規模を求めず、意味と目的を持った人生に
過去の自分の行動を振り返ってみると、極めて自分本位な意思決定の連続だったように思います。
しかし、年齢を重ねて社会のあり方を意識するようになり、幸いなことに生活にわずかながらでも余裕ができ、プライベートでも比較的満足度が高くなったことで、自分を見つめ直すと同時に、社会の方向性や、そこに対して自分が何をできるのかを考えるようになりました。
今回は、木下斉さんの「ジブン株式会社ビジネススクール」で学んだ、「スモールジャイアント」という考え方をベースに、目次を追加する形で整理していきたいと思います。
♦︎規模よりも意味
スモールジャイアントというのは、近年海外で注目されている考え方のようで、僕もこの放送を聞いて初めて知りました。
これまで「優良企業」とされてきた会社は、年商がいくらだとか、利益がどれくらい出ているか、従業員の人数は何人か、といった“規模”で評価されることが一般的でした。しかし、スモールジャイアントはそうした評価軸とは異なり、「その事業が社会的にどれほど意味を持っているか」「誰の役に立とうとしているのか」といった“意味”の部分を重視する考え方です。たとえ事業規模が小さくても、そこに問題はないという前提です。
この考え方を自分の人生に当てはめて、最初に思い浮かんだのは「お金」についてでした。
僕はお金の教育活動にも取り組んでいることもあり、人生とお金の関係について、比較的一般の人よりも深く考える機会が多いように思います。
よく「年収1億円欲しい」といった目標を掲げる話を耳にします。もちろん、1億円を目指すこと自体が悪いわけではありません。ただ、その数字にどんな“意味”を持たせるかが重要だと考えています。
「こういうものが欲しい」「こんなことを実現したい」「あの場所に行きたい」そういった“目的”がまずあり、そのために1億円が必要だというのであれば、それは健全な目標設定になると思います。僕自身は1億円も必要ないですけどね。
また、自分が取り組む“仕事”についても、やはり「規模」より「意味」を重視したいと感じています。
医療従事者である僕の仕事は、構造的にどうしても薄利多売になりがちです。毎日毎日、とにかくこなす数が求められるような環境では、「自分は何のために働いているのか」が分からなくなってしまうことがあります。
だからこそ、自分の仕事に「意味」を見いだすことが重要だと思うのです。
僕は、理学療法士という仕事を通じて、人々の身体に変化をもたらしたり、社会構造や予防の重要性、身体についての知識や情報を広めたりすることに取り組んでいます。
病院の中でも、あるいは外でも。僕ひとりの影響力は決して大きくはありません。しかし、それでも一つひとつ行動して意味を持たせ、社会に貢献していく。それが自分にとっての「意味」であり、やがてはキャリアやお金というかたちで自分に返ってくるものだと考えています。
そうして意味を持ったお金の流れが生まれていけば、それは「意味のある年収目標」にもつながり、結果的に健全な社会の循環が育まれるのではないか、そう思っています。
♦︎どんな関係性を重要視するのかを考える
こうした「意味を持たせる」ということにおいて、重要なのは、自分がどのような関係性を重視するかだと言います。
僕自身は、社会と関わるうえで“主体性”を持つことを何より大切にしたいと考えています。誰かから指示されたから動く、制度がそうなっているからやる。そういった受動的な意思決定ではなく、自分が「やりたい」「必要だ」と思うことに、しっかりと時間を使っていきたいと思っています。
そのうえで、僕が打ち出す理念や考えに共感してくださる方々と、一緒に仕事ができるよう、自分から行動していこうと思っています。
そもそも“仕事”というのは、相手に価値を提供する行為です。しかし、相手が変化を望んでいない場合、その価値は届きません。
医療の現場でも、本当に困っていて「このトラブルをなんとかしたい」と切実に思っている方もいれば、実はそれほど困っていないのに通院している方もいます。そうした「困っていない人」を変えることは、やはり難しい。本人に変わる意志がなければ、どれだけこちらが努力しても響かないのです。
一方で、本当に変わる必要がある人に的確に介入できたときには、相手も喜んでくれるし、こちらもやりがいを感じる。そうした喜びのある仕事が、理想です。
変化を望まない人へのアプローチは、まるで“のれんに腕押し”のように感じることがあります。けれども、自分が主体性を持って働き方や関係性を選べるようになれば、そういった状況を少しずつ変えていける。価値が届く関係性の割合を高めていけると思うのです。
