🌙記憶の断片|靴に穴があいていた
🌙記憶の断片
「待って」
何度も、そう言って立ち止まっていた。
靴の中に、石が入る。
歩くたびに足の裏に当たって、
じんわりと痛くなる。
靴底には、穴があいていた。
家から学校までは、徒歩で五十分。
その道を、一人では行けなかった。
どこを曲がればいいのかもわからない。
幼馴染がいないと、学校にたどり着けない子だった。
前を歩く幼馴染を、必死で追いかける。
でも、石が入るたびに立ち止まる。
そのたびに、振り返って待ってくれる。
何度も、何度も。
小さかった私は、
その優しさに甘えていた。
一人では、何もできない子。
弱虫だった。
靴の中の石よりも、
立ち止まってばかりの自分の方が、
情けなかった気がする。
家が貧しかったことも、
その頃はよくわかっていなかった。
ただ、穴のあいた靴で
毎日同じ道を歩いていた。
それだけのこと。
