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7月16日のオプション市場分析 モメンタム急落の裏で進むAIインフラ再編

今日はモメンタム株の下落が際立った一日でした。
ゴールドマン・サックスのハイベータ・モメンタム指数は月次で24%下落し2009年4月以来の悪さ、モルガン・スタンレーのテック・モメンタム指数も27年間で最悪の17日間変化率を記録しています。
一方でS&P500自体はハイパースケーラー株の上昇に支えられプラス圏を維持しており、下落の震源が「モメンタム株特有の巻き戻し」に限定され、広範な市場までは波及していない可能性を示しています。
実際、出来高ランキングを見てもAAPL+4.01%、MSFT+2.78%、META+3.07%、AMZN+3.02%と大型テックはむしろ堅調で、資金がモメンタム株から時価総額上位銘柄へシフトしている構図が読み取れます。

PPIは全項目で予想を下回りました。コアPPI前月比+0.2%(予想+0.3%)、ヘッドライン前月比-0.3%(予想0.0%)とインフレ鈍化を示す内容で、利下げ期待を後押しする材料になり得ます。

16日のニュース

物理AI領域の動きが目立ちます。
ジェンスン・フアン氏の来日に合わせ、富士通・川崎重工業・FANUC・安川電機という日本の産業ロボティクスの主要プレイヤーとの会合が確認されており、トヨタとの提携拡大(Woven CityでのOmniverseデジタルツイン、Isaacロボティクス、Nemotron LLM活用)と合わせて見ると、Nvidiaが自動運転から工場・スマートシティ・産業ロボット全般へAIプラットフォームを広げる戦略の一環と位置付けられます。
Nokiaの2027年AIモバイル網機器投入も同じNvidiaエコシステム拡大と解釈できます。

半導体・メモリ分野では警戒すべき動きがあります。

CoreWeaveがメモリ・ストレージ価格下落に備えた財務ヘッジを検討中と報じられ、これはクラウド事業者側がDRAM・NAND価格の先行きに不透明感を持っていることの表れです。
出来高上位でもMU(-8.02%)、SNDK(-8.12%)、WDC(-8.78%)、STX(-5.69%)とストレージ・メモリ関連が軒並み大きく売られており、ニュースと値動きが整合しています。

ASMLの決算は逆に強く、FY26ガイダンス引き上げの背景としてメモリ収益75%増を見込んでおり、装置サイドと川下のクラウド事業者側で温度差が生じている点は注目に値します。

企業再編関連では、PYPLがStripeとAdventによる1株60.50ドル・企業価値530億ドル超の買収提案を受け本日+17.20%と急伸、出来高も905万株と急増しました。この材料はオプション市場にもそのまま反映されており、後述します。

そのほか、AnthropicのIPO準備報道(10月念頭、評価額9650億ドル)、AppleのAIチップ買収検討(サーバーチップ戦略強化、コードネームBaltra遅延)、Nebiusの資産軽量クラウドモデル導入(データセンター投資の資本負担をパートナーに移す動き)も、中長期のAIインフラ投資テーマとして押さえておきたいところです。

また、レバレッジETFが上場本数で過去最高の700本に達し、6月だけで117本が新規上場という状況は、市場のボラティリティそのものが商品化・増幅されやすい地合いを示しており、モメンタム株の急落と合わせて短期的な値動きの荒さの一因として意識しておく必要があります。

オプション市場分析

出来高上位はNVDA(370万契約)、TSLA(280万契約)、AAPL(250万契約)が突出しており、この3銘柄が本日のオプション市場の中心でした。

Vol/OI(出来高/建玉比率)が高い銘柄には、ニュースフローと整合する動きが複数見られます。PYPLは55C・60Cにvol/OI比率17〜35台、デルタ0.16〜0.57と幅広いストライクで買いが入っており、買収報道を受けた急騰後もなお上値追いの思惑が残っていることを示しています。

NVDAは212.50C(現在値とほぼ同水準、デルタ0.52)がvol/OI50.80と建玉を上回る出来高となっており、ATM付近での新規の思惑買いが厚いことがわかります。
また190C(デルタ0.9966)のような深いITMのコールも出来高を伴っており、こちらは実質的な株式代替ポジション(シンセティックロング)としての利用とみられます。

AAPLは本日+4.01%と大きく上昇したこともあり、325P・322.50Pといった短期(7/17満期)のプットにもvol/OI30〜48台の動きが見られます。上昇を受けた利益確定のヘッジ、あるいは急騰後の反落に備えたプロテクションとして機能している可能性があります。
一方で360C(93日先、デルタ0.28)のような長めの限月でのコール買いも見えており、短期の値動きに対するヘッジと中期的な強気の見方が同時に存在している状態です。

