もう二度と食べられない No.4 サイダーバのインドカレー
ついに閉店してしまった。葛飾区の水元にあったインドカレーのお店、サイダーバの閉店のお知らせを受けてガックリと肩を落とした。
インド人のご夫婦二人で切り盛りされていたサイダーバは、2015年に水元へ転居した頃に夫と見つけた店だっだった。水元で暮らしている時はお散歩がてら夫と二人でよく行った。子供が生まれて隣町に引っ越し後はしばらく行かれなかったのだけど、コロナが落ち着き、子供が外食できるようになってまた行くようになった。
子供がサイダーバのバターチキンカレーとナンが大好きで、ここ五年はずっとバターチキンカレーばかりを注文していた。一番辛味の少ないバターチキンは三歳くらいの子供でも美味しく食べられる。コクがあってクセがなく、絶妙なバランスに支えられたバターチキンは、ここ以外に食べたことはない。どこかスパイスが効きすぎていたり、喉越しが悪かったり、甘みがきつかったり、なにか違和感があるものなのだ。
私はマトンカレーチャーハンが好きだったけれど、最後に食べたのはもう一年以上前かもしれない。日本の米を使っているからか、ビリヤニという言い方はしていなかったけど、いわるゆビリヤニというものだったのかもしれない。マトンカレーチャーハンの美味しさをどう形容したらよいのだろう。旨みを凝集したカレー味が米に満遍なく絡まり、やわらかいマトンが口に入ると脳が喜ぶのだ。
もう二度とあのマトンカレーチャーハンもバターチキンカレーも食べられない。店主のご夫婦はここ何年も体調不良を訴えていて、病院に通いながら店を続けられてきた。近い将来に閉店されるものと覚悟はしていたが、実際に閉店を目の当たりにすると寂しくなる。
夫婦二人のお気に入りが子供のお気に入りになり、家族三人で美味しいねとカレーを囲んだ。子供が大人になって、かつてあったインドカレーのお店は記憶に残るのだろうか。
最後にお店に行ったのは3月上旬。子供の習い事の帰りだった。子供がその前の週に夕飯はサイダーバで食べたいと言っていたのだけれど、夕飯の支度がしてあったので叶わなかったので、習い事が終わる前にテイクアウトの電話をしていたのだ。
子供と合流すると、子供が行きつけの中華に行きたいと言うのを制してテイクアウトでカレーを注文済みだと答える。子供はテイクアウトを嫌い、お店で食べたいと言った。私はお店に向かい、まだテイクアウトの準備ができてなかったらお店で食べようと言って、子供と二人で店に入った。
テイクアウトで注文したバターチキンをちょうど調理していたので、テイクアウトをキャンセルしてお店で食べても良いことになった。その日は夫がいなかったのでテーブル席ではなく、二人でカウンターでカレーを待っていた。
六歳の子供はまだ一人前を食べきれないはずだった。だから二人で大きなナンとバターチキンを分け合うのだが、食べ終わってみれば子供は足らないと言う。追加でチーズナン、バナナラッシーのおかわりを頼んだ。お腹いっぱい食べたい子供は限界を超えて、むしろ気持ち悪くなってしまったようだった。
それが最後とは知らないで、また食べられるもの思っていた。
サイダーバのパパさん、ママさん、今までありがとうございました。これからもお身体を大切にしてください。
私は水元にサイダーバがあったこと、ご飯が抜群に美味しかったことをずっと覚えています。
近所にできた新しいインドカレーのお店でバターチキンを食べて、もう二度と食べられないサイダーバのカレーに思いを馳せた。
子供は食べる量が増えて、大人一人前を食べられるようになるまでの日は近いだろう。子供の成長と街の新陳代謝を目の前に、中年にさしかかった自分もまだまだ成長したいと思うなどした。
いいなと思ったら応援しよう!
お読みいただき、誠にありがとうございます。noteは原則として無料公開をしておりますが、もし応援いただけましたら嬉しいです! いただいた応援は文芸活動費に使わせていただきます。