スタジアムを地域最大の防災拠点にできないか|全国のクラブを災害支援ネットワークへ
「日本サッカー産業論|世界一になるための問い」
※本記事は、Kindle書籍『日本サッカー産業論』から生まれた問いを起点に、日本サッカーの現場と仕組みを考えるシリーズの一編です。
サッカー場に、防災拠点がつくられた
2026年7月、福島県のJヴィレッジで、「JFAぼうさい拠点」のオープニングイベントが開催されました。
サッカー体験。
災害用ランタンづくり。
防災クイズスタンプラリー。
防災を学べる体験ゲーム。
子どもから高齢者までが、スポーツを楽しみながら防災について学ぶイベントです。
「JFAぼうさい拠点」は、日本サッカー協会が2025年から進めている取り組みです。
災害が起きた際、外部からの支援を受けなくても一週間程度、自立して活動できる機能を備えます。
さらに、拠点の周辺地域へスポーツを通じた支援を届けることを目指しています。
初年度は、北海道、福島、千葉、大阪、熊本の5カ所に設置され、将来的には全国25カ所程度への整備を目指すとされています。Jヴィレッジは、その一つです。
防災拠点には、電気や水道、通信環境が制限された状況でも活動できるトレーラーハウスや、移動型のバリアフリートイレなども活用されています。
日本代表戦の会場でも、これらの設備の展示や防災ワークショップが行われています。
サッカー施設を、サッカーをするためだけの場所にしない。
平時にはスポーツを楽しむ。
災害時には地域を支える。
この考え方は、日本サッカーが持つ社会的な価値を大きく広げるものだと思います。
そして私は、この取り組みを見ながら考えました。
JFAの防災拠点と、全国のJリーグクラブを結ぶことはできないだろうか。
Jリーグにも、防災への取り組みはすでにある
最初に確認しておかなければならないことがあります。
Jリーグやクラブが、これまで防災に取り組んでこなかったわけではありません。
Jリーグと企業が共同で、全国のクラブとサポーターが防災知識を学ぶ「ソナエルJapan杯」も実施されています。
2021年から始まり、全国のJクラブが参加し、クラブの発信力や地域を巻き込む力を使って、災害が起こる前の備えを広げる活動です。
また、Jリーグが示す将来のスタジアム像でも、防災機能は重要なテーマとして挙げられています。
電力の自立。
生活用水の確保。
通信手段。
トイレやシャワー。
生活スペース。
医療機能。
物資の備蓄。
ユニバーサルデザイン。
スタジアムを、地域住民が有事に避難できる場所とする考え方です。
Jリーグの公式コンテンツでも、スタジアムを災害時の大規模ベースキャンプや住民の避難場所として活用する「防災拠点」という将来像が示されています。
つまり、
「スタジアムを防災拠点にしたらどうか」
という発想そのものは、まったく新しいものではありません。
すでに啓発活動があります。
防災機能を備えたスタジアム構想もあります。
地域ごとの防災イベントも行われています。
今回考えたいのは、その次です。
個別施設の防災機能と、全国のクラブ、サポーター、スポンサー、交通、宿泊、物流を結び、実際に動く災害支援ネットワークへ進化させられないか。
という提案です。
スタジアムには、人を受け入れる機能がすでにある
スタジアムは、災害時の拠点になり得る多くの機能を備えています。
広い空間があります。
トイレがあります。
照明があります。
電源があります。
放送設備があります。
大型映像装置があります。
飲食設備があります。
駐車場があります。
救護室があります。
多くの人を誘導するための動線があります。
そして、何万人もの来場者を安全に受け入れる運営経験があります。
試合の日には、
どこから人を入れるか。
どの通路を使うか。
混雑をどう避けるか。
体調不良者へどう対応するか。
迷子をどう案内するか。
交通機関とどう連携するか。
警察や消防とどう情報を共有するか。
さまざまな運営が行われています。
