【はじめまして】記録を終わらせるためではなく、ケアを前に進めるために。看護師が4ヶ月間Notionと格闘した記録
褥瘡(じょくそう)ケアの記録をつけながら、ずっと感じていた小さな違和感があります。
それは、「処置」と「記録」が、まるで別々の作業のように分断されていることです。
忙しすぎて記録が後回しになる……そんなことは日常的ではありませんか?
本来、褥瘡ケアは一つの連続した流れのはずです。
患部を「観察」し、適切な薬剤で「処置」をし、その状態を「評価」して、次のステップへの「経過」を見守る。
しかし、現場の実態はどうでしょうか。忙しい業務の合間に、あるいは業務が終わった後に、パソコンや紙に向かって「入力作業」として記録をひねり出す。
今のシステムや記録のあり方は、いつの間にか「書くこと」自体が目的になってはいないか。
「既存のソフトが悪い」と言いたいわけではありません。
ただ、もっと現場の自然な流れに寄り添い、ケアを前に進めるための記録の形があるはずだと考えたのです。
処置をしながら、観察しながら、考えながら。その流れの中で、自然に記録が完成していく。
そんな仕組みを求めて、私はNotionというツールを手に取り、試行錯誤を始めました。

すべての始まりは、「DESIGN-R®2020」の計算を楽にしたかったこと
きっかけは、ごく個人的で切実な悩みでした。
褥瘡評価の指標である「DESIGN-R®2020」の点数計算を、もっと正確に、もっと効率的にしたいと考えたことです。
現場での評価は、今も多くがアナログです。
紙の早見表を指で追い、それをまた別の記録ソフトに打ち込む。
「この作業、もっとスマートに、機械に任せられないだろうか?」そんな軽い気持ちでNotionのシートを作り始めたのが、すべての始まりでした。

2ヶ月間の没頭と、AIとの「格闘」
しかし、いざ着手してみると、単なる計算式では解決できない壁が次々と現れました。
DESIGN-R®は、傷の深さ(d)によって評価すべき項目が変わります。
データとしては入力されていても、医学的な視点で見れば「論理的に矛盾している」というケースも起こりうる。
「ただ合計点が出ればいい」のではない。
「医学的に正しい評価」でなければ、医療ツールとしての意味がない。
そう気づいた瞬間、私の「工作」は一段階深いものになりました。
私はもともと、ITに詳しいわけではありません。Notionの使い方もさっぱり分からない。
そんな状態から、休日のほとんどをスマホとにらめっこするかパソコンの前で過ごすようになりました。
分からないことがあれば、画面をスクショしてAIに投げ、操作を確認する。
エラーが出ては数式を書き直し、またエラーが出ては考え込む。
周りから見れば、ただ一人で黙々と画面に向かっているだけ。
「1人で工作して、1人で自己満足している」そんな孤独な時間でしたが、複雑な数式が初めて正しく動いた瞬間の喜びは、何物にも代えがたいものでした。
最初の2ヶ月は、ただ自分の手元の計算を楽にしたい一心でした。

「孤独な工作」が「誰かへの贈り物」に変わるまで
けれど、それを「自分だけの道具」で終わらせず、テンプレートとして公開しようと考え始めてから、さらに2ヶ月の月日が流れました。
「ただ自分が使えればいい」という段階から、「誰が手に取っても迷わず使える道具」に昇華させるために、今度はAIを『客観的なレビュアー』に見立てて、何度も対話を重ねました。
「初めてこの画面を見る人は、どこで迷う?」「この操作説明で、現場の忙しい看護師に伝わる?」そうやって構造を見直し、デザインを整える。
その「見えない部分」へのこだわりが、さらに2ヶ月の月日を必要としました。
「本当にこれで現場の役に立つのか?」「独りよがりな仕組みになっていないか?」自問自答とAIとの壁打ちを繰り返し、設計図を書き直し、色んな方向に思いを巡らせるうちに、気づけば4ヶ月が経過していました。
それは、孤独な工作が、いつの間にか「誰かへの贈り物」に変わっていく時間でもありました。
ITに詳しいわけでもない一人の看護師が、AIと対話し、休日のすべてを捧げて画面と格闘し続けた4ヶ月間の記録。
「記録を終わらせるためではなく、ケアを前に進めるために」私が辿り着いた、一つの形をお話しさせてください。

