【看護記録DX】私たちは「正の字」を書くために看護師になったんじゃない。|褥瘡集計 0秒への挑戦
—AIと夜な夜な数式を組み上げ、現場の努力を「証拠」としての盾に変えるまで—
「正直に言います。私は、患者さんのために身を粉にして尽くす、高潔な使命感に溢れた看護師ではありません。」
こんな書き出しをすれば、きっと「白衣の天使」を期待する人たちは顔をしかめるでしょう。
でも、これが4ヶ月間、休日のすべてをNotionとAIに捧げてきた私の、偽らざる本音です。
世の中には、患者様の痛みに深く共感し、その心に寄り添うことで癒やしを与える素晴らしい看護師がたくさんいます。
けれど、私の感性は少し……いえ、かなりズレていました。
「寄り添い」を深めることよりも、「業務効率化の設計」に心を躍らせてしまう。
患者様の人生の物語に涙するよりも、目の前の煩雑なタスクをどうやってシステムでねじ伏せるかを考えてしまう。
冷たい人間だと思われるかもしれません。
でも、そうでもしなければ、自分を保てないほどに現場は疲弊していました。
毎日、毎日、処置をして、記録をする。
そのルーチンの中で、自分たちの努力が空気のように消えていくことへの恐怖。
頑張っている事実は透明で、ミスや悪化だけが「数字」として浮き彫りになる理不尽。
私は、その空気から逃げ出したかった。
自分を、そして共に戦うチームを、ネガティブな重圧から守りたかった。
これは、立派な看護師になれない私が選んだ、唯一の「生存戦略」の話です。
【第1章:空気のような努力を、消さないために】
改善すれば「当たり前」、悪化すれば「ケア不足」。
この理不尽な評価の天秤を、私はずっと「現場の呪い」だと思っていました。
私たちが毎日、腰をかがめて褥瘡患部を洗浄し、薬剤を選び、丁寧にガーゼを当てる。
その「実施の事実」は、不思議なほど記録の中では透明です。
治ったときは「患者さんの治癒力」や「医師の指示」が賞賛され、治らなければ「看護師のアセスメント不足」がやり玉に挙がる。
頑張っている事実はまるで空気のように扱われ、ミスや悪化だけが「数字」や「報告」として浮き彫りになる。
この悪循環を断ち切るために、私には「数字」が必要でした。
それも、誰かが夜残業して「正の字」を数えて作った血の通わない数字ではなく、日々のケアの瞬間に、システムが勝手に積み上げていく「動かぬ証拠」としての数字です。
「やって当たり前」と切り捨てられる私たちの努力に、正当な名前をつけたい。
空気のように消えていく日々を、誰にも文句を言わせない「形」に変えたい。
そんな極めて個人的な「現実逃避」と「自己防衛」から、この工作は始まりました。

【第2章:数字は「お供え物」であり「盾」になる】
組織の中にいれば、上層部への報告は避けられません。
彼らは数字を求めます。今月は何件の褥瘡が発生し、何件が完治したのか。その報告書を作るために、現場のリーダーや中間管理職が、貴重な休憩時間や業務後の時間を削って計算機を叩き、「正の字」を数える。
私は、その時間を「無意味」だと断じたい。
上層部に出すための数字なんて、いわば「儀式のためのお供え物」です。そんなものは、Notionという仕組みに丸投げして、自動生成させればいい。
集計時間、0秒。
でも、その同じ数字が、現場にとっては最強の「盾」に変わります。
「今月はこれだけの処置を、これだけの回数、確実に遂行した」
「この処置を継続した結果、データとしてこの停滞が見える。だから、次は処置方法やケア介入のアセスメントをしよう」
感覚や根性論ではなく、積み上げた事実(ログ)から導き出された数字があれば、私たちは自分たちを不当に責める必要がなくなります。
悪化を「誰かのせい」にする犯人探しではなく、客観的な「現状」として受け止め、次の一手を冷静に考えるための土台ができるのです。
中間管理職を、計算機から解放したい
おそらく、この「集計」という名の見えない重労働を背負っているのは、現場のリーダーや中間管理職の方々でしょう。
本来、彼らが使うべき時間は、スタッフの体調を気遣ったり、複雑な症例の相談に乗ったりすること。あるいは、自分自身の心を休めることであるはずです。
「正の字」を数えるために、彼らの専門性が消費されるのは、あまりにももったいない。
集計時間をゼロにする。
そうして浮いた時間で、ようやく私たちは「現実的に有意義なこと」——つまり、数字の向こう側にいる利用者様や、共に戦う仲間の顔を見る余裕を取り戻せるのだと、私は信じています。