これは災害時の避難所運営と、まったく同じではありません。
しかし、多くの人を安全に受け入れ、情報を伝え、誘導する経験は、防災にも活かせます。
スタジアムには施設だけでなく、
人を受け入れる運営能力
があります。
クラブは、地域とつながる組織である
防災拠点に必要なのは、建物だけではありません。
そこを動かす組織が必要です。
Jリーグクラブは、普段から多くの関係者とつながっています。
自治体。
警察。
消防。
医療機関。
スポンサー企業。
交通事業者。
学校。
商店街。
地域団体。
ボランティア。
サポーター。
災害が起きてから、初めて関係をつくるのではありません。
日常的に顔を合わせています。
ホームゲームのたびに協力しています。
地域イベントを一緒に行っています。
クラブの強みは、自らが防災の専門機関であることではありません。
地域のさまざまな組織を、平時から結んでいること
です。
そのネットワークを、防災にも活用します。
クラブが消防や自治体の役割を奪うのではありません。
防災の指揮は行政や専門機関が担います。
クラブは、人と情報と施設をつなぐハブになります。
全国のクラブを「ぼうさい連携クラブ」にする
すべてのスタジアムに、同じ規模の防災設備を整えることはできません。
クラブがスタジアムを所有していないケースも多くあります。
施設の立地も異なります。
津波の危険がある地域。
洪水が起こりやすい地域。
地震への備えが必要な地域。
豪雪地域。
火山の影響が考えられる地域。
大都市と地方都市でも、必要な機能は違います。
そこで、すべてのスタジアムを一律に「大規模避難所」にするのではありません。
役割に応じて分類します。
基幹防災拠点
一定期間、自立して活動できる設備を備えます。
電力。
水。
通信。
備蓄。
トイレ。
シャワー。
医療。
宿泊。
物流受け入れ。
JFAぼうさい拠点や、大規模スタジアムなどが候補になります。
地域避難拠点
試合会場やクラブ施設を、一時避難、物資配布、情報提供などに使います。
施設の規模や自治体の防災計画に応じて役割を決めます。
情報連携クラブ
施設そのものが避難所にならなくても、クラブアプリ、SNS、サポーターネットワークを使って防災情報を届けます。
後方支援クラブ
被災地域から離れたクラブが、物資、募金、人員、車両、宿泊場所を支援します。
すべてのクラブが、同じ役割を持つ必要はありません。
そのクラブと地域ができることを、平時から登録します。
全国のクラブを、
Jリーグぼうさい連携クラブ
としてネットワーク化します。
災害時だけ使う設備は、維持が難しい
防災設備の難しいところは、災害が起きなければ使われないことです。
倉庫に備蓄品を入れます。
発電機を置きます。
トレーラーを購入します。
しかし、何年も使われなければ、故障や劣化に気づきません。
操作方法を知る人も少なくなります。
備蓄品の期限も切れます。
いざというときに使えなければ意味がありません。
そこで、平時から使います。
トレーラーハウスは、試合日の運営本部や救護室として使います。
給電設備は、イベントやキッチンカーで試します。
非常用通信は、定期的に動作確認します。
備蓄食品は、賞味期限が近づいたら地域イベントで活用し、新しいものへ入れ替えます。
移動型トイレは、大会や地域イベントへ貸し出します。
災害用ベッドや間仕切りは、避難所体験会で実際に組み立てます。
防災設備を、災害時だけ眠らせません。
試合や地域イベントで日常的に使うことで、
操作できる人を増やし、
故障を発見し、
更新費用を確保します。
試合日を、防災を学ぶ日にする
防災訓練は重要です。
しかし、参加する人は限られがちです。
毎年同じ地域役員や自治会の人だけが参加することもあります。
一方、Jリーグの試合には、多くの人が集まります。
子ども。
若者。
家族。
高齢者。
地域外から来たアウェイサポーター。
普段の防災訓練には参加しない人もいます。
そこで、ホームゲームの日に、防災を少しだけ体験できるようにします。