MUについては905C・915Cにデルタ0.45〜0.51で厚めの出来高が入っており、現在の株価水準に沿った建玉形成として自然なものです。

信用スプレッド(クレジットスプレッド)のscreenerからは、市場が想定している短期的なレンジも読み取れます。
ベアコールスプレッド(上値の抵抗を売る戦略)では、TSLA417.50C、MSFT415C、NVDA222.50Cなど、いずれも7/17満期の直近で損失確率5〜7%程度に設定されたストライクが並んでおり、市場参加者がこれらの水準を「数日以内には超えにくい上値めど」として意識していることを示唆します。特にTSLAは同種の売り建てが多く並んでおり、短期的な上値の重さが意識されているようです。

逆にブルプットスプレッド(下値を売る戦略)では、AMD455〜480P、META625〜645P、TSLA365〜375Pといった水準が、損失確率5〜8%程度の「割れにくい下値めど」として screener に表示されています。AMDはこのレンジ内に複数のストライクが集中しており、480ドル近辺が心理的な下値サポートとして意識されている可能性があります。

なお、AAPLについては複数の限月・ストライクでブルコールスプレッド(上昇に賭ける戦略)が非常に多く並んでおり、IVランクは軒並み65.79%と共通の高水準です。プロフィット確率60〜67%台のものが多く、短期急騰後もなお強気のポジション構築が継続的に行われている様子がうかがえます。

決算直前のSK Hynix

SK Hynixは7月22日に決算発表を控えています。
直近では急騰後の反落局面にあり、7月15日終値は176.46ドルと前日比9.00%の下落、時間外取引でもさらに下げが続きました。
このタイミングでオプション市場のポジションを確認しておくことは、決算後の値動きの振れ幅を予測するうえで参考になります。


ガンマエクスポージャー

ストライク(権利行使価格)ごとのガンマエクスポージャーを示したもので、青い折れ線が集計ベースのアグリゲートガンマエクスポージャーです。
現在値176.46は、赤い線で示されたガンマフリップ水準182.46よりも下に位置しており、ここより下はネガティブガンマ、ここより上はポジティブガンマの領域となっています。

ネガティブガンマの領域にいるということは、オプションの売り手であるディーラー側が、株価が下がるほど追加のヘッジ売りを出しやすく、株価が上がるほどヘッジの買い戻しを出しやすい、という力学が働きやすいことを意味します。
これは方向性そのものを示すものではなく、値動きが増幅されやすい状態にあると理解するのが適切です。決算発表という値動きの大きくなりやすいイベントを控えたこのタイミングでネガティブガンマの領域にいることは、決算後の反応がどちらに転んでも振れ幅が大きくなりやすいことを示唆しています。
逆に、株価が182.46を上回ってポジティブガンマの領域に入れば、ディーラーのヘッジがむしろ値動きを抑制する方向に働くため、相対的に値動きが落ち着きやすくなります。


コール・プットの内訳

同じガンマエクスポージャーをコール(青)とプット(オレンジ)に分けて表示したものです。
現在値を挟んで、150ストライク付近にプット側の突出した大きな負のエクスポージャーが見られる一方、190ストライク付近にはコール側の大きな正のエクスポージャーが確認できます。

150ストライクのプットの厚みは、このチャート全体の中で最大の偏りです。急騰前の水準に近く、52週安値(151.30ドル)にも近接していることから、投機的な下落ベットというよりは、直近の急騰で含み益を得た保有者が利益を守るために保有しているプロテクティブプットとしての性格が強いと考えられます。
一方の190ストライク付近のコールの厚みは、182.46のガンマフリップをやや上回った水準に位置しており、決算を受けて株価が上放れした場合の上値の目安として機能する可能性があります。

この2枚を合わせて見ると、SK Hynixのオプション市場は「決算前のポジション調整・保険としてのプット需要」と「上放れ時の上値抵抗になり得るコールの集中」という、方向感よりもレンジとボラティリティを意識したポジショニングになっていることが読み取れます。
決算発表後、株価が182.46を回復できるかどうかが、その後の値動きの落ち着きを左右する一つの節目になりそうです。

逆に決算後に150ドルを割り込むと、保険としてのプットオプションがまとめて発動するタイミングになります。オプションの売り手(証券会社側)は、株価が下がるとリスク管理のために自分たちも株を売る必要が出てきます。この場合一段階、勢いよく下に押される展開になりやすいでしょう。
さらに悪いことに、150ドルより下には、同じくらい厚い「保険の壁」がもうありません。なので、いったんこの壁を抜けてしまうと、次に下げを食い止めてくれるクッションがしばらく見当たらず、需給の力学だけで大きく急落するリスクがありそうです。

まとめ

本日はモメンタム株の急落という表面的なインパクトの裏で、大型テック・AIインフラ関連には資金が向かっている構図でした。
オプション市場でも、PYPLの買収材料への即応、NVDA・AAPLでのATM近辺の活発な建玉形成、メモリ・ストレージ関連への警戒的なプット需要など、ニュースフローとの整合性が高い一日だったと言えます。短期的にはTSLA・NVDAの上値ライン、AMD・METAの下値ラインとして、クレジットスプレッドscreenerに現れた水準が一つの目安になりそうです。

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