助手席の景色。白ブリーフのトニー・レオンと、灰色肌着の高田馬場
話を始める前に、僕の性別について。
僕は「女性」だ。
一人称が「僕」と「私」の時があるので
混乱させて申し訳ない。
松が描かれた綿のちんぴらワンピース
ぷくっと立体的なオレンジベージュのサンダル
同系色のレザーのハンドバッグ
灼熱と熱気の高田馬場駅で君を待つ。

エアコンが効きすぎた汚いドトール。
いつまでも片付かない仕事を進める。

以前よりひと回り大きくなった君。
麗しい君がやってくる。
僕はすぐにパソコンを閉じる。
バイン・ミーにする?フォー?
君はすぐにお店を探す。

1年前と同じ店で、同じメニューを頼む。
いっしょに暮らしたあのころのことを話す。

こんど内臓食べに行こう
君は言った。
この果実が熟れた香りと熱風
あの街を思い出すね
僕は言った。
わかる
君は言った。

1年前と同じカフェで僕はホットを
君はアイスを注文する。
小さな店はにぎわっていて、店員は無愛想だ。
君は矢継ぎ早に質問を続ける。
僕の返答が終わらぬうちに次々と。

年下の恋人がほしい
君は言った。
それはいいね
僕は言った。
別の店で豆花を食べる。
僕にとって、はじめての豆花だ。
絹豆腐のうえにシロップがかけられ
オレンジと紫の枕のかたちの餅、
黒い大きいタピオカと白い小さいタピオカ
タロイモのスイートポテトがのっている。

おいしい
僕はそう言ってたべた。
よかったね
君は言った。
途中、道に落ちた灰色の下着に出くわす。
君と改札で別れる。
夕方からママ友と食事会があるそうだ。

僕は池袋へと向かう。
約束の時間、約束の喫茶店。
たくさんの人が並んでいる。
僕と君は計画変更しブラッセリーへ。
アールグレイの麦酒にきくらげのアラビアータ、
クリームチーズとくるみと無花果のクラッカー、
枝豆のスープとウーロンハイを胃に流す。
映画のあと中華行こう
君は言った。
きょうはだめ
僕は言った。
17時50分、恋する惑星を見る。
席は8割埋まっていて、
僕たちは前の方の真ん中だ。
20時、君と駅まで歩く。
中華くいたくなった?
君は言った。
うん、くいたいよ
つぎね
僕は言った。
20時15分、僕は目白駅に到着する。
鳥と植物が描かれたガラスの間をくぐる。
大きな清潔な鏡の前で身なりを整える。
あと10分で到着します
君からのメッセージが届いた。
僕の心臓はとくんと動き
肌が赤く色づく。
松が描かれた綿のちんぴらワンピース
ぷくっと立体的なオレンジベージュのサンダル
同系色のレザーのハンドバッグ