入場前に防災クイズへ答える。
非常用トイレを見学する。
給電車からスマートフォンを充電する。
家族の避難場所をアプリへ登録する。
スタジアム内の避難経路を確認する。
選手やマスコットが防災を呼びかける。
ハーフタイムに、緊急情報の表示方法を紹介する。
試合終了後、希望者だけが短時間の避難訓練へ参加する。
大がかりな訓練を毎試合行う必要はありません。
一年に一度の防災デーだけにもしません。
小さな学びを、日常の観戦体験に入れます。
サッカーを楽しみに来た人が、ついでに一つ防災知識を持ち帰ります。
Jヴィレッジのイベントでも、スポーツ体験と防災ワークショップを組み合わせ、家族で楽しみながら学ぶ形が採用されています。
防災を「怖い話」として伝えるだけでなく、
楽しみながら身につける文化
にします。
クラブアプリを、災害時の情報網にする
災害時には、正しい情報が必要です。
しかし、自治体の防災アプリを入れていない人もいます。
自治体のSNSをフォローしていない人もいます。
一方、サポーターは、クラブの公式アプリやSNSを日常的に見ています。
試合情報。
選手情報。
チケット。
交通案内。
グッズ。
その日常的な接点を、災害時にも使います。
ただし、クラブが独自に災害情報を判断して発信するのではありません。
自治体や公的機関の情報を、自動的に連携します。
クラブアプリには、
指定避難所。
給水場所。
通行止め。
交通機関の状況。
スタジアムの開設状況。
物資募集。
ボランティア募集。
多言語情報。
などを表示します。
ホームタウンに住む人だけではありません。
遠征中のアウェイサポーターにも必要です。
初めて訪れた町で災害が起きれば、どこへ避難すればよいか分かりません。
観戦チケットと連動し、
現在地に応じた防災情報
を表示します。
試合日に災害が起きた場合は、来場予定者へ一斉に案内します。
クラブアプリが、サッカー情報だけでなく、地域の安全情報を届ける入口になります。
アウェイサポーターも守る
防災拠点というと、ホームタウン住民を守ることが中心になります。
もちろん、最優先です。
しかし、試合日には地域外から多くの人が来ています。
アウェイサポーター。
遠方から来た家族。
観光客。
仕事で訪れた人。
土地勘のない人ほど、災害時には不安になります。
駅へ戻るべきか。
スタジアムに残るべきか。
ホテルへ行けるのか。
電車は動いているのか。
どこで水を受け取れるのか。
クラブは、アウェイサポーターも含めた避難計画を用意します。
チケット購入時に、
避難場所。
緊急時の連絡方法。
情報を受け取るアプリ。
宿泊可能施設。
帰宅困難時の対応。
を案内します。
AWAY BASEがある地域では、駅前の一時情報拠点として使えます。
普段は観光案内や荷物預かりを行い、災害時には、
交通情報。
避難所案内。
スマートフォン充電。
簡易物資配布。
多言語支援。
を行います。
アウェイサポーターを歓迎するとは、試合の日に店へ呼ぶことだけではありません。
もしものときにも安全に帰れるようにすること
も、地域の歓迎だと思います。
アウェイバスを、災害時輸送に転用する
以前の記事で、クラブや地域ごとに分かれている遠征需要をまとめ、バスや鉄道を共同利用する「アウェイバス」を提案しました。
災害時には、この交通ネットワークが別の意味を持ちます。
被災者を安全な地域へ運ぶ。
帰宅困難者を宿泊施設へ運ぶ。
支援者を被災地へ運ぶ。
物資を中継拠点まで運ぶ。
高齢者や障害のある人を優先的に移動させる。
通常時から連携しているバス会社や旅行会社があれば、災害発生後に一から契約先を探す必要がありません。
ただし、観光バスや貸切バスが、災害時に必ず使えるとは限りません。
運転手の安全。
道路状況。
燃料。
車両の所在地。
行政の要請。
さまざまな条件があります。
だからこそ、平時から、
どの会社が何台出せるか。
車椅子対応車両があるか。
どの地域を担当するか。
