しおしお日記|トンネリングの罠とゴミ拾い。
5月7日(木)晴れ
数か月に一回ぐらいの頻度で料理教室に行っている。競争率が高すぎて、なかなか当選しないのだ。
今回は自家製ハムと自家製ケチャップの回。ハムやケチャップを手作りしちゃう自分を想像して、ときめく。
しかし、ハムもケチャップも出来上がりまでの道のりは思っていたよりはるかに長かった。ハムはまず豚モモやロースなど塊肉を手に入れて、決まった濃度の塩とスパイスにつけ込む。
「2日と10時間漬け込んだ後に流水で流してください。2日半ではしょっぱくなり過ぎるし、2日と8時間だとしっかり味がつきません。」という先生の言葉に、このレシピに辿り着くまでの気が遠くなるような試行錯誤を想像し、もらったレシピの紙を持つ手が震えた。
ケチャップの方も、完熟トマトをさらに2日ほど追熟させ、湯剥き済ませたところからレシピは動き出している。ふだん料理名に「簡単」というキーワードをつけて検索しがちなわたしが、この工程にチャレンジできるのか。
そんなおののく気持ちは、出来上がったハムとケチャップで作ったナポリタンを食べて吹き飛んだ。子どもの頃からナポリタンが苦手だったのだけど、ここで食べたナポリタンは別格だった。口の周りをケチャップで真っ赤にして食べる子どものようにガツガツと食べ、「このナポリタンをまた食べてやる!」と心に誓った。
5月8日(金)晴れ
オンラインでの定期セッション。
トンネリングという言葉がある。時間やお金など、心理的になんらかの欠乏を感じて心に余裕がない時に、目の前の問題に意識が集中し過ぎて視野が狭くなり、全体的な視野を失ってしまった状態のことだ。
「これが夢です」「このように生きていきたいんです」と前向きに語っていても、その根っこに欠乏感や不足感があると、このような状態になってしまう。そして「やりたいのにうまくいかない。意志力が足りない。能力が足りない。根性が足りない。」と足りないものを探し、補おうとし続けてしまう。
「どうして自分で気づけないのかな~」とクライアントさんが首を傾げる。これは脳の自然な仕組みなので、まずは「わたしはどうしてこんなことで悩んでいるのか?」と自分に問いかける癖をつけてみるのはどうかと伝えた。
夜、珍しく頭の中がグルグルして眠れない。来週末から3週連続で家に来客があるので、ずっと段取りを考え続けてしまうのだ。
ふと我に返って、「わたしはどうしてこんなことに悩んでいるのか?」と自分に問いかけたら、「いい格好をしたいのだ」という結論に辿り着いた。できないことを「やらねば」と思うからしんどい。できないなりに、できることをやってみようという心持ちに変わると、とつぜんコンセントが抜けたかのように脱力し、そのまま意識を失った。
5月9日(土)晴れ
休みの日にしては早く起きて出かける支度をしていると、物音のせいか夫ももぞもぞと起きてきた。「どこに行くの?」と聞かれたので、意気揚々と「ゴミ拾い」と答えると、夫は目を丸くしていた。
遡ること数か月前、最寄り駅付近で月に一度、ゴミ拾いの会があることをインスタで知った。参加したいとウズウズしていたのだけど、用があったり寝坊したりで、ずっと機会を逸していたのだ。
集合時間の5分前に到着すると、待ち合わせ場所にはすでに数人集まっていた。見知った顔はひとつもない。火ばさみとビニール袋が渡されて、ゴミ拾いエリアごとにグループ分けされる。わたしは商店街付近でゴミを拾うチームに入った。
最初は同じチームの人について行っていたが、地面のゴミに目を凝らしているうちに、ひとりぼっちになっていた。周囲の人と一緒に事を成そうという動機付けが弱すぎる。
商店街周辺には、残念ながらあまり大きいゴミは落ちておらず、吸い殻や小さな紙片のようなものばかりだった。いつもは道端に落ちているそれらを見ると、怒りと悲しさの入り混じった気持ちになるが、今日は違う。なんだったらゴミに向かって小走りしている。火ばさみでゴミを捉えた瞬間、、わたしの鼻の穴は間違いなく広がっていたはずだ。久しく感じていないけれど、RPGでアイテム集めをした時の達成感だ。
予定していたゴミ拾いの25分間はあっという間に過ぎ去り、集合場所に戻って、ゴミの入った袋と火ばさみを返した。だいぶたくさん集めたと誇らしく思っていたけれど、わたしの倍以上のゴミを集めて帰ってきた人もいて、次回までにゴミの多そうなルートをチェックしておこうと、心に誓った。
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