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ほら たぶん こっちだよ。(2025/10/18 ukka 10th Anniversary Live vol.6 第2部 村星りじゅプロデュースワンマンライブ 〜process〜)

「ここまでは、このあと第2部のプロデュースワンマンにも繋がります──でも伏線とかそういうんじゃないですよ」
この日第1部の生誕ソロライブ、アンコールラストの曲を前に、村星りじゅは、ほんの少し肩の力を抜いたような表情でそう言った。

その声には、やりきった安堵感まじりのユーモアと、それ以上に“この先へ続く道筋”を見据える確信が混ざっていた。

そのあとに歌われた曲は、私立恵比寿中学の『頑張ってる途中』だった。

まだまだいろいろ勉強中
夢の途中 夢の途中
あんなことこんなことお悩み中
もやもや中もやもや中

私立恵比寿中学『頑張ってる途中』

90分近いソロステージを笑顔をたたえながら走りきった村星りじゅは、「また2部で」と軽やかに言い残して袖に消えた。

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2025年、ukkaはデビュー10周年を迎え、7人のメンバーそれぞれがプロデュースを担当する”ほぼ毎月”定期ワンマンシリーズを展開している。ここまで5回を終え、迎えたこの日が6回目。
10月にプロデューサーを務めたのは村星りじゅだった。

(※以下、敬称略で失礼します。また、ライブの内容や引用したメンバーの配信内容、そこからの解釈については記憶に基づく部分も多く、実際と異なる点があるかもしれません。ご容赦ください)


セットリスト

(オープニング映像)
M1. アフタヌーン・グラフィティ〜10th ver.〜
M2. こころ予報
M3. AM0805の交差点〜10th ver.〜
M4. まわるまわるまわる
(転換映像)
M5.リボンのひみつ
M6. 初恋模様
M7. 灼熱とアイスクリーム
(転換映像)
M8. 透明
M9. Believe
M10. WINGS
M11. コズミック・フロート〜10th ver.〜
(転換映像)
M12. 時間。光り輝く螺旋の球。
M13. Glow-up-Days 〜10th ver.〜
M14. リンドバーグ 〜10th ver.〜
M15. それは月曜日の9時のように 〜10th ver.〜
M16. キラキラ 〜10th ver.〜
M17. Re:RAY

EN1. エビ・バディ・ワナ・ビー
EN2.ボクエール
EN3. Aonity

幕が上がる、その前に。

今回の会場は、東京キネマ倶楽部。
この会場は、ukkaにとっていくつかの出来事が折り重なってきた場所だ。
6年前 ── tipToe.とのツーマン。
2年前──宮沢友と若菜こはるの加入発表のサプライズ。
1年半前──茜空・芹澤もあの生誕ソロライブ。

この日のライブタイトルに、村星りじゅが「process」と名付けた意味を思うと、この会場が選ばれたのは偶然ではない気がした。

開場待ちの1階はいつもどおり雑然としている。
東京キネマ倶楽部はライブハウスとしてはは少し独特で、整理番号順にスタッフから呼び出しがかかると、5〜6人ずつがエレベーターに乗せられ、順にピストン輸送のように上階のフロアへと送り込まれていく。
天井の低い待機スペースに反響するざわめきと、エレベーターに乗ったあとのなんとも言えない静寂とのあいだに生まれる“間”が、この会場特有の空気をつくっている。

1階の待機スペースには、この日めずらしく、別の階で行われているライブの物販コーナーが設けられていた。ukkaの開場待ちと、別会場の物販の喧騒が交錯する、ちょっと不思議な光景。
その中に、ふと懐かしい記憶を手繰り寄せるなにかがあったような気がした。かつて桜エビ〜ずのMVの多くを手がけていた人物がプロデュースしているグループの名前が、そこにはあった。

やがて整番順に呼び出され、エレベーターに誘導される。
やや乱暴に閉まる古いエレベーターのドアが閉まると、外の喧騒が「すん」と静まり返り、やがてライブハウス特有の薄暗くて密度のある空気が身体にまとわりつく。
エレベーターのドアが開き、下りた瞬間のあのちょっとしたRPGのように目の前の空気が切り替わる感覚──自分はけっこう好きだ。

process into

少しずつ観客がフロアに送り込まれるたび、一階のざわめきがそのまま移動していく。
”ライブがもうすぐ始まる”という気配は、視界にではなく空気の密度として積み重なっていく。
客入SEの音はたしかに流れているのに、気づけばその存在がどこか遠のいて、代わりにところどころで談笑する声や、誰かの靴音や、少し深く息を吸う音なんかが近くなっていく。

18:00──定刻。照明がゆっくりと落ち、正面の赤い幕が左右に開く。
スクリーンに映し出されたのは、メンバーそれぞれがライブに“向かっていく”姿を切り取った短いオープニング映像だった。
映像は、7人がそれぞれ“日常”を生きるワンシーンから始まる。
家の中で、道を歩く途中、ふと何かを思いついて立ち止まった一瞬──どこかから「呼ばれている」予感を感じて、ひとり、またひとりと、彼女たちは立ち上がっていく。
「行かなくちゃ」という小さな衝動が、ひとつに収束していくようだった。

