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脳のMRIで認知症はわかりますか、、よくある質問に脳外科医が答える。

「最近、親の物忘れが増えた気がする」「同じ話を何度もするけれど、年齢のせいなのか、認知症なのか分からない」

外来や救急の現場でも、ご家族からこの相談を受けることがあります。なかでも多いのが、「脳のMRIを撮れば、認知症かどうか分かりますか?」という質問です。

結論から言うと、MRIだけで認知症を完全に診断することはできません。ただし、MRIはとても大事な検査です。なぜなら、認知症の原因を推測したり、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症のように、治療で改善が期待できる病気を見つけたりできるからです。

脳外科医として画像を見るとき、私が意識しているのは「認知症かどうか」だけではありません。見逃してはいけない病気 が隠れていないか、ここをまず確認します。

この記事では、脳のMRIで何が分かり、何が分からないのかを、よくある質問に答える形で整理します。読み終えるころには、「MRIを撮ったから安心」でも「異常なしだから何もしなくていい」でもない、ちょうどよい見方が分かるはずです。

MRIで認知症は診断できるのか

MRIとは、Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略で、磁力を使って脳の形や血管障害の跡などを詳しく見る検査です。放射線被ばくがなく、脳の萎縮や小さな脳梗塞、出血のあと、白質病変などを確認しやすいのが特徴です。

では、MRIで「認知症です」と一発で分かるのでしょうか。

ここは誤解されやすいところですが、

答えは単独では難しい です。

認知症は画像だけで決まる病名ではなく、生活に支障が出るほどの記憶力、判断力、言葉、注意力などの低下があるかを、診察、家族からの情報、認知機能検査、血液検査、画像検査を組み合わせて判断します。

たとえば、MRIで海馬の萎縮が目立つと、アルツハイマー型認知症を疑う材料になります。海馬は記憶に関係する重要な場所です。一方で、高齢になるとある程度の萎縮は起こりますし、画像上の萎縮があっても、生活機能が保たれている方もいます。

逆に、MRIで大きな異常が目立たなくても、初期の認知症や軽度認知障害が隠れていることもあります。軽度認知障害は、MCI、Mild Cognitive Impairment(軽度認知障害)と呼ばれます。日常生活は大きく崩れていないけれど、年齢相応より記憶や注意力が落ちている状態です。

つまりMRIは、認知症診断の「答え」ではなく、重要な手がかり です。ここを間違えると、検査結果に振り回されてしまいます。

MRIで分かることは意外と多い

MRIが得意なのは、脳の形の変化を見ることです。代表的には、脳全体の萎縮、海馬周辺の萎縮、脳梗塞の跡、脳出血の跡、脳の白質変化、脳室の拡大などです。

アルツハイマー型認知症では、記憶に関わる側頭葉内側部、特に海馬周辺の萎縮が参考になります。血管性認知症では、多発する脳梗塞、ラクナ梗塞、白質病変などが手がかりになります。前頭側頭型認知症では、前頭葉や側頭葉の萎縮の偏りがヒントになることがあります。

ただし、画像だけで「これはこのタイプ」と決め切れるほど単純ではありません。

実際の高齢者では、アルツハイマー病の変化に脳血管障害が重なるなど、複数の原因が混ざることもあります。

脳外科医として特に大事にしているのは、治療できる認知症様症状 を見逃さないことです。

たとえば慢性硬膜下血腫です。頭をぶつけたあと、数週間から数か月かけて脳の外側に血液がたまり、物忘れ、歩きにくさ、ぼんやりする感じが出ることがあります。高齢者では「認知症が進んだ」と見えることもありますが、手術で改善する可能性があります。

慢性硬膜下血腫については手術が短時間で終了する、かつ、症状改善もすごいため、いつまで経ってもやりがいがあって好きな手術です。

また正常圧水頭症も重要です。歩行障害、認知機能低下、尿失禁がそろうことがあり、MRIで脳室拡大などを確認します。全員が手術でよくなるわけではありませんが、シャント手術を検討できる場合があります。

脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症。これらは、ただの物忘れとして流してはいけない病気です。だからこそ、MRIは「認知症を決める検査」ではなく、「原因を探す検査」と考えると分かりやすいです。

よくある質問に答えます

海馬が萎縮していたら認知症ですか?

海馬萎縮は大事な所見ですが、それだけで認知症と断定はできません。大切なのは、本人や家族が感じている変化と、実際の生活への影響です。

たとえば、財布の場所を忘れるだけでなく、支払いができなくなった。料理の手順が分からなくなった。薬の管理ができなくなった。このように生活機能が落ちているかどうかを見ます。

MRIが正常なら認知症ではないですか?

これもよくある誤解です。初期の段階では、MRIで明らかな異常が出ないことがあります。特に、本人が困りごとをうまく説明できない場合、ご家族の観察が診断の助けになります。

「最近怒りっぽい」「約束を忘れる」「同じものを何度も買う」など、日常の変化は画像以上に重要なことがあります。

物忘れ外来では何をしますか?

一般的には、問診、診察、認知機能検査、血液検査、画像検査を組み合わせます。認知機能検査には、MMSE、Mini-Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)や、MoCA、Montreal Cognitive Assessment(モントリオール認知評価)などがあります。

血液検査では、甲状腺機能、ビタミン不足、肝臓や腎臓の異常、感染症など、認知機能低下に似た症状を起こす原因を確認することがあります。

必要に応じて、FDG-PET、Fluorodeoxyglucose Positron Emission Tomography(フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影)や、SPECT、Single Photon Emission Computed Tomography(単一光子放出コンピュータ断層撮影)などが検討されることもあります。ただし、すべての人に必要な検査ではありません。

家族が気づいたら、どう動けばいいか

認知症が心配なとき、いきなりMRIだけを目的にするより、まずは「何に困っているか」を整理することが大切です。

おすすめは、1か月ほどの変化をメモに残すことです。たとえば、同じ質問の回数、薬の飲み忘れ、料理や買い物で困った場面、道に迷った経験、怒りっぽさ、眠りの変化などです。診察室では数分の会話でしっかりして見える方もいるため、普段の様子がとても重要です。

受診先は、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、脳神経外科などが候補になります。歩きにくさ、尿失禁、頭部外傷後の変化、片麻痺、ろれつの回りにくさがある場合は、脳外科的な病気や脳卒中も考える必要があります。

特に注意したいのは、急に悪くなった場合です。昨日まで普通だったのに急にぼんやりした、片方の手足が動きにくい、言葉が出にくい、強い頭痛がある。この場合は認知症の相談ではなく、救急受診を考える状況です。

私自身、脳外科の現場で「認知症だと思っていたら慢性硬膜下血腫だった」というケースを何度も見てきました。だからこそ、物忘れを年齢のせいだけにしないことが大切です。

まとめ

脳のMRIで認知症のすべてが分かるわけではありません。けれど、MRIは脳萎縮の分布、脳血管障害、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などを確認できる、とても重要な検査です。

大切なのは、「MRIで白黒つける」ことではなく、症状、生活の変化、認知機能検査、血液検査、画像検査を合わせて考えることです。認知症の診断は、画像一枚ではなく、その人の生活全体を診る作業に近いと思っています。

物忘れがあると、不安になるのは当然です。でも、早めに相談することで、治療できる病気が見つかることもありますし、生活の準備を始めることもできます。読んでくださってありがとうございます。同じように不安を抱えるご家族の助けになればうれしいので、よければスキ、フォロー、コメントで教えてください。

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