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生活保護はジェネリック医薬品を使うべき?

結論から言います。

生活保護受給者に対して、医師が医学的に問題ないと判断した場合は、原則としてジェネリック医薬品(後発医薬品)を使うべきです。

これは「生活保護の人は安い薬で我慢しろ」という話ではありません。決して差別でも、弱者切り捨てでもありません。 むしろ逆です。

生活保護という制度を本当に必要な人へ届け続けるために、そして日本の医療制度を守るために、「医学的に同等な薬があるなら、より安価な選択肢を使うべきだ」という、ごく当たり前の話です。

ここを感情論でごまかしてはいけません。


ジェネリック=粗悪品、ではない

まず、ジェネリック医薬品とは何か。 特許が切れた先発医薬品と同じ有効成分で作られ、厚生労働省が「品質・有効性・安全性が同等である」と承認した薬です。

もちろん、すべての患者さんで完全に同じ体感になるとは限りません。 添加物が違う、錠剤の大きさが違う、湿布の貼り心地が違う。あるいは、精神科の薬などで切り替えに慎重になるべき場面もあります。

だから、医師が「この患者さんには先発品が必要」と判断する場合は、当然その判断が最優先されるべきです。

しかし、医学的に全く問題がない薬まで、患者本人の「なんとなく不安」「昔からこれだから」という希望だけで、高価な先発品を使い続けることは、本当に妥当なのでしょうか。

その費用が「全額公費」で賄われている場合は、なおさらです。

医療費1.8兆円。全額公費という重み

生活保護の医療扶助は、通常の会社員のように「窓口で3割負担」を払う構造ではありません。自己負担は原則ゼロであり、その費用はすべて公費(税金)で支えられています。

これは絶対に不可欠な制度です。 病気、障害、高齢、精神疾患……お金がないから病院に行けず命を落とすような社会は、明らかにおかしい。医療扶助は、命を守る最後の砦です。

しかし、令和5年度の実績を見ると、生活保護費全体(約3.6兆円)のうち、実に約半分(約1.8兆円)を「医療扶助費」が占めています。

この数字は重い。だからこそ、医学的に必要な医療は絶対に守る一方で、医学的に同等な選択肢がある部分では無駄を削る。このバランス感覚が不可欠なのです。

実は、すでに「原則ジェネリック」になっている

これは僕個人の過激な意見ではありません。 平成30年(2018年)の法改正により、生活保護の医療扶助では「医師が医学的知見に基づいて可能と認めた場合、ジェネリック医薬品の使用を原則とする」ことがすでにルール化されています。

文章のはじめに大きな釣り針を垂らしてすみません。

『実は生活保護者は原則ジェネリックを使用』は
医師国家試験問題集にも出題され話題となりました。

さらに言えば、一般の現役世代のルールも変わりつつあります。 現在、一般の患者さんが「医学的な必要性がないのに、単なる好みで先発品を希望する場合」は、ジェネリックとの差額の一部を「特別の料金(自己負担)」として支払う仕組みが始まっています。

  • 現役世代: 保険料を払い、窓口で3割を払い、さらに先発品希望なら追加でお金を払う。

  • 医療扶助: 自己負担ゼロで、本人の希望だけで高い先発品を使い続けられる。

もしこんな歪な構造が放置されれば、制度を支える側(現役世代)の納得感は確実に失われてしまいます。

【追記】で、実際に生活保護の医療費は削減されたのか?

ここで一つの疑問が湧きます。「ジェネリックを原則化して、本当に医療費は削減されたのか?」という点です。

結論から言うと、「巨額のコスト削減(医療費の増加抑制)には確実に成功しているが、総額自体が激減したわけではない」というのが現実です。

平成30年の原則化以降、生活保護受給者のジェネリック使用割合は劇的に向上し、多くの自治体で80〜90%以上を達成しました。これにより、もし全員が先発品を使っていた場合と比べれば、年間数百億円規模の薬のコストが浮いていると推計されます。これは間違いなく制度の延命に貢献しています。

しかし一方で、生活保護受給者の高齢化や、精神疾患などによる頻回受診という構造的な問題があるため、医療扶助費の「総額」そのものが右肩下がりになっているわけではありません。 だからこそ、ジェネリックの推進は「一発逆転の魔法」ではなく、「最低限やるべき止血作業(防衛策)」なのです。

医療費は「誰かが払っている」

医療現場にいると、「どうせ無料だから高い薬でいいでしょ」という声を聞くことがあります。 しかし、保険医療に「無料」の医療は存在しません。窓口負担がないだけで、見えないところで誰かが払っています。

会社員の社会保険料、自営業者の国民健康保険料、そして税金。 「なんとなく先発品がいい」という気持ちの差額を、誰が払うのか。ここから逃げてはいけません。

医師は、目の前の患者さんを助ける職業ですが、同時に「限られた医療資源を公平に届ける責任」も負っています。「説明するのが面倒だから」「患者と揉めたくないから」と、漫然と先発品を出し続けるのは、医療者側の怠慢でもあります。

結論:「弱者への配慮」と「制度の持続性」は対立しない

生活保護受給者にジェネリックを、という話をすると、「弱者いじめだ」「命に値段をつけるのか」と批判する人がいます。

しかし、論点がずれています。 弱者を守るためには、弱者を支える「制度そのもの」を守らなければならないのです。

医療扶助が膨張し続け、現役世代の負担が限界を超え、制度への信頼が失われれば、最終的に一番困るのは「本当に医療を必要としている人たち」です。ジェネリックの原則使用は、弱者切り捨てではなく、医療扶助を未来に残すための現実的な防衛策です。

生活保護受給者を責める必要は全くありません。ただ、制度として毅然と言うべきです。

「医学的に同等なら、ジェネリックを使いましょう。先発品が必要なら、医師が理由を持って使いましょう」

それが、患者を守り、現役世代を守り、日本の医療制度を守るための、最低限の線引きなのです。

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