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マレーシア・ペナン島の結婚披露宴② 《旅》

ペナンはやはり暑くて、湿っていた。
当時の日本よりは、という話だけど、今の日本の夏よりは、たぶんだいぶ気持ちいいのだろう。海があって、自然がある熱帯気候だからだ。
ペナン空港からホテルまでは四十分弱。意外と遠く感じた。着いたのは夜の八時ごろだった。

やはりリゾートホテルはとても良い雰囲気だった。

 部屋に着くと、約束通りジェシーに電話する。
すると彼女が言った。

「明日の結婚式は、みんなと話さないといけないので、ゆっくり話せない。今からジョージタウンに飲みに出てこないか?」

まあ、
たしかに、初顔合わせがいきなり結婚披露宴というのもどうなのか?
前日にゆっくり話しておくのはいいのかもしれないな。
と、変に納得して、

「行くわ」

と答えた。
そして道連れの従業員に伝えに行く。
その従業員は母と同室だった。

「ジョージタウンに来いって」

僕は旅行のプラン関係をほとんど人任せにしていたので、ジョージタウンがどこにあるのかもよくわかっていなかった。(タクシーで30分程度もかかる距離らしい)

「ジョージタウン!?」

彼女は言った。

「行かん」

首をぶんぶん振る。
いやいや、こちらも約束してしまったので引っ込められない。

「行くで」

そう言うと、彼女はベッドに逃げ込み、布団の中に隠れた。
「いかん!」

「行くで!」
と、ひっぱがした。
そして
すごく
いやいや、
とぼとぼと連れられて行くその様子を、母はげらげら笑っていた。


ジョージタウンに着いた。
約束の場所に行くと、ジェシーとピートが待っていた。
写真で見た通りの二人だった。
ジェシーは年齢のわりに、ほんとうに二十歳前後という感じで、素直に好感が持てた。
ピートも、大柄で知的な感じのする人で、やはり好印象だった。
会話は英語。
従業員はからきしである。
ひととおり挨拶を済ませると、入れそうなバーに入って、雑談に興じつつ
明日の予定を聞いた。
明日は昼食会のような感じで結婚式があり、食事が出ること。
そして、私たちは「いちばん仲の良かった友達グループ」の席に入ること。
あんなに嫌がっていた従業員はというと、この体験が思った以上にわくわくしたのか、すっかり乗り気になっていた。
日本語でまくしたて、それを僕に通訳させる。
ジェシーが予想以上に好印象で、とても楽しかったらしい。
そのうちジェシーが言った。

「生演奏で日本の曲を流しますので、歌ってください」

歌が苦手な僕。
もっと苦手な彼女。

彼女は首をぶんぶん振った。

「うたわへんで!」

そんな感じで、結婚前夜は過ぎていった。
結婚当日の朝、食事はホテルでとった。
炒めるたびに咳き込んでしまう料理があった。辛い焼きそばのようなものだ。
でも人気料理なのか、みんなそれを好んで取っていた。
朝の一撃としてはなかなかパンチがある。
けれど、目覚めの一発として、それを起点に食欲が増進する感じで、妙に気に入った。
朝ごはんは総じておいしかった。


朝食が終わると、従業員が言った。

「その靴で行くん?」

ぼろぼろのスニーカーを見ての一言である。
披露宴では、みんな多少はきちんとした格好をしているはず。
旅行者丸出しではまずいだろう、と。
そこで結婚式に行く前に、デパートへ駆け込み、シャツと靴を買うことになった。
彼女も、

「私たち、日本からの来客ってことで目立つで。私もちょっといい格好せんと」

と言って、間に合わせの買い物をした。
そうして二人とも、多少レベルアップした。
 少しはそれらしくなったかな?
ご祝儀も、日本なら三万円とかそういう話になるのだろうけど、マレーシアでは、スーパーで忙しかった時に従業員に出す大入り袋程度が相場らしい。
しかも赤い袋に入れるという。
そこで日本で日本らしいデザインの赤っぽいぽち袋を買い、それに相場の何倍かを入れていた。
それでも日本の感覚からすると大した額ではないのだけれど。
会場に入ると、従業員が言った。

「やっぱりや」

そう。
みんなきれいな格好をしていた。
とくに私たちの友達席には女性も何人かいたが、みんな感じのいい装いだった。
女性はこういうとき、ちゃんと比較チェックするんだろうね。
 とても大切なことなんだろう。
僕は無頓着すぎたのである。
食事は個別の皿ではなく、中華の回転テーブルに大皿が並び、好きに取り分ける形式だった。
へえ、こういう感じなんだ、と感心した。主催者も大変だろうなと思う。
披露宴は、簡単な挨拶が少しあるだけで、ほとんど生演奏が中心だった。
みんなでその時間を楽しむって感じでゆったりしている。プログラムもそれほどきっちりはしていない。
そして
曲はいろいろなものをランダムに流している。
好きな曲を流しているんだなと思った。
ジェシーとピートのところへ行きお祝いを言ってから、少し話をした。
その時、また言われた。

「日本の曲、流れるから歌ってね」

「うたわへんで!」

従業員は首をぶんぶんと振ってまた断言した。
ジェシーもピートも、昨日初めて直接会ったとは思えない感じだった。
不思議なもので、もう長年の友達のような気がする。
友情に必要な時間って、時計の時間じゃないのだな、と思った。

式の途中、司会者が言った。
「日本から来賓の方が来ています」
立って頭を下げると、拍手が起きた。

そして曲が流れた。
日本の曲だった。
愕然とした。
流れてきたのは、
ラブ・イズ・オーバー。
そんな歌ながすかあああ!?
別れの歌やろ?
好きな曲ならなんでも流すのね。
それにこれって、日本語の歌謡曲だけど
欧陽菲菲は台湾人の歌手やし。
色々と突っ込みどころはあるけど
型が破れているというか、もう何をしても幸せなのだろう。

披露宴は、同じテーブルになったジェシーの友人たちとの交流を中心に、無事に終わった。

帰り際には、ジェシーとピートが見送ってくれた。
二人ともほんとうに幸せそうだった。

ジェシー。
赤を基調にしたドレス

とてもかわいかった。

お幸せに。


    まだ、つづきます


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