老害化する大国リーダーたち【n+マーケット】

――国民の願いを、自分の欲望にすり替える危うさ
今の世界を見ていて、強く感じることがある。
プーチンも、習近平も、トランプも、結局は同じ構造を持っているのではないか。
もちろん三人は同じではない。
政治体制も違う。
国の成り立ちも違う。
民主主義国家のリーダーと、独裁的な長期政権のリーダーを、まったく同列に並べることはできない。
しかし、共通して見えるものがある。
それは、自分の欲望を、国民の願いだと勝手にすり替える危うさだ。
プーチンは、ロシアの偉大さを語る。
歴史的な領土を語る。
ウクライナとの一体性を語る。
しかし、その結果として苦しんでいるのは誰か。
戦場に送られる若者であり、制裁と戦時経済の中で暮らす普通の国民だ。
ロシアは今もウクライナでの軍事目標を押し進める姿勢を崩していない。
習近平は、中華民族の偉大な復興を語る。
台湾統一を歴史的任務として語る。
米国との対立に備え、軍を強くし、党を引き締める。
しかし、中国の普通の人々が本当に望んでいるのは、台湾統一のための緊張ではなく、雇用、賃金、教育、住宅、安心して暮らせる生活ではないのか。
それでも中国共産党は、台湾統一、軍の近代化、党内統制を一体で進めている。習近平氏は創立105年の演説でも、台湾問題、外部圧力、反腐敗、軍の引き締めを強調した。
トランプもまた、少し違う形で同じ危うさを持っている。
アメリカ・ファースト。
国境管理。
関税。
移民制限。
強いアメリカ。
言葉だけを見れば、国民のために聞こえる。
しかし、強い言葉と敵を作る政治は、社会を分断しやすい。
実際、トランプ大統領の出生地主義を制限しようとする大統領令は、2026年6月30日に米最高裁で違憲と判断された。
ここにあるのは、三人に共通する「老害化した大国リーダー」の姿だと思う。
年齢そのものが悪いのではない。
問題は、権力を長く持ちすぎること。
自分を否定する声を遠ざけること。
自分の成功体験だけで国家を動かそうとすること。
そして、自分の物語を国民全体の願いだと思い込むことだ。
本来、国民が望むものはもっと普通だ。
戦争ではない。
生活だ。
覇権ではない。
安心だ。
歴史に名を残すことではない。
子どもたちがまともに生きられる未来だ。
しかし、大国のリーダーほど、そこを見失う。
プーチンはロシアの歴史を見ている。
習近平は中華民族の復興を見ている。
トランプは自分の支持者とアメリカの強さを見ている。
でも、本当に見るべきなのは、普通に暮らす国民の生活ではないのか。
私が一番怖いと思うのは、彼らが「悪人だから危ない」という単純な話ではないことだ。
彼らは、自分では正しいと思っている。
国のためだと思っている。
歴史的使命だと思っている。
だからこそ危ない。
自分の欲望を、国家の使命に変換してしまう。
自分の執念を、国民の願いにすり替えてしまう。
自分の権力維持を、国の安定だと言い換えてしまう。
これが、老害化したリーダーの本質だと思う。
会社でも同じだ。
古い会長が「俺の時代はこうだった」と言い続け、現場の若い人の声を聞かなくなる。
組織のためと言いながら、実際には自分の面子を守っている。
変化を恐れ、失敗を認めず、次の世代に席を譲らない。
それが国家規模になると、戦争、分断、経済混乱になる。
マーケット目線でも、これは無視できない。
台湾リスク。
ウクライナ戦争。
米中対立。
関税。
移民政策。
防衛費。
為替。
原油。
半導体サプライチェーン。
すべてが、大国リーダーの判断ひとつで大きく揺れる。
だから今の投資家は、企業業績だけを見ていればいい時代ではない。
政治リスク、地政学リスク、そしてリーダーの老害化リスクまで見なければならない。
国民は、戦争を望んでいるのではない。
国民は、分断を望んでいるのではない。
国民は、リーダーの歴史的評価のために生きているのではない。
それでも、権力者は時に、自分の欲を国民の願いだと勘違いする。
これが今の世界の一番危ないところだと思う。
大国のリーダーに必要なのは、強い言葉ではない。
自分を歴史に残す執念でもない。
必要なのは、次の世代にちゃんとバトンを渡す覚悟だ。
その覚悟がないリーダーは、どれだけ国を愛していると言っても、最後は国民の未来を壊してしまう。
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