レーザーテック決算減収減益の裏で受注は急回復――問題は「業績」より「高すぎた期待」【n+マーケット】

レーザーテック〈6920〉が、2026年6月期の本決算を発表した。
今回の決算を一言で表すなら、
今期は減収減益。しかし受注は大幅に回復し、来期は再成長を見込む。ただし、株式市場の高い期待には十分届かなかった可能性がある。
という内容だ。
決算発表後のPTSでは大幅安となったが、PTSは参加者や売買量が限られるため、それだけで翌日の株価を決めつけるべきではない。
重要なのは、PTSの下落率ではなく、決算の中身と、翌日の本市場で機関投資家がどう評価するかである。
今期は減収減益
2026年6月期の連結業績は、次のようになった。
売上高:2,304億円、前年比8.3%減
営業利益:1,052億円、前年比14.3%減
経常利益:1,078億円、前年比9.7%減
純利益:774億円、前年比8.5%減
1株利益:862.99円
年間配当:329円
売上、利益ともに前年を下回った。営業利益率も前年の48.8%から45.7%へ低下している。
数字だけを見れば、確かに弱い。
ただし、売上高2,304億円に対して営業利益が1,052億円ある。売上の45%以上が営業利益として残っており、企業としての収益力は依然として極めて高い。
レーザーテックの経営が悪化しているというより、前年までの急成長から一度減速した決算と考えた方が近い。
なぜ売上が減ったのか
レーザーテックが販売する半導体検査装置は、注文を受けた時点では売上にならない。
装置を製造し、顧客の工場に納入し、顧客側の検収が完了して、初めて売上として計上される。
そのため、現在の売上は、過去に受けた注文の影響を強く受ける。
会社は、今期の受注は回復したものの、前期の受注低迷が今期の売上に影響したと説明している。
分かりやすく言えば、
今の注文が弱いから売上が減ったのではなく、以前の注文減少が時間差で今期の数字に表れた。
ということだ。
本当に重要なのは、受注が2倍以上に回復したこと
今回の決算で最も注目すべき数字は、売上高ではなく受注高である。
2026年6月期の受注高は2,375億円となり、前年から125.7%増加した。
つまり、前年の2倍を超えている。
主力の半導体関連装置では、
受注高:1,722億円
前年比:208.5%増
となった。
前年の約3.1倍である。
これは、AIデータセンター向けのGPU、CPU、HBMなど、先端半導体への投資が、レーザーテックの実際の注文につながっていることを示している。
AI半導体が高性能になるほど、製造工程は複雑になる。
工程が複雑になれば、不良や欠陥を発見する検査装置の重要性も高まる。
レーザーテックは、その検査工程で高い競争力を持っている。
受注残は3,229億円
期末の受注残高は3,229億円となった。
受注残とは、すでに注文を受けているものの、まだ売上として計上していない仕事である。
簡単に言えば、
これから納品や検収を経て、売上になる予定の金額
だ。
来期の売上予想は2,900億円なので、現在の受注残はその約1.1倍に相当する。
受注残のすべてが来期中に売上になるわけではないが、会社が示した来期の成長予想には、一定の裏付けがある。
ただし注意点もある。
受注高は前年から急回復した一方、期末の受注残高は前年比2.2%増にとどまった。
そのため市場は、
受注が回復したことは評価できるが、今後もこの勢いを維持できるのか
を確認したいのだろう。
来期は過去最高益を予想
レーザーテックは2027年6月期について、次の業績予想を発表した。
売上高:2,900億円、25.8%増
営業利益:1,250億円、18.8%増
経常利益:1,250億円、15.9%増
純利益:900億円、16.2%増
1株利益:1,004.12円
年間配当:351円
経常利益は2期ぶりに過去最高を更新する見通しである。
年間配当も329円から351円へ、22円増配する。
会社側は、2026年6月期を成長の終わりとは見ていない。
過去の受注低迷によって一時的に売上と利益が減ったものの、受注回復を背景に、2027年6月期から再成長すると見込んでいる。
気になるのは利益率の低下
来期予想には、少し気になる点もある。
売上高は25.8%増えるが、営業利益は18.8%増にとどまる。
営業利益率は、
2025年6月期:48.8%
2026年6月期:45.7%
2027年6月期予想:約43.1%
と低下する。
今期の販売費及び一般管理費も、前年の254億円から312億円へ増加した。
研究開発、人材採用、海外拠点、サービス体制などへの投資が増えている可能性がある。
将来の成長に必要な支出なら、必ずしも悪いことではない。
ただし株式市場から見れば、
売上は大きく伸びるのに、なぜ利益は同じ勢いで伸びないのか
という疑問が残る。
レーザーテックは非常に高い利益率を期待されている会社である。一般企業なら十分に強い43%の利益率でも、レーザーテックに対しては「低下した」と評価されてしまう。
