お坊さんが教える仏教的コーチング#05鋭さより、ひらき
05|「問い」は鋭さより、ひらきを
―“なぜ”の代わりに“なに”で道をひらく仏教的アプローチ―
私たちはときに、相手の問題の核心に迫ろうとするあまり、「なぜ?」という言葉を使って問い詰めたくなります。
「なぜ売上が上がらないのか?」
「なぜチームが動かないのか?」
しかしその「なぜ」は、しばしば相手を問い詰め、防御させ、対話の扉を閉じてしまう結果にもなりかねません。
仏教的な対話において大切なのは、「正す」のではなく、「ひらく」こと。
相手の内側にあるものを、恐れず、やわらかく引き出していく問いの形が求められます。
「なぜ」は追及、「なに」は共感
仏教では「問いかけ」も修行のひとつです。
相手を裁くためではなく、真実に近づくための問い。
「なぜ」は本質を探るための言葉である一方で、受け取る側にとっては“自分が責められている”と感じさせやすい言葉でもあります。
では代わりに、どんな問いを投げかければよいのでしょうか?
その答えが、「なに」を使った問いです。
「なにがうまくいかなかったと思いますか?」
「なにが障害になっていたのでしょうか?」
「なにが今、いちばん気がかりですか?」
こうした問いは、相手の思考を整理し、自ら気づくきっかけを与えてくれます。
相手の“内なる発見”を妨げない問いの形
「なにが障害になっていたのか」
「なにが達成のカギになるのか」
「なにを変えたらよさそうか」
こうした“なに”の問いは、相手の中にある「気づきの種」にそっと水をやるようなものです。
浄土真宗で大切にされる“如来の願い”もまた、私たちを裁くのではなく、
ありのまま受け容れ、気づきと歩みを支えるもの。
問いもまた、そのように「責める」のではなく「照らす」ものでありたいのです。
相手を信じるからこそ、“ひらく問い”を選ぶ
仏教的コーチングは、答えを導き出す技術ではありません。
「相手のなかにすでにある願いや可能性を信じる」関わりのあり方です。
その信頼があってこそ、問いは鋭さではなく“ひらき”を帯びます。
「なぜ?」と詰めるより、「なに?」と共に見る。
その違いが、対話の場をやさしく、そして確かなものに変えていくのです。
🔹POINT
“なぜ”は防御を引き出し、“なに”は共に気づきをひらく。
問いのかたちは、信頼のかたちでもある。