「評価」を支えるのは、毎日の「処置」という土台だった
格闘し始めて数ヶ月。ようやくDESIGN-R®の自動計算(③)の形が見えてきた時、私はある「構造」に気づきました。
評価を正確に行うためには、その前提となる「どの部位の話か(②)」が整理されていなければならない。
そして何より、もし週に1回評価するとしたら評価日までの6日間の「毎日の処置記録(④)」が、嘘偽りなく、正しく積み重なっていることが不可欠である、と。
評価という「点」を楽にするためには、日々の処置という「線」を整えなければならない。
そこから私の目論見(もくろみ)はさらに広がり、「評価の過程でアセスメント(⑤)まで自動生成できないか」と、巨大なシステムの設計図が頭の中に広がっていきました。
けれど、理想を詰め込めば詰め込むほど、完成は遠のいていきます。
ふと、原点に立ち返りました。
「現場が今、一番困っているのはどこだろう?」
高度な自動アセスメントも大切ですが、
それ以前に、日々の忙しさの中で
「今日の処置、誰がどこまでやったっけ?」
「前回は何を塗ったんだっけ?」
「申し送りで聞いたけど、処置セットを持って患部を見るまで確信が持てない」
という、当たり前だけど切実な「業務の交通整理」こそが、今の現場に最も必要なのではないか。
記録は「後から書くもの」ではなく、ケアの「進行ログ」であるべきだ格闘を続ける中で、私はある確信に至りました。
今の褥瘡管理に足りないのは、高度なアセスメント機能以前に、「業務進行(タスク管理)」としての視点ではないか、ということです。
これまでの記録は、すべてが「後出し」でした。
処置がすべて終わったあと、記憶を頼りに「今日はこれをした」と入力していく。
これでは記録はただの「義務」であり、負担でしかありません。
私が作りたかったのは、処置をしながら「今、何が終わったか」がリアルタイムで見える、進行ログのような形です。
今日やるべき処置が、スマホの画面にカード(タスク)として並んでいる。
処置が終わった瞬間にボタンを押せば、その場で記録が完了する。
「前回は何を塗ったんだっけ?」と迷う前に、答えが出ている。
これは単なる「時短」ではありません。
「次に何をすべきか」という判断をシステムに任せ、人間は「どうケアするか」という目の前の肌に集中するための仕組みです。
記録を「終わらせるための作業」から、ケアを
「安全に進めるための道標」へ。
この視点の切り替えこそが、私が今回、あえて「処置ログ」から公開することに決めた一番の理由です。

ボタンひとつで記録が完了する。
現場で「片手にスマホ」を想定したデザインに
こだわりました。
画像は開発中のサンプルデータです。
経過日数は、ケア開始日に合わせて
自動でカウントされるよう数式を組んでいます

まずは「現場で動くもの」から
正直に言うと、私の構想したシステムはまだ未完成です。
最後まで辿り着けるかどうかも、正直なところ分かりません。
けれど、格闘の末に生まれた「毎日の処置記録」の仕組みだけは、今この瞬間も現場で戦っている誰かの役に立てるかもしれない。
「ケアに集中する時間を増やすために、計算や管理は機械に任せたい」
看護師や介護士が本当に時間を割くべきなのは、パソコンの画面ではなく、目の前の利用者の肌であり、表情であるはずです。
「完璧なフルセットを待つより、まずは臨床で実際に使える最小単位から、誰かに触れてみてほしい」
そんな思いから、今回は全体構想のうち、最も現場の動きに直結する ②「部位マスター」と④「処置ログ」 の2つを切り出して、先行公開することに決めました。