誰の要請で動くか。
費用を誰が負担するか。
を決めておきます。
アウェイ遠征の共同交通網が、災害時には地域輸送網へ切り替わります。
STAYX(ステイクロス)を、支援者と避難者の宿泊網にする
災害が起きると、避難所だけでは対応できない人がいます。
高齢者。
乳幼児のいる家庭。
障害のある人。
持病のある人。
妊婦。
ペットと暮らす人。
また、被災地へ入る支援者にも宿泊場所が必要です。
消防。
医療。
行政職員。
ボランティア。
設備復旧の技術者。
物流関係者。
メディア。
以前提案したSTAYX(ステイクロス)は、スポーツ遠征に対応する宿泊施設のネットワークです。
平時にはサポーターやチームを受け入れます。
災害時には、その一部を、
支援者の宿泊。
福祉避難。
一時的な家族滞在。
被災地域からの広域避難。
に使います。
すべてのホテルを避難所にするわけではありません。
通常の宿泊客もいます。
従業員自身も被災します。
施設に被害が出ることもあります。
そこで、ホテルごとに、
受け入れ可能人数。
バリアフリー設備。
非常用電源。
食事対応。
ペット対応。
医療機関との距離。
大型車両の駐車。
などを事前登録します。
クラブ、自治体、旅行会社、ホテルが共通システムで確認できるようにします。
平時に使われている予約ネットワークを、非常時にも活用します。
スポンサー企業の物流を、防災物資へつなぐ
クラブには、多様なスポンサー企業があります。
食品。
飲料。
物流。
自動車。
建設。
通信。
金融。
医療。
小売。
ホテル。
IT。
災害時に必要となるものを、すでに扱っている企業があります。
しかし、スポンサー企業に対して、
「災害が起きたので、何か提供してください」
と突然求めても、すぐには動けません。
在庫があります。
契約があります。
輸送手段があります。
支援する地域や窓口を決める必要があります。
そこで、平時からスポンサー企業ごとの役割を登録します。
飲料会社は水や飲料。
食品会社は保存食。
物流会社は倉庫と輸送。
自動車会社は車両や給電。
通信会社は通信環境。
建設会社は設備復旧。
小売企業は物資調達。
金融機関は寄付や決済。
IT企業は情報基盤。
クラブがスポンサーから物を無償で集めるのではありません。
災害対応協定を結び、費用や補償を事前に決めます。
提供した企業には、支援実績を地域へ伝えます。
スポンサー活動を広告だけでなく、
地域のレジリエンスを高める共同投資
へ発展させます。
地域産品定期便の物流も、災害時に役立つ
地域産品アウェイ定期便では、複数事業者の商品を共同で保管し、梱包し、配送する仕組みを提案しました。
その物流基盤も、災害時に使えます。
地域商社。
共同倉庫。
梱包拠点。
配送事業者。
地域店舗。
普段から商品を動かしている場所は、災害時の物資中継拠点になり得ます。
ただし、被災地域へ無計画に物資を送ると、かえって混乱を生みます。
必要な物。
必要な量。
届ける場所。
受け取る人。
在庫状況。
道路状況。
これらを共有しなければなりません。
JFAぼうさい拠点、Jリーグクラブ、自治体、物流企業を共通システムでつなぎます。
被災地から必要物資を登録します。
近隣の後方支援クラブが在庫を確認します。
物流企業が最適な拠点と輸送ルートを決めます。
サポーターからの寄付は、必要な商品を購入する資金として使います。
物を持ち寄ってスタジアムへ集めるのではありません。
必要な物を、必要な場所へ、必要な量だけ送る。
物流の基本を守ります。
サポーターは、災害時にも大きな力になる
Jリーグの大きな資産は、サポーターです。
ホームゲームには、多くの人が集まります。
クラブのSNSを見ています。
地域への愛着があります。
困っている人を助けたいと思う人も多いでしょう。
過去の災害でも、クラブやサポーターによる募金、物資支援、ボランティア活動が行われてきました。
しかし、善意だけで被災地へ向かうと、危険があります。
道路を混雑させます。
