手取り15万、18歳の僕が支払った『人を信じるための授業料』
新社会人
18歳のとき、社会人になりました。
就職先は建設業の現場監督。
「監督」という響きがかっこよくて
自分が建てた建物が地図に載る。
そんな仕事を選んだんですよね。
胸を張って言える職業。
少なくとも、あの頃の自分はそう思ってました。

現実との落差
現実は、想像とかなり違ったんですよ。
地元にはいられなかった。
遠方、県外の現場が当たり前。
年の離れた上司に、年上の職人さん。
愚痴を話せる相手も
不安を打ち明けられる相手も
どこにもいなかったんですよね。
今から15年以上前の建設業なんて
男社会、ブラックもいいところで。
今では考えられないような世界なんです。
ヘルメット越しにハンマーで叩かれる。
職人さんから、毎日のように罵声がとぶ。
それでも、ある程度は覚悟していたんです。
その時代に建設業を選んだんだから。
だけど
本当に怖いのはここからだったんですよ。

心が折れていく
人間、ずっと叱られ続けると不思