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《6》韓国の独立系書店 「최인아책방(Inabooks)」訪問記 【ソウル・江南】

 2012年から1年間、ソウルの延世大学語学堂で韓国語を学んでいた時期に出会った友人2人と、久しぶりに再会することになった。そのうち1人は長年暮らしてきたカナダから韓国に戻ってきたばかりで、会うのは実に10年ぶり。

     2人が暮らすソウル・江南カンナムで、広島風お好み焼きを食べようという話になったので、これを機に、前からずっと行ってみたかった独立系書店「최인아책방チェイナチェックパン(Inabooks)」を訪ねることにした。

書店はレンガ作りのレトロな雰囲気の建物の中にある
入口はこちら。グリーンの看板とこの門が目印

 私がこの本屋さんを知ったのは2022年の秋。Instagramを見ていた時、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』や『菌の声を聴け』を書かれた渡邉格さん、渡邉麻里子さんのブックトークがここで開かれるという情報をたまたま目にしたのだ。

 お二人は鳥取県智頭町で野生の菌を醸してパンとビールを作り、カフェやホテルも運営されているのだが、私がお二人の店「タルマーリー」を訪れた2017年の春、韓国ではすでに『田舎のパン屋が~』の翻訳本が注目を集めていた。タルマーリーには「本を読んだ」という韓国の人たちが訪ねてくることもあったようだ。

 2021年のコロナ禍に満を持して出版された2冊目の本『菌の声を聴け』も、韓国ですぐ翻訳出版された。それを機に開かれたのが、この本屋さんでのブックトークだったのだ。(私は残念ながら行けなかった)

門をくぐるとこの景色。ドラマや映画のロケ地のような雰囲気
左側に入口が。エレベーターで4階へ

 この本屋を始めたチェ・イナさんは、韓国の大手広告代理店の元副社長で、コピーライターとクリエイティブディレクターとして働いてきた方だそうだ。2012年に29年間のキャリアを終えた後、大学院で西洋史を学んでいた時、「世の中の役に立ちたい」という思いに気づき、2016年、ソウル・江南に本屋をオープンしたという。

 私はまだ未読だが、彼女の2冊目の著書『会社のためではなく、自分のために働く、ということ』は日本でも翻訳出版されている。ちなみに、原書のタイトルは『私が手にしているものを世界に欲しがらせなさい(내가 가진 것을 세상이 원하게 하라)』。すごく強気なタイトルだけど、だからこそどんな内容なのか気になってくる。

扉を開けると、そこは本の園。「思考の森を作る」をテーマに、読者の考えが新しく、広く、深まっていく場所作りをしている

    店主のそういった経歴もあってか、ビジネス書や自己啓発書など、オフィスで働く人たちを意識した書籍が全書棚の半分くらいを占めている印象だったが、店内には小説やエッセイ、詩、絵本、児童書も並んでいたし、人文・社会・経済など多様なジャンルの本が取り揃えられていた。やっぱりここでも、扉を開けてすぐ目に飛び込んできたのはハン・ガン作家の本だった。

    他の書店と大きく違ったのは、店主であるチェ・イナさんの推薦図書のほか、彼女の先輩・後輩、友人たちが推薦する本が並ぶ棚があったことだ。「不安な20代に勇気と発見を与えてくれる本」、「30歳を過ぎて思春期を迎えているさまよえる魂へ」「悩みが深まる40代へ」、「ストレス、無気力、バーンアウトだと感じる時」といったテーマ別に本が並んでいて、おもわず40代の棚をじっくりと眺めてしまった。

推薦本が並ぶ棚。一部の本には推薦者からのメッセージが挟まれている

   その他、2024年に来店したお客さんたちによく読まれた本を30冊並べたコーナーもあった。また、この本屋さんでは毎月数回ブックトークが開催されているようで、店内にはここでトークした著者たちの本を紹介する棚もあった。「美術授業」という講座も開かれており、今年2月でシーズン17、つまり17回目を迎えるそうだ。

    とにかく、ここにいると、本を通してチェ・イナさんや著者、読者たちと間接的に交流している気持ちになれる気がした。ブックトークやイベントに参加すれば、直接人と出会い、同じ時間を共有することもできるのだ。

ブックトークに招かれた作家たちの本が並ぶ。昨年ボクシングを始めた時にオーディオブックで見つけて視聴したエッセイ『마녀체럭(魔女体力)』を発見!本の編集者として働く40代の女性が運動に目覚め、人生が変わっていく様子が描かれた1冊だった
ブックトークのお知らせと、美術授業の案内

    書店は吹き抜けになっており、2階へと続く階段があった。2階は本を1冊買うか、飲み物を注文した人だけが利用できる。本の購入者は飲み物が20パーセントオフになる。

2階の様子
2階席から見た店内

    私はこの日、日本でも翻訳出版された『私的な書店 ―たったひとりのための本屋』の著者であり、パジュで独立系書店「사적인 서점(私的な書店)」を営むチョン・ジヘさんの最新エッセイ『꼭 맞는 책』を地下鉄で読んでいた。その中でオススメされていたペク・スリン作家の小説を読みたいなと思っていたら、ちょうどこの本屋さんに置いてあったので、1冊購入して帰ることにした。

店のハンコを押したら…向きを間違えてしまった

   エレベーターの中には「ブッククラブ」のお知らせが貼ってあった。加入者には毎月数冊(冊数は金額によって異なる)の本と手紙が届き、その本の著者や編集者を招いて開かれるイベントにも参加できるそうだ。

   この本屋さん、実は地下鉄で一駅離れた場所に2号店(최인아책방 GFC점)があるのだが、そちらは平日のみ営業ということで、今回は行くことができなかった。いつか平日に江南へ行ける機会があれば、ぜひ一度足を運んでみたい。

【追記】2号店の최인아책방 GFC점は2月7日で閉店。

【ソウル・江南】
최인아책방 선릉점(Inabooks 宣陵店)

서울특별시 강남구 선릉로 521 (역삼동)3-4층
+82 02-2088-7330
水~金 11時~21時
土日祝 11時~20時


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