食事や宿泊を現地へ依存します。
必要とされていない物資を持ち込むこともあります。
サポーターを、無制限に災害ボランティアとして動員してはいけません。
そこで、
Jリーグ防災サポーター登録
をつくります。
希望者が平時に登録します。
応急手当。
避難所運営。
情報整理。
物資仕分け。
多言語支援。
子どものケア。
車両運転。
IT。
医療資格。
自分ができることを登録します。
基本的な研修を受けます。
災害時には、自治体や社会福祉協議会など、正式な機関の要請に基づいて募集します。
勝手に現地へ向かいません。
必要な技能を持つ人だけが、指定された場所へ行きます。
参加できない人は、募金や地域商品の購入で支援します。
サポーターの善意を、安全で効果的な支援へ変えます。
防災サポーターに、無償の犠牲を求めない
ボランティアという言葉を使うと、すべて無償で行うものだと考えられがちです。
しかし、長期支援には費用がかかります。
交通費。
宿泊費。
食費。
保険。
装備。
仕事を休む負担。
これらを個人へ押し付ければ、経済的に余裕のある人しか参加できません。
短時間の地域活動は無償でもよいかもしれません。
しかし、遠方への派遣や専門技能が必要な活動には、実費や報酬を支払います。
クラブ。
Jリーグ。
自治体。
スポンサー。
寄付基金。
複数の財源を使います。
サポーターの善意を、安価な労働力として扱いません。
安全に活動し、無事に帰宅するところまでが支援です。
ホームとアウェイが、災害時には支え合う
Jリーグでは、毎週、クラブ同士が対戦します。
試合では競争します。
しかし、地域同士は支え合えます。
たとえば、あるホームタウンが災害に遭ったとします。
次に対戦予定だったクラブ。
過去に交流したクラブ。
ホームタウン交換留学を行った地域。
地域産品の共同商品をつくった地域。
アウェイ遠征でつながった地域。
そうした関係があれば、顔の見える支援ができます。
相手地域が必要としている物を確認します。
後方支援拠点を用意します。
支援者の宿泊場所を確保します。
募金を行います。
被災地域の商品を購入します。
復旧後には、サポーターが再びその町を訪れます。
ホームタウン同士の関係を、試合日だけの交流にしません。
災害時には助け合い、復旧後には観光や地域商品購入で支えます。
試合では競い、災害時には支え合う。
全国にクラブがあることが、地域の安心につながります。
自治体にとってのメリット
自治体にとって、スタジアムやクラブとの防災連携には大きな価値があります。
新しい避難拠点を得られます。
若い世代へ防災情報を届けられます。
地域外から来た人への情報伝達ができます。
スポンサー企業の技術や物流とつながれます。
定期的なイベントを通じて設備を点検できます。
サポーターという大きなコミュニティへアクセスできます。
一方で、自治体はクラブに防災を丸投げしてはいけません。
避難所の指定。
指揮命令。
情報の正確性。
福祉避難。
物資配分。
安全管理。
これらは行政が中心となって担います。
クラブは、自治体の防災計画の中で正式な役割を持ちます。
平時から協定を結びます。
訓練を行います。
役割分担を確認します。
防災イベントだけの関係ではなく、実際に動ける関係へ進めます。
クラブにとってのメリット
防災活動は、クラブにとって直接的な売上を生まないかもしれません。
設備費や運営負担もかかります。
それでも、地域から必要とされるクラブになるという大きな価値があります。
クラブがあることで、災害時の情報が届く。
クラブがあることで、支援物資が集まる。
クラブがあることで、避難場所が分かる。
クラブがあることで、子どもが防災を学ぶ。
クラブがあることで、遠くの地域から支援が届く。
そうした実績が積み重なれば、クラブへの見方が変わります。
サッカーに関心のない住民にも、クラブの存在意義が伝わります。
自治体や企業との関係も深まります。
スポンサーシップも、広告から地域安全への投資へ広がります。