豪華な映像ではない。
けれど、余計な飾りがないぶん、歩き出す“意志”だけがくっきり残る。
全員が“これから始まる何か”へ歩いていく、その空気感がきちんと映し出され、自然とフロアの視線はステージへ吸い寄せられていった。

2部の最初に置かれた曲──1部の「繋がりますよ」の先にあったのは、『アフタヌーン・グラフィティ』だった。
最初はバラバラにステージに現れる7人。
立ち位置も、呼吸のリズムも、少しずつ違う。
けれど曲の進行とともに、まるで磁石でも働いているかのように近づいていき、「♪ここで落ち合うと〜」で、ひとつの点に収束する。

その一拍のシンクロとともに、「process」の幕は開いた。

続く『こころ予報』『AM0805の交差点』で、ライブのスピードと熱が一気に上がる。
後日、村星りじゅの配信で明かされたところによると、この構成には明確な意図があったという。
いわく──物語に寄り添いすぎるのではなく、自分たちのライブとして、まずは“アツく盛り上げて始めたい”。その方が、自身の考える「ukkaらしさ」に正直だと思ったからなのだろう。

その言葉どおり、序盤の数曲には、ukkaが長く培ってきた楽しさ・熱さがはっきりと息づいていた。
『まわるまわるまわる』の間奏をあえて長くすることで、メンバー全員の自己紹介を挟み込むのも、村星りじゅのアイデアだった。
そう、いつものukkaのライブだった。

ステージとステージの間をつなぐもの

MCを挟むと、照明がすっと落ち、転換映像がスクリーンに映し出される。
「りじゅ・そら・もあ」初期からのメンバー3人の対談。
ここが思い出のレッスン場ですなどと懐かしみながら、ステージに立つまで、ステージとステージとの間の長い長い時間を過ごした記憶を、にこやかに振り返る数分間の短いものだった。
映像の最後に、芹澤もあがリボンのジェスチャーを向け(自分は気づかなかったけれど)、笑顔で曲ふり。

『リボンのひみつ』、この少々不思議な最新曲は、村星りじゅいわく「10周年に欠かせない曲」だとのこと。だからここに置きたかったとのこと。
「♪リボンでギュッとしたい」の対象は誰なのか?
移ろいやすいファンに首輪をつけたいのか、いまの自分たちをこの場に留めたいのか。
今年は、この曲が撮可曲としてリリイベや対バンでも頻出し、スマホを構えるファンが微動だにしないがゆえ、静に流れがちなセトリになりがちな賛否も呼んだ。
けれど、この”足止め”の実感こそ、10周年を思い出すときに残る指触りになるのかもしれない。

『こころ予報』から『灼熱とアイスクリーム』へ。
桜エビ~ず時代、メンバーがミドルティーンのころに、決して等身大とはいえない表現を求められた曲だった。
初夏の匂いを残したこの流れの中で、下手の階段に何人かのメンバーを座らせ、ゆっくりと動きを交わすフォーメーションが印象に残った。

MVで見たあのジュベナイルな「灼熱」よりも、今の彼女たちの“少し大人びた青春”がそこにあった。
笑顔の奥に、積み重ねた時間の輪郭がちらりと見える。

2期とか3期とか

ふたたび、転換映像が挟み込まれた。
「りな・るり」ーukkaが初めて新メンバーとして迎え入れたふたりの、ちょうど良い、ゆるくてぬるい掛け合い。
いつものように、葵るりによる”かまって”圧をすっと受け流す結城りなの様子にフロアからなんとも言えない笑いが起きる。
(この映像を監修した村星りじゅは、裏でこの笑い声を聞いて少しホッとしたという)

続けて、「ゆう・こは」の対話が挟み込まれる。

「そろそろお姉ちゃんたちのところ行こう!」

映像の最後、少しだけ芝居がかった宮沢友の一言で、二人がスクリーンの外にフレームアウトしたあと、ふたたびステージが動き出す。

『透明』のイントロが流れる。
袖からステージに登場したのは5人。そして階段上、踊り場のサブステージから宮沢友と若菜こはるが登場して、階段を降りてくる。
少しだけ躊躇する宮沢友の手をひく若菜こはる。
2年前のキネマ倶楽部の記憶を呼び起こす演出だった。

「♪手を繋ぎ 踏み出す 輝く世界」の一節と、ステージの7人の動きがぴたりと重なった瞬間、時間がひとつの線を描いたように感じられた。

リレイヤー

『透明』の余韻が残るなか、照明の色がほのかに変わり、『Believe』が始まる。
おおよそ9年前、桜エビ~ずはじめてのオリジナル曲として披露された3曲のうちの1曲は、めったに演奏されることはない曲でもある。

この『透明』から曲間のMCを挟まず、そのまま歌が重ねられていく構成が印象的だった。「積み重ねてきたもの」をわざわざ言葉にせず、“流れ”そのものに語らせる選択。このブロックは、村星りじゅが意識的に演出していた部分のひとつなのかとも感じた。

