構造探偵 第0話
第0話:封筒、座標、そして“ハヤブサ”の誕生へ
[場面:場末のバー。鷲田公安次長がグラスを傾けながら語る]
鷲田:「高浜さん、この窮地を救える人が1人だけいる。その人に近しい人物をようやく掴んだ。仲介はできない。だが、吉田がキーマンを知っているらしい。うまく接触してくれ」
高浜:「……なんかまだよく見えてないんですけど、何やら重たそうです。そんな重い任務を俺たちが?ですか…ただの新聞記者ですよ!」
山根:「情報屋の小町から連絡が来た時点で、もう逃げられないってことですよ、高浜さん。」
高浜:「鷲田さん、とりあえず、資料は西野に伝書鳩させましたけど、まさかあれが動き出したんですか?」
鷲田:「さあな。だが早くしないと、この国は取り返しのつかないことになる。俺は表立って動けないのはわかっているな」
[沈黙。グラスの氷がカランと鳴る]
高浜:「座標が動いたか。
しょーがない ではマングース、日本を取り戻すか」
山根:「はい承知 スコーピオン」
鷲田:「構造探偵再始動だな」
[2人は静かにバーを出る。夜の街に、構造の裂け目が広がっていく]
[場面:午後6時過ぎ。市ヶ谷の雑居ビル3階。吉田の事務所]
西野さやかは封筒を手に階段を一気に駆け上がる。
(西野さやかは日々新聞社の政治部新入社員。高浜と山根と同じ部署に配属されて半年。まだまだ記者としては半人前だが、嗅覚と動きだけは天下一品の元気な女子社員である)
螺旋階段は軋んだ音を立て、塗装がところどころ剥げていた。
廊下の蛍光灯がチカチカと点滅している。
(コンコン)西野はドアをノックした
吉田:「空いてるわよ。どうぞ〜」
西野:「吉田さんお久しぶりです。で、あのこれ……高浜さんから直接って。中身は……その、わからないですけど…」
吉田(無言で受け取り、重さと紙の質感を指先で確かめる):「確かに受け取りました。ありがとう。」
吉田:「ところで西野さん。あの2人は最近、何してるの?」
西野:「……それは、その〜、ちょっと」
吉田:「あぁ、いいのいいの。答えに詰まった時点でだいたいわかった。相変わらずぶっ飛んでるのね。本業そっちのけで」
西野:「そんなところです。政治部の本来の仕事は全部私に押し付けて、あの2人は“構造探偵”気取りで妄想ばっかですよ。吉田さんから言ってくださいよ、“テレビばっかり観てないで仕事しろ!”って」
吉田(くすりと笑う):「あはは、わかった。でもあなた……妄想だと思ってるのね」
西野:「え? 妄想じゃないんですか?」
吉田:「……まぁ、いいわ」
西野:「えーっ、なんですかそれ。教えてくださいよ〜」
吉田(時計を見て、立ち上がる):「さてと。私このあと人と会うから、そろそろね。西野さん、ありがとう」
西野:「え〜〜。わかりました。では失礼します」
(頭を下げた瞬間、吉田のデスクがちらりと視界に入る)
“アラスカLNGの契約動向レポート”
西野(心の声):……アラスカLNG?えっと、えっと……
あーーー、全然わかんない。まだまだ勉強不足だなあ〜
……ま、いっか〜
[階段を降りる。階段の鉄骨の冷たさが夜風で浮き上がる。繁華街の灯りがガラス戸越しに揺れる]