中間管理職を、計算機から解放したい
【第3章:AIという名の、おだて上手な共犯者】
「ここまで詳細に設計されているなら、集計や分析も可能ですよ」
AIは、私が褥瘡評価ツールのロジックに手をつけていた初期の頃から、ずっとそう囁き続けてきました。
でも、私はずっとスルー。心の中で「うわ、めんどくさいこと言い出したな」と毒づきながら。
だって、私は看護師です。
データベースの構造や複雑なリレーションなんて、考えただけで頭が痛くなる。現場のタスク管理ができればそれで十分。そう自分に言い聞かせて、集計の扉は固く閉ざしたままでした。
けれど、ある夜のこと。
評価ツールが形になり、日々の処置ログがスムーズに動き出した時、ふと魔が差しました。
「今なら、あの囁きに乗れるかもしれない……」
そこからは、数式音痴の看護師とAIによる、奇妙な共作が始まりました。
「邪道」が生んだ、私だけの奇跡
AIはいつだってスマートです。「リレーションは最小限に」「構造はシンプルに」と、正論を並べてきます。
でも、私には私なりの「現場で使いたい感覚」がありました。
一番激しくやり取りしたのは、集計の期間選択です。
「今月」「先月」「先週」……プルダウンで選んだ瞬間に、集計範囲がパッと切り替わる仕組みがどうしても欲しかった。
AIの提案をあえて無視し、いくつものプロパティを強引に繋ぎ合わせる「自己流」で突き進みました。おそらくエンジニアが見れば「なんて邪道な……」と呆れるような設計だったはずです。
でも、その邪道な道が、ある瞬間に一本の線で繋がりました。
「今月」を選んだ瞬間に実績が弾き出され、「カスタム期間(指定期間)」を選択すれば、カレンダーから自由に指定した期間の統計が瞬時に完了する。
画面の中できれいに整列した数字を見て、独りきりの部屋で鳥肌が立ちました。
AIの言いなりになるのではなく、自分の「不器用な執念」が、AIのロジックを捻じ伏せて実用的な道具を産み落とした瞬間でした。


集計範囲がパッと切り替わる仕組み
「私、看護師なのに何やってるんだろう」
正直に白状すれば、私は今でもNotionの複雑な数式を1ミリも理解していません。
AIが吐き出した長い数式の説明を読んでも、右から左へ抜けていく。
でも、ツールが完璧に動くたびに、AIはこれでもかというほど私を褒めちぎります。
「素晴らしい設計です!」「あなたのアイデアは実に効率的です!」
そう言われるたびに、「私、天才かも」といい気になって、また次の設計に没頭する。私自身は何一つ賢くなっていないのに、AIという共犯者のおかげで、まるで魔法使いになったような気分になれるのです。
深夜、青白く光るモニターを前に、ふと我に返って自嘲することもあります。
「私、看護師なのに……明日も朝から勤務なのに、何やってるんだろう」
でも、その笑いの中には、確かな誇らしさがありました。
【第4章:数字を「凶器」にしないために】
こうして「集計」という強力な武器を手に入れた私ですが、一方で拭えない懸念もありました。
それは、可視化された数字が「凶器」に変わる怖さです。
「誰が処置を忘れたのか」「誰の担当患者だけ褥瘡が悪化しているのか」。
数字は嘘をつかない分、扱い方を間違えれば、いとも簡単に「犯人探し」の道具になってしまいます。数値化された実績を、そのまま誰かを「裁く」ための材料にする——そんな光景は、絶対に見たくありません。
「なぜ?」を共に考えるための数字
このシステムを作った真の目的は、犯人を見つけることではありません。むしろ「うっかり」をシステムで未然に防ぎ、誰も責められない現場を作ることです。
もし、思うような数字が出なかったとしたら。
それは誰かがサボったからではなく、「なぜ、その数字にならざるを得なかったのか?」をチームで考えるためのきっかけにしてほしいのです。