防災活動が、クラブ経営を圧迫するだけの事業にならないように、自治体やスポンサーから適切な費用を受け取ります。
地域貢献だから無料で行うのではありません。
社会に必要な機能として、持続可能な事業にします。
サポーターにとってのメリット
サポーターは、防災の知識を得られます。
家族の避難場所を確認できます。
応急手当を学べます。
自分の技能を地域支援へ活かせます。
遠征先で災害が起きても、クラブアプリから情報を得られます。
スタジアムへ行くことが、観戦だけでなく、自分や家族を守る知識につながります。
何より、
応援するクラブが、自分の暮らす町を守る存在になる
という誇りが生まれます。
防災活動への参加を、サポーターの義務にはしません。
サッカーだけを楽しみたい人がいても構いません。
参加できる人が、できる方法で関わります。
防災クイズに答える。
備蓄品を確認する。
募金をする。
研修を受ける。
地域訓練へ参加する。
それぞれの距離で参加できます。
地域住民にとってのメリット
サッカーに興味がない人にも、スタジアムの防災機能は役立ちます。
災害時の避難場所になります。
物資を受け取れます。
電源や通信を利用できます。
医療や福祉支援につながります。
平時には、防災イベントや健康活動へ参加できます。
スタジアムが、試合の日だけ使われる施設ではなくなります。
地域住民が日常的に訪れることで、災害時にも迷わずたどり着けます。
トイレの場所。
入口。
避難経路。
受付。
普段から知っていることが、非常時の安心につながります。
スポンサー企業にとってのメリット
企業は、単なる寄付ではなく、自社の強みを活かして地域を支えられます。
物流企業は輸送。
飲料会社は水。
食品会社は備蓄。
通信会社は情報。
自動車会社は給電と移動。
保険会社は防災教育。
IT企業はデータ基盤。
ホテルは宿泊。
建設会社は復旧。
企業ごとに役割があります。
その活動実績を、
何人に防災教育を届けたか。
どれだけの物資を備蓄したか。
何回訓練を行ったか。
災害時にどのような支援を行ったか。
という形で可視化できます。
企業の社会貢献が、広告表現だけではなく、実際の地域防災力として残ります。
スタジアムのない地域も取り残さない
すべてのクラブに大規模スタジアムがあるわけではありません。
スタジアムが市街地から遠い地域もあります。
災害リスクのため、スタジアム自体が避難場所に適さないこともあります。
その場合は、別の施設と組み合わせます。
クラブハウス。
練習場。
学校。
体育館。
商業施設。
駅前のAWAY BASE。
地域ホテル。
スポンサー企業の倉庫。
一つの建物にすべてを集める必要はありません。
複数の施設をネットワークとして使います。
スタジアムは情報と人の集合拠点。
ホテルは宿泊。
倉庫は物資。
学校は避難。
交通会社は移動。
クラブアプリは情報。
役割を分担します。
「スタジアムを防災拠点にする」という表現は象徴です。
本当の目的は、
クラブを中心に地域の防災資源をつなぐこと
です。
防災拠点の評価指標をつくる
設備を導入して終わりにしないため、共通の評価指標をつくります。
非常用電源は何時間使えるか。
水は何人分あるか。
通信手段はいくつあるか。
バリアフリートイレはあるか。
福祉避難へ対応できるか。
備蓄品は更新されているか。
年に何回訓練したか。
クラブスタッフの何人が研修を受けたか。
サポーター登録者は何人いるか。
自治体との協定はあるか。
近隣ホテルや物流会社と連携しているか。
多言語対応はあるか。
ただし、単純なランキングにはしません。
設備が整った大都市のクラブが有利になるからです。
前年からどれだけ改善したか。
地域の災害特性に合っているか。
住民参加が増えたか。
実際の訓練で課題を修正したか。
改善を評価します。
防災機能を、スタジアムライセンスの形式的なチェック項目にもしません。
施設所有者でないクラブへ、過剰な負担を求めないようにします。
