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生きる価値を感じなかった 石村さとし (仮名男性50歳、自慰依存症、性依存症、アルコール依存症)

1. 幼少期の自分

「石村ってさ、暗いよな」
小学校の教室で、笑いながら誰かが言った。石村はうつむくだけだった。言い返す勇気も、声を出す力もなかった。

家に帰れば母が言った。
「もっとハッキリ言いなさい」
頭ではわかっていたが、怖くて言えなかった。心の奥に空虚な感覚がいつもあった。
「俺は生きてる価値なんてないのかもしれない」
幼いながらに、そう感じていた。


2. 初めての逃げ場

13歳のとき、石村は家で自分の身体に触れてみて、初めて安心感を覚えた。言葉にできない高揚感だった。嫌なことや怖さが一瞬で消える感覚。

翌年、アルコールにも触れた。喉が熱くても、数分後には心が軽くなる不思議な感覚があった。
こうして、セルフプレジャーや酒に頼って嫌なことを忘れる日々が始まった。


3. 青春の孤独

女子に興味はあったが、話しかける勇気はない。声を出すと頭が真っ白になる。
「石村君って、何考えてるかわかんない」
言われるたび、うつむくしかなかった。

大学進学では、女子の多い学部に行けばもてるかもしれないと考えた。そして、女子の多い大学へ入学した。
しかし現実は厳しく、女性と接する前には必ず気持ちを落ち着ける手段が必要だった。アルコールは便利だった。アルコールを飲めば、何とか女性とも話ができた。
孤独と羞恥心を、なんとかやり過ごすために、セルフプレジャーと酒は必須だった。


4. 社会人になって

社会人になると、ようやく女性と付き合えるようになった。しかし長続きしなかった。数回関係を持つと興味が薄れ、別の女性に目がいく。

また、自分を慰めることや気分を紛らわすことに頼り続けた。その結果、金銭的にも精神的にも苦しい状況になった。借金も膨らみ、仕事や友人関係も崩れた。深い罪悪感と倦怠感に押しつぶされ、夜は布団で「生きる価値がない」とつぶやいた。


5. 崩壊と診断

ついに倒れ、病院に運ばれた。
「石村さん、あなたは依存症です。」
医師の言葉が突き刺さった。
「……やっぱり、そうか」
心の奥では薄々気づいていた答えを告げられ、石村は静かに頷いた。


6. 自助会との出会い

医師に勧められ、自助会に参加した。
「初めまして……石村です。どう話せばいいのか」
震える声に、仲間たちは拍手で応えた。
「よく来たね」「ここなら大丈夫だよ」

涙がこぼれそうになる。過去を語るのは苦しいが、話すことで少しずつ心が軽くなる。

隣の仲間が言った。
「俺も同じだった。でも今は生きてる」
その言葉が、石村に小さな希望を灯した。


7. 回復のルール

先輩が言った。
「今は、性衝動をコントロールできなくてもいい。でも過去を忘れず、仲間と分かち合うこと」

毎週会に通い、仲間の体験談を聞き、自分の話をする。最初は疑問だったが、ある日気づいた。
「あれ? 今日一日、なんとかやり過ごせた」
今日一日、セルフプレジャーもお酒も必要ない日が積み重なっていく。
小さな達成感が、自信になっていった。


8. 少しずつ戻る日常

失ったお金や人間関係はすぐには戻らない。しかし生活は安定し、仲間と笑い合える時間が増えた。

ある日、公園で仲間と話した。
「俺らに必要なのは、未来の保証じゃない。“今日一日の平安”だ」
石村はうなずいた。未来を考えると苦しい。過去を思い返すと押しつぶされそうになる。しかし「今日一日」なら生きられる。


9. 今現在

50歳の石村はこう話す。
「性衝動は今でもある。でも仲間がいる。今日一日だけ、やらない、逃げない。それで十分なんだ」

家で日記に書く。
――“今日一日のこころの平安が一番だ”

深呼吸をして目を閉じる。過去は消えない。しかし今日を生きることで、未来は少しずつ変わる。
ただ、今日一日だけ、強迫的性衝動。そしてお酒を止める。
ただ、それだけでいいのだ。


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