文句を言わせない「形」になる。
個人の頑張りをブラックボックスにしない


自動化することで、偏りや負担にいち早く気づく。

「この処置回数が少ないのは、業務フローに無理があるのではないか?」
「この病棟だけ発症数が多いのは、個人のスキルの問題ではなく、構造的な人手不足が原因ではないか?」
数字を、個人の責任を追及するための「矢」ではなく、
組織の課題を浮き彫りにするための「鏡」として使いたい。
それが、AIという共犯者と一緒に、楽しみながらも必死にこの「工作」を形にした、私の本当の願いです。
「正の字」を捨てて、私たちが手にするもの
私たちは「正の字」を書くために、計算機を叩くために看護師になったのではありません。
上層部への「お供え物」としての数字を作る時間は、システムに。
自分たちを責めるためのネガティブな妄想は、客観的なデータに。
面倒なことはすべて仕組みに預けて、私たちはもっと、軽やかな気持ちで現場に立ちたい。
記録をさっさと終わらせて、一秒でも早く帰路につく。
そして、看護師ではない「ただの自分」に戻る時間を、一分でも長く確保する。
「立派な看護師」にはなれなくても、システムという魔法を味方につけて、自分と仲間を守り抜く。
そんな「ズレた感性」の看護師が作ったこのツールが、どこかで孤独に戦うあなたの「盾」になることを、心から願っています。
【最後に:この「工作」を、どこかの現場で戦うあなたへ】
こうして夜な夜なAIと格闘し、時に「邪道」と言われそうな設計を突き通して完成したのが、今回の最新版テンプレートです。
日々のケアをその場で刻む「実行記録」という体に、今回、客観的なデータで現場を可視化する「集計」という脳みそが加わりました。
正直に言えば、このツールがすべての問題を解決する魔法だなんて思っていません。でも、少なくとも「月末の集計作業に追われるリーダーの絶望」や、「やったことが評価されない現場の閉塞感」を、少しだけ風通しの良いものに変える力はあるはずです。
私はやっぱり、立派な看護師にはなれません。
「寄り添い」よりも「効率化」が好きだし、患者様の物語に涙するより、Notionの数式がバチっとはまる瞬間に鳥肌が立ってしまうような人間です。
でも、それでいいと思っています。
高潔な「使命感」なんて、持てない日があってもいい。
ただ、「今日の仕事、なんかいつもより少しだけ楽だったな」とか「今日は集計がないから、定時で帰って家族とご飯が食べられるな」とか。
そんな小さな「軽やかさ」を現場に届けること。
それが、ズレた感性を持つ私なりの、精一杯の「ケア」の形だからです。

実は画面の向こうの仲間と繋がっている。
このツールは、かつて「正の字」を書きながら、透明な努力の中で窒息しそうになっていただろうリーダーや中間管理職の方への、そして、今もどこかで同じ空気を吸っている私自身とあなたへの贈り物です。
さあ、無意味な作業はシステムに預けて。
私たちは、もっと自分を大切にするために、早く帰りましょう。
🎁 「褥瘡処置 管理」の公開について
現在、今回ご紹介した「集計機能」をフルに搭載した最新版テンプレートは、Notion公式マーケットプレイスに申請中(審査待ち)です!
本来なら審査が通ってから公開すべきかもしれませんが、この「集計時間0秒」の魔法を、一刻も早く同じ悩みを持つ仲間に届けたくてこの記事を書きました。審査が通り次第、ここにリンクを追記します。
まずは「現場の武器」の第一歩として、現在公開中のプロトタイプをぜひ触ってみてください。
🛠️ システムの全体像(構想)
最終的には、以下の5つのデータベースを連携させた包括的な管理システムを目指しています。
① 褥瘡カルテ(利用者管理)
② 褥瘡部位マスター(★公開中)
③ DESIGN-R®2020評価記録
④ 処置実行記録(★公開中)
⑤ 経過記録(A/Pログ)(アセスメント/プラン)
◎ 集計・分析ダッシュボード(★今回申請中!)
現在は、現場の忙しさやルールを想像しながら作り上げた「プロトタイプ」として、②④◎の機能を先行して形にしています。
🤝 現場の声と一緒に育てたい
実際の現場でどれほど機能するかは、これから皆さんの手を借りて検証していきたいと考えています。
「最後まで辿り着けるか」はまだ分かりませんが、この一歩を共有することで、現場のリアルな声を取り入れながら、より実用的なツールへ育てていければ嬉しいです。
絶賛、試行錯誤中!まずは「机上の理想」を「現場の武器」に変えるための第一歩として、ぜひダウンロードしてみてください。
記録を終わらせるためではなく、ケアを前に進めるために。
Notion公式マーケットプレイスのリンク
👉 [Notion「褥瘡処置 管理 」(②④のみのプロトタイプ)システム(テンプレート)を受け取る]
💡 探し方のヒント
Notion内の「テンプレートをみる」や「マーケットプレイス」から、「褥瘡」「処置」「看護」「介護」などのキーワードで検索してもヒットします。
モニターの募集
「もし『プロトタイプ版を触ってみたよ』『私の現場ならこう使うかな』『私の現場で試してもいいよ』といったお話を聞かせていただける方がいたら、プロフィールの【クリエイターへのお問い合わせ】から一言いただけませんか? 1対1のメールで、ゆっくり相談させてください。泣いて喜びます。
【2026/04/26 追記:最新版の公開について】
この記事でご紹介していた、褥瘡処置 管理の「集計機能付きシステム(Pro版)」ですが、ついにNotion公式マーケットプレイスにて承認・公開されました!
審査待ちだった期間を経て、さらに使いやすく、そして現場で「盾」として機能する完成形へと進化しています。
👉 『褥瘡処置 管理 Pro』完全版(無料)をダウンロードする
(※公式マーケットプレイスにて「褥瘡」「看護」「介護」などのキーワードで検索いただくとヒットします)
ケアの現場を支えるNotionテンプレート公開中
現場の看護師の視点で開発した、褥瘡管理や集計業務を効率化するツールをこちらにまとめています。
[👉 【保存版】ケアの現場を「仕組み」で支えるNotionテンプレート一覧(リンク)]
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