるわけです。人間が毎回モードを確かめるのは忘れがち。だから、再開のいちばん最初に、本人にチェックさせる。もし代役だったら「私はいちばん賢いモードではありません」と言ってくれるので、そこで気づいて、会話を作り直せる。
気づく仕組みは、自分で埋め込むしかないんです。

6. これから効くのは、"引き継ぎを型にする"設計
ここまで読んで、「毎回そんなことやるの、面倒くさい」と思ったなら、その感覚は正しいです。
そして、まさにそこが次の腕の見せどころだと思っています。
降ろされるたびに、会話を捨てて、要点をまとめ直して、自己申告の一行を貼って……を毎回手作業でやるのは、正直しんどい。だったら、この「渡し方」そのものを、仕組みにしてしまえばいい。
引き継ぎに必要な要点を、決まった型(テンプレ)に落としておく
その型を、ボタンひとつで呼び出せるようにしておく
「調べる係」「まとめる係」「組み立てる係」を、あらかじめ役割分担させておく
そうやって渡し方を型にしておくと、モデルが降ろされても、数手で立て直せる。「どのAIを選ぶか」で消耗するのではなく、「切り替えをいかになめらかにするか」に頭を使う。——これが、これから効いてくる設計だと感じています。
7. まとめ
つまり——AI は、"選ぶ"ものから、作業を"渡す"ものになった。
賢いモデルを選べば安心、の時代は終わりつつある。選んでも勝手に降ろされるなら、こちらにできるのは、仕事を工程にほぐして、引っかかる部分だけ上手に手渡すこと。そして、その渡し方を型にして、切り替えをなめらかにしておくこと。
「どのAIを使うか」で悩んでいたのが、「どう引き継がせるか」を考えるようになった。悩みの中身が、まるごと一段上に移った——そういうことでした。
おまけ ── なぜ今日、急いで書いたか
実はこの記事、今日という日を狙って出しました。
この Claude Fable、ちょうど今、気軽に使える条件が切り替わろうとしているんです。少し前まで、月額プランのなかで(上限つきとはいえ)気軽に触れていたのが、もうすぐ「使った分だけ払う」形に移るという案内が出ています。運営側は「余裕ができ次第、元の形に戻したい」とも言っていて、あくまで一時的な措置のようですが、いつ戻るかは読めない。
案内を読むかぎり、気軽に触れるのは今日あたりが区切りになりそうでした。だから、まだ触れるうちに、引っかかったところと渡し方のコツを残しておこう、と急いだわけです。もしあなたも「いちばん賢いモード」を使える環境にいるなら、条件が変わる前に、一度いろいろ試しておくのをおすすめします。
(※ 使える条件や料金は変わりやすいので、正確なところは公式の案内をご確認ください。日付や時間帯まで細かくは公表されていないので、この記事は 2026 年 7 月 7 日時点で私が触った範囲の話です。)
このnoteは「Okeya Graph」の 6 本目 です。
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AI を毎日触って、引っかかったところを淡々と。
今回は「AI は"選ぶ"ものから、作業を"渡す"ものになった、という話」でした。