『WINGS』と『コズミック・フロート』は、これまでの感情を上書きするような高揚の瞬間だった。中盤の「爆発点」をここに置くことで、前半の緊張感と後半の“熱”が自然につながっていく。

短いMCが挟まる。
「まだまだここからです」という村星りじゅの言葉に、客席の空気が再びふっと緩む。余白をしっかり残したMCだった。
その一言が、次に置かれる重いカードをいっそう引き立てていたように思う。

『時間。光り輝く螺旋の球。』~『リンドバーグ』~『それは月曜日の9時のように』~『キラキラ』の一気の連打。
まっすぐで、剥き出しで、曇りがない。
村星りじゅの潔さに脱帽した。

MCを挟んで、本編最後の曲は『Re:RAY』。
1部のMCで村星りじゅは、自分の好きなアニメ『ワンピース』になぞらえて、”麦わらの一味”の話をしていた。
この曲では、7人それぞれが一度ずつ「約束」というフレーズを歌う。
序盤で描いた“過去”、中盤で掘り下げた“現在”が、最後の瞬間に“これから”へと静かにリレー接続される。
煽りはない。中央にあるのは7人の声だけ。

そして、照明が落ち、静けさと拍手だけが会場に残った。
アンコールを求める声がすぐに続いた。

アンコール

やがて、照明が再びゆっくりと灯る。
メンバーがステージに姿を見せた。

アンコール1曲目は『エビ・バディ・ワナ・ビー』。
イントロが鳴った瞬間、空気が一段軽くなる。
茜空が「自称・未来のスターです!」と主役の村星りじゅを指差した。

続く『ボクエール』
この曲には「雨の向こう虹があると信じ合いここまで来たね」という一節がある。
10年分の時間を歩んできたグループが、あらためて“あの頃”に手を伸ばすような、柔らかい選曲だった。
そして村星りじゅは、プロデューサーとして、この曲の落ちサビを全員パートに変えて披露した。
「いつも皆さんにエールをいただいているから、私たちも皆さん1人ひとりにエールを送りたいと思って」という。

そして、アンコールのラストを飾ったのは『Aonity』。
この日の本当の終着点。
『Re:RAY』で“未来”への接続を描いたあとに、この曲を最後に置く──この構成は、単なるセトリの締めというより「これからも前に進み続ける」という意思の表明に見えた。

村星りじゅのプロデュースは、一言で“芯”だった。
研究生オーディションから始まった自分自身の物語への矜持。
10年の積み重ねを正面から抱く姿勢。
芹澤もあが村星りじゅを引き止めて、ステージ上から「ばいびろーん」と笑顔で挨拶をして、ライブは終幕をむかえた。
そう、これまで脈々と積み重ねてきた、いつものukkaのワンマンライブだった。


2017年2月19日

桜エビ~ずが6thワンマンに臨んだ、あの日の『頑張ってる途中』のことを、自分はリアルタイムでは見ていない。
その場にいたわけでもないし、なんなら当時のukka(桜エビ〜ず)を知っていたわけでもない。
ただ、あとから、あるきっかけでその映像を見たとき、画面越しでも「このグループは、この日の思いをずっと隅に抱えて歩いてきたんだろうな」と感じた。

2017年2月19日。
まだ中学生と高校生だった彼女たちが、自分たちだけのアイデアと演出を交えてこの曲を歌った。

https://twitter.com/ukka_music/status/843330518062063616?s=46&t=BjFg6B0mTXYqPEuZut6Rzw

当時のライブレポート(音楽ナタリー)には、こんな一節が残っている。

場内が興奮に包まれる中、彼女たちは私立恵比寿中学『チャイム!』『頑張ってる途中』のカバーでファンを魅了した。
ラストの挨拶では村星りじゅが『これからもいっぱい前に進んでいきます!』と涙ぐみながら述べ、川瀬はメンバーだけでサビの振りを練習したという『頑張ってる途中』について『皆さんを元気づけたいと思いがんばりました』と曲に込めた思いを告白。

音楽ナタリー 2017.2.20

その数週間前に起きた出来事を思えば、それはきっと、ただの1曲ではなかったはずだ。

そもそも桜エビ〜ずは、私立恵比寿中学の妹分としてグループ活動をスタートしている。
「エビ中研究生オーディション」を経て今もukkaとしてステージに立ち続けているのは、村星りじゅただひとりだ。

10周年イヤーの今年、彼女が折に触れて「エビ中の研究生としてオーディションで加入した」とはっきり言葉にするのを耳にするたび、ふと、この2月のひと月を思い出す。
そこには、エビ中への愛も、研究生オーディション組としての“矜持”も、そして今や唯一の初期メンバーという事実も、静かに重なっているように思う。

直接見たわけではない。
それでも、その記憶が、彼女の中にしっかり残っていることは、いまの言葉や佇まいからもわかる。
そして、この10年を歩んできたukkaというグループの、目に見えない骨格の一部になっている。

明日がどっちか 分からなくなるけどでも
ほら たぶん こっちだよー!

私立恵比寿中学『頑張ってる途中』

素敵なライブをありがとうございました。

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