お坊さんが教える仏教的コーチング#10自分に問いかける
10|相手についての質問を、自分に問いかける
― “わからなさ”を怖れず、共感の視点に立つ仏教的アプローチ ―
問題の原因は「相手」にある?
それとも「自分の見方」にある?
「社員ってどうして、いつも自分が正しいと思っているんですかね?」
ある経営コンサルタントが、クライアントである社長からこう相談を受けたそうです。
その会社は長らく売上が伸び悩み、社員の離職も絶えない状態。
社長はいつも命令口調で社員に話しかけ、指示が通らなければ苛立ち、怒鳴り散らす。
結果、職場は萎縮し、社員は黙って従うか、静かに辞めていく……。
「彼らの努力が足りないんです」と言い放つその社長の姿に、コンサルタントはある問いを投げかけました。
「社員の態度について考える前に、あなた自身は、社員についてどんな“質問”を自分にしていますか?」
相手の視点に立つには、「質問の向き」を変えること
私たちはつい、「どうしてこの人はわかってくれないのか」「なぜ動かないのか」と、相手を問いたくなります。
けれどその問いの前に、「自分はこの相手の背景をどれだけ理解しようとしているだろうか?」と、自らに問いかけることができるでしょうか。
たとえば――
「彼は営業の場で、どんなことを考えながら動いているのだろう?」
「彼女は今、何を守ろうとしているのか?」
「この人はどんな夢を持って生きてきたのだろう?」
こうした問いを自分に向けるとき、私たちは相手の世界に近づいていくのです。
相手への問いを、自分への問いに変える
― それが“共感の起点”となる
仏教的コーチングでは、「他人を変える」よりも、「見方を変える」ことを大切にします。
たとえ相手が怒っていたとしても、
「この人は何に傷ついてきたのか?」
「どんな不安を抱えて、今ここにいるのか?」
そう自分に問いかけることで、対話の質が変わります。
如来の願いとは、すべてのいのちを「そのままに」受けとめてくださること。
相手を“評価”するのではなく、“理解”しようとする問い。
それこそが、仏教的アプローチの根幹にあります。
🔹POINT
相手の立場に立って考えるには、相手に関する質問を自分自身にたくさん問いかけること。
“なぜこの人はこうなのか?”ではなく、“私はこの人をどう見ているのか?”と問い直すことが、真の共感をひらく鍵になります。
