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お坊さんが教える仏教的コーチング(実践編)♯05「名選手、名コーチにあらず」

05|自分の型を押しつけない

「名選手、名コーチにあらず」の本当の意味

「優れた人ほど教えるのが下手」――そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。
スポーツの世界でも、ビジネスの現場でも、結果を出した人が必ずしも優れた指導者とは限りません。
なぜなら、優れた実績をもつ人ほど、「自分のやり方」に強いこだわりをもちがちだからです。

「こうすればうまくいく」という確信があるがゆえに、その方法を他人にそのまま適用しようとする。
しかし、目の前の相手は、同じようには動きません。
仏教でいえば、それは「一水四見(いっすいしけん)」──同じ水を見ても、天人は甘露、魚は住処、餓鬼は炎と見るという譬えのようなものです。
相手の見ている世界や価値観を知らずに、ただ一方的に水を差し出しても、それは「炎」に映るかもしれません。

相手の“強みの回路”を探す

あるマネージャーが、自分のやり方で部下を引っ張ろうとしていました。
彼の営業スタイルは熱血型。想いを伝え、情熱で動くタイプ。
ところが、部下はどこか反応が鈍い。売上も伸びない。
「どうして伝わらないんだ」とマネージャーは悩みます。

実は部下は「分析型」。
論理を重視し、情報を精査してからでないと動けないタイプだったのです。
つまり、熱量で押されれば押されるほど、距離を置いてしまう。

ここで必要なのは、部下の“強みの回路”を見つけること。
情熱で動かすのではなく、「データをもとに冷静に計画する」力を活かすようなアプローチに切り替える。
仏教的に言えば、相手の縁に合わせて法を説く「応病与薬(おうびょうよやく)」です。

相手を変えるのではなく、縁を変える

「自分の型」に相手をはめ込もうとするのではなく、
相手の個性を尊重し、その強みが花開く“場”を整えていく。
これこそが、コーチングの本質ではないでしょうか。

自分の力で相手を動かすのではなく、
相手自身が動きたくなるような「縁」を調えること。
それはまるで、阿弥陀さまが私たち一人ひとりに合った願いをかけてくださるように──
相手を変えるのではなく、相手が自ら歩み出す縁づくりが、仏教的コーチングの極意なのです。

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