直近3カ月の弱さも警戒された
2026年4~6月期だけを見ると、経常利益は前年同期比37.7%減だった。
営業利益率も、前年同期の52.7%から44.4%へ低下した。
通期では来期の回復を予想しているものの、直近3カ月の数字には減速感がある。
短期投資家が警戒したのは、
受注は回復しているが、利益の回復にはまだ時間がかかるのではないか
という点だろう。
今回の決算は未来の受注は強いが、直近の利益は弱い。
この時間差が、評価を難しくしている。
サービス売上は36.5%増加
明るい材料として、サービス事業の成長がある。
今期の品目別売上は、
半導体関連装置:1,680億円、17.2%減
その他製品:37億円、32.5%減
サービス:586億円、36.5%増
だった。
装置販売は減ったが、保守、点検、修理、部品交換などのサービス収入は大きく伸びた。
過去に販売した装置が世界中で稼働しているため、装置の設置台数が増えるほどサービス需要も積み上がる。
装置販売は納入時期によって業績が大きく変動するが、サービス収入は比較的継続しやすい。
レーザーテックは、装置を販売するだけでなく、販売後の保守でも安定的に稼ぐ会社へ変わりつつある。
財務体質は非常に強い
財務面に大きな不安はない。
2026年6月末時点で、
現金及び現金同等物:約915億円
自己資本比率:73.3%
有利子負債:なし
自社株買い:約120億円
来期年間配当:351円
となっている。
一時的に減収減益になったとしても、経営が不安定になるような財務状態ではない。
研究開発を続けながら、配当と自社株買いを同時に実施できる。
企業の基礎体力そのものは、依然として非常に強い。
なぜ「悪くない決算」でも売られるのか
株価は、会社の業績が良いか悪いかだけで決まらない。
市場が事前に何を期待していたかによって決まる。
たとえば市場が営業利益1,300億円を期待していたところに、会社予想が1,250億円だった場合、過去最高益予想であっても「期待以下」と判断されることがある。
レーザーテックには、AI半導体の成長、EUV関連装置の競争力、高い利益率など、大きな期待が集まっていた。
そのため今回の決算は、
普通の企業として見れば強い
レーザーテックへの期待と比較すると物足りない
という評価になった可能性がある。
最近の決算相場では、好決算でも株価が下がる企業が目立つ。
決算発表前に期待で買われ、決算発表後に利益確定される。
つまり市場は、
良い決算かどうか
ではなく、
事前の期待をどれだけ上回ったか
を見ている。
PTSは参考情報にとどめるべき
決算発表後のPTSでは大幅安となった。
ただし、PTSは東証の本市場と比べて参加者が少なく、注文も薄い。
そのため少ない売買でも株価が大きく動きやすい。
PTSは、
決算を見た一部の投資家による最初の反応
を確認する材料にはなる。
しかし、翌日の株価をそのまま予言するものではない。
本当に重要なのは翌日の東証で、
どれだけ出来高が膨らむか
寄り付き後にさらに売られるか
安値から買い戻されるか
海外投資家や機関投資家がどう判断するか
である。
PTSは決算評価の主役ではなく、市場の第一印象を示す補助材料として見るべきだろう。
N+マーケットの視点
今回のレーザーテック決算は、単純に「良い」「悪い」では整理できない。
今期の売上と利益は減った。
直近3カ月の利益も弱かった。
利益率も低下している。
ここだけを見れば、失望される理由はある。
一方で、受注高は前年の2倍以上に回復し、半導体関連装置の受注は3倍を超えた。
受注残も3,229億円あり、来期は過去最高益を予想している。
つまり企業の将来そのものが崩れたわけではない。
今回の決算で起きているのは、業績悪化というより、
会社の成長速度と、株式市場が想像していた成長速度のずれ
ではないだろうか。
レーザーテックは今後も成長する可能性が高い。
しかし市場は、単なる成長では満足しない。
より高い利益、より高い利益率、より大きな受注残を求めている。
だから過去最高益予想でも売られる。
それは企業が悪いのではなく、株価に織り込まれていた期待が高すぎたということだ。
結論
今期は減収減益だが、受注は急回復し、来期は再び過去最高益を目指す。企業の決算としては悪くない。一方、株式市場が求めていた数字には届かず、短期的には期待の修正が起こる可能性がある。
PTSの値動きだけで判断する必要はない。
見るべきなのは、翌日の株価だけでもない。
本当に重要なのは、急回復した受注が今後の売上と利益へ確実につながるのか、そして低下している利益率を再び改善できるのかである。
今回の決算は、成長が終わった決算ではない。
しかし、期待さえあれば株価が上がる時代から、実際の利益で証明する段階へ入った決算だった。
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