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「お母さん」は、デイトレーダー

投資をしていたことは知っていた。
だけど、ノートの存在に気が付いたのは、亡くなってからだった。
中には、毎日の日付、上がり値と下がり値。
規則的な数字が並ぶ。
毎日売って、買ってを繰り返していた。
そこには自分の知らない母がいた。

これは、わたしの高校時代からの友達の話である。
今年はじめにお母さんが亡くなった。
70代前半。
持病があったのだそうだ。
それにしても若い。

「大変だったねぇ」
そんなわたしの一言を聞いてから、少しずつ友人は話し出した。

亡くなったときのお母さんの様子や、お父さんの様子。
わたしは、順々に聞いていった。

そして、その後の片付けについて話題が移ったとき、わたしは驚愕した。

彼女のお母さんは、わたしが無意識に思い浮かべていた「お母さん」と大きく違っていたのだ。

彼女のお母さんは、デイトレーダーだった。

しかも、凄腕の。

亡くなってから、見つかったノートには、毎日の売買記録が残されていた。

自分で決めたルールに基づき、売り買いしている様子が細かく書いてあった。

税理士さんに資産を全て確認してもらったとき、
「本当に専業主婦だったんですか?」
と驚かれたらしい。

友人も、お母さんの資産額を亡くなって初めて知り、言葉を失ったと話していた。

はっきりした数字は、わたしも聞いていない。
なんだか聞くのが怖い。
彼女が遠くに行ってしまうようで。

だけどやっぱり、迂闊なわたしは、こんな気持ちも出てきた。
「凄腕デイトレーダーのお母さん、わたしも欲しいなぁ」

もちろん、お母さんが亡くなった寂しさと引き換えになんてできない。
その資産を、旅行や楽しいことに使う人生もあったのではないかと、想像してみたりもする。

だけど、羨ましくなんかない、とは言えない。

友人の子ども達はまだ小さい。
公立の小中学校に行っていても、塾に行くと月に数万円がかかる。
今年長男は高校へ入学したが、諸経費が30万円弱かかった。
大きいところで言うと、制服、教科書、部活のユニフォーム、iPadを買う必要があったのだ。

そして、大学は、
「私立だと毎年100万円くらいいるよ」
と先輩ママさんからは聞いている。

どれも、もれなく子どもの人数分がかかってくるに違いない。

子どもを3人育てている彼女にとって、お母さんが残してくれたお金は、きっと心強い存在になるだろう。

ずっと前から、
「お母さんとはあまり関係が良くない」と聞いていた。

だからこそ、亡くなってから初めて知ったお母さんの姿やノートに、友人はどんなことを思ったのだろうか。

わたしには想像もつかない。

そして、わたしには一ミリだって関係ない。

だけど、思わずつぶやいてしまうのだ。

「お母さん」、ありがとうね。

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のぞみん|揺れる乙女、45歳 いただいたチップは、創作活動に使わせていただいております。 その活動をまたnoteにも還元しています。 いつも温かい応援をありがとうございます🤗