そして、そうした関係性を少しずつでも増やしていくことができれば、「社会」という大きな存在にも、微力ながら変化をもたらすことができるのではないかと考えています。
また、プライベートの面で言えば、子どもとの関係性を考えるうえでも、僕自身が“主体的に行動する姿”を見せていくことには大きな意味があると思っています。
働き方に多様性があることを、身をもって示すことができるし、努力している親の姿は、きっと子どもに伝わる。言葉よりも、背中で語るほうが大切だと信じています。
先ほど「年収に意味を持たせる」という話をしましたが、きちんと価値提供をして、それが結果として自分の収入に反映されれば、その分、子どもにより多くの経験をさせてあげることができます。もちろん、自分自身もいろんな経験を積むことができる。
そうして得た学びを、また価値として周囲に還元していく――そんな循環を回していけたら、とても良いなと思っています。
♦︎ジブンの人生にKPIを
数字というのは、客観的な指標として多くの場面で目標にされます。
学校のテストの点数から、会社の売上まで、基本的には数値に置き換えて設定される。だからこそ、達成したのかどうかを判断しやすくなるわけです。
一方で、「数字しか見ないこと」が原因で、失敗することもあります。
僕がまだ理学療法士になって3〜4年目くらいの頃のことです。
転倒して肩を怪我した方のリハビリを担当しました。リハビリの開始当初は、多少の痛みや可動域の制限はあるものの、全体的にはそこまで調子が悪い印象はありませんでした。
しかし、リハビリを進めるにつれて、なぜか徐々に痛みや可動域の制限が強くなっていったのです。
もちろん、僕自身も、患者さん本人も、改善を目指して真剣に取り組んでいました。それにも関わらず、なぜか状態は悪化していく。
今振り返って思うのは、「可動域」という“数値”ばかりにとらわれてしまい、細かな“動きの質”を見落としてしまっていた、ということです。
この経験をきっかけに、僕はリハビリにおいて数値を目標に設定するときには、かなり慎重になるようになりました。
確かに、どれだけ動くかという可動域の数値は、改善を評価するうえで必要な指標です。ですが、それはあくまで“結果”です。
動きの質を整え、必要な条件を満たせば、数字は自然と後からついてくる。
この考え方は、人生全体にも当てはまるのではないかと思っています。
つまり、「質を高めること」と「必要な条件を満たすこと」に集中する。
そうすれば、結果として数字(成果)も後からついてくる。
ここでいう“質”とは、「自分にとって必要な条件」をよりクリスタルにしていくことでもあります。
では、自分にとっての“必要な条件”とは何なのか。
今のところ、僕は次の3つだと考えています。
自営すること
家族の幸せ
社会にとって必要なことをやる
この3つの条件に当てはまることを、今の自分はちゃんとやれているのか。
そして、その“質”を日々高めていけているのか。短期的な目標に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で考えられているか。
このあたりを大事にしていくことが、自分にとっての「人生のKPI」なんだと思っています。
♦︎このKPIを文化に
このKPIを達成していくためには、自分の判断軸を「無意識のレベル」でこの条件に照らし合わせられるようにしておく必要があると思っています。
言い換えれば、OSレベルでこの軸がインストールされていれば、多少の迷いや揺らぎがあったとしても、根本的にブレることはない。意思決定も、その軸から大きく外れることはありません。
ただ、これが意外と難しい。
というのも、これまで積み重ねてきた自分の信念や習慣のようなものが、無意識のうちに表面化してきて、それを「この軸に沿っている」と思い込んでしまったり、時には言い訳として都合よく使ってしまったりすることがあるからです。
でも、そういうことも含めて人間なのだと思います。自分を変えていこうとする過程では、そういうことが起こるのも自然なことなのかもしれません。
大事なのは、そうなっている「自分」に気づけるかどうか。
その都度、気づいて修正する。また同じようなズレが起こるかもしれないけど、そこでもう一度気づいて、また修正する。
そうやって少しずつ軸をチューニングしていくことで、いつかはOSレベルでその判断基準が定着し、無意識のうちにブレのない選択や意思決定ができるようになっていく。
これこそが「文化として成熟する」ということなのではないか、とふと思いました。
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