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『日常』を全巻読んだ

感想

鹿が出てくる。
ロボットがいる。
意味の分からないやり取りが延々と続く。
どう考えても「日常」ではない出来事ばかり起きる。

それなのに、不思議と読んでいるうちに全部が日常に見えてくる。

自分が『日常』を好きだと思った理由は、たぶんそこにある。

普通なら「おかしい」と感じることを、登場人物たちは案外あっさり受け入れている。
もちろん驚きはする。
でも、世界が終わるほどの大事件にはならない。
騒ぎながらも、そのまま生活は続いていく。

現実の生活も少し似ている気がする。

人生には予想外のことがたくさん起こる。
思い通りにならないこともあるし、意味の分からない出来事に巻き込まれることもある。
それでも次の日は来るし、ご飯も食べるし、学校や仕事にも行く。

冷静に考えれば結構めちゃくちゃなことでも、人は案外それを抱えたまま生きていける。

『日常』を読んでいると、そんな当たり前のことを思い出す。

そして何より、この作品は笑わせ方が独特だ。

一般的なギャグ漫画のように、きれいなオチがあるわけではない。
むしろ「なんで今こんなことになっているんだ」という勢いで笑わせてくることが多い。

読んでいる最中、自分でも何に笑っているのか分からなくなる瞬間がある。

でも、その理屈の分からなさが心地いい。

普段、自分たちは何かにつけて意味を探している。

なぜそうなったのか。
何が正しいのか。
どんな価値があるのか。

そんなことばかり考えている。

だからこそ、『日常』のように意味よりも勢いが先に来る作品に触れると、少し肩の力が抜ける。

「別に全部理解しなくてもいいか」

そんな気持ちになれる。

また、この作品には独特の優しさもあると思う。

登場人物たちは決して完璧ではない。

変なことを言うし、失敗もするし、空回りもする。

でも、その欠点が強く否定されることは少ない。

誰かの変な部分を笑いながらも、その人自身はちゃんと受け入れられている。

それが妙に居心地がいい。

現実では、自分の変な部分や未熟な部分を隠そうとしてしまうことが多い。
周りと違うことを気にしたり、失敗を引きずったりもする。

だけど『日常』の世界では、みんな何かしら変だ。

だから逆に安心する。

普通でいようと頑張らなくても、案外なんとかなるんじゃないかと思えてくる。

タイトルの『日常』には、そういう意味も込められているのかもしれない。

日常とは、何も起こらない毎日のことではない。

少し変な人たちがいて、意味の分からない出来事が起きて、笑ったり困ったりしながら続いていくものなのだと思う。

読んだ後、自分の日常は何も変わらない。

それでも、いつもより少しだけ世界がおもしろく見える。

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推名 証理(すいな あかり) チップは書籍購入代に使わせていただきます。何卒よろしくお願いします。