「良くなっている」と確信できる。
そんな「ケアを前に進めるためのタイムライン」
を目指しました。
※画像は開発中のサンプル(風景写真)です。
実際にはここに患部の経過写真が並び、
一目で状態の変化を追うことができます。
なぜ身近な現場ではなく、「note」で公開するのか
正直に言うと、このシステムを自分の身近な現場で「使ってみませんか?」と提案する勇気は、今の私にはありません。
医療や介護の現場には、長年積み上げられてきたルールがあります。
決められた形式で、決められたソフトに入力することが大前提です。
そこに新しいツールを持ち込むことは、それだけで「また覚えることが増えるのか」「今のままでも困っていない」という抵抗感を生むかもしれません。
そして何より、休日のすべてを捧げ、AIと格闘してまで作り込んだこの「熱意」そのものが、身近な人たちには少し重たく、引かれてしまうのではないか……。そんな怖さもありました。「Notion?なにそれ?」そんな言葉を投げかけられるのが、怖かったのかもしれません。
この試行錯誤を、なかったことにはしたくない
それでも、この4ヶ月間の試行錯誤を、自分一人の中だけで終わらせたくはありませんでした。
エラーと戦い、数式を組み直し、ようやくスマホの画面に「🚩本日の残タスク」が並んだ時のあの喜び。
「ケアを前に進めるための記録」という、自分なりに辿り着いた答え。
このプロセスを「なかったこと」にするには、あまりにも惜しいと感じたのです。
もしかしたら、広い世界のどこかに、私と同じような「小さな違和感」を抱えながら、日々の記録に追われている人がいるかもしれない。
その人にとって、この未完成な「処置ログ」が、暗い足元を照らす一つの選択肢になるかもしれない。
そう思い、身近な場所ではなく、あえてこのnoteという場所で公開することに決めました。

最後に
このツールは、大きな革新ではありません。
処置をタスクとして可視化し、現場の流れを少しだけ整えるための仕組みです。
最後まで作りきれるかは分かりません。使いにくいと言われるかもしれません。
それでも、もしこの記事を読んで、
「記録を終わらせるためではなく、ケアを前に進めるための記録にしたい」
そう感じてくれる方が一人でもいたなら、私の4ヶ月間の試行錯誤は報われます。
まずはこの「一歩目」から。皆さんの現場の風景が、明日から少しでも軽やかになることを願っています。

これだけで、現場の「やり忘れ」の不安がなくなります。
🎁 「褥瘡処置管理 (②④)」公開について
公式マーケットプレイスで公開されたシステムは、最終的に「利用者管理」から「集計」までを網羅する、以下の5つのデータベース連携を想定して構築しています。
① 褥瘡カルテ(利用者管理)
② 褥瘡部位マスター(今回公開)
③ DESIGN-R®2020評価記録
④ 処置実行記録(今回公開)
⑤ 経過記録(A/Pログ)(アセスメント/プラン)
◎集計(分析活用)
現在は、現場の忙しさやルールを想像しながら、AIと二人三脚でコツコツと作り上げた 「プロトタイプ」 で、② 褥瘡部位マスター④ 処置実行記録のみで構成されています。
実際の現場でどれほど機能するかは、これから皆さんの手を借りて検証していきたいと考えています。
「最後まで辿り着けるか」はまだ分かりませんが、この一歩を共有することで、現場のリアルな声と一緒に育てていければ嬉しいです。
絶賛、試行錯誤中!まずは「机上の理想」を「現場の武器」に変えるための第一歩として、ぜひ触れてみてください。
記録を終わらせるためではなく、ケアを前に進めるために。
ケアの現場を支えるNotionテンプレート公開中
もし、この試行錯誤の続きを「仕組み」として見てみたい方は、こちらにまとめています。
[👉 【保存版】ケアの現場を「仕組み」で支えるNotionテンプレート一覧]
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