地域ごとの役割と改善を評価します。
JFAぼうさい拠点とJリーグをつなぐ
JFAぼうさい拠点は、全国25カ所程度を目指しています。
一方、Jリーグには全国のクラブがあります。
JFAの拠点が、設備や物資を備えた基幹拠点になります。
Jリーグクラブは、地域住民、自治体、スポンサー、サポーターとの接点になります。
都道府県サッカー協会は、地域のグラウンドや指導者、学校とつなぎます。
それぞれの強みを分けます。
JFAは、全国基準、研修、基幹設備。
Jリーグは、クラブとサポーターのネットワーク。
クラブは、地域での実装。
自治体は、防災計画と指揮。
企業は、設備、物流、技術。
サポーターは、啓発、参加、支援。
役割を明確にします。
JFAぼうさい拠点を孤立した25カ所にしません。
全国のクラブや地域施設と結び、
日本サッカー防災ネットワーク
へ発展させます。
サッカーの全国ネットワークは、災害時にも意味を持つ
Jリーグには全国にクラブがあります。
ホームとアウェイがあります。
毎年、多くの人が町と町の間を移動します。
クラブ同士がつながっています。
サポーター同士もつながっています。
スポンサー企業も全国にあります。
普段は、そのネットワークを試合のために使っています。
試合日程。
チケット。
遠征。
放送。
商品。
情報発信。
しかし、災害が起きたときには、別の使い方ができます。
被災地の情報を全国へ伝えます。
必要な物資を集めます。
支援者を運びます。
宿泊場所を確保します。
募金を集めます。
被災地域の商品を買います。
復旧後に、再びその町を訪れます。
一つのクラブだけではできないことも、全国のクラブがつながれば可能になります。
スタジアムを、地域最大の防災拠点へ
スタジアムは、試合を行う場所です。
選手が戦います。
サポーターが応援します。
勝利を喜びます。
敗戦を悔しがります。
その役割が中心であることは変わりません。
しかし、試合のない日にも、地域に価値を生み出せます。
子どもが防災を学びます。
住民が避難経路を確認します。
企業が設備を試します。
クラブスタッフが訓練します。
サポーターが支援方法を学びます。
そして災害が起きたとき、スタジアムの照明がつきます。
情報が届きます。
水が配られます。
人が集まります。
バスが動きます。
ホテルが支援者を受け入れます。
スポンサー企業の物流が物資を運びます。
全国のクラブから支援が届きます。
JFAぼうさい拠点。
Jリーグクラブ。
スタジアム。
クラブアプリ。
アウェイバス。
STAYX(ステイクロス)。
AWAY BASE。
スポンサー物流。
サポーターネットワーク。
これまで別々に考えてきたものを、防災という目的でつなぎます。
スタジアムを、地域最大の防災拠点にできないか。
全国のクラブを、災害時に支え合うネットワークにできないか。
クラブがあることで、地域が少し安全になる。
サポーターであることが、自分と誰かを守る力になる。
サッカーの全国ネットワークが、日本社会のレジリエンスを高める。
そんな未来が実現したら、Jリーグや日本サッカーの社会的な価値は、さらに大きくなると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事は、「日本サッカー産業論を起点に生まれた問い」シリーズの一編です。
JFAは、災害時に一定期間自立して活動できる「ぼうさい拠点」の整備を進めています。
Jリーグでも、防災啓発活動や、スタジアムを避難・支援拠点として活用する将来像が示されています。
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平時には、サッカーを楽しむ。
災害時には、地域を守る。
スタジアムが、町にとってその両方を担う存在になることを期待しています。
蒼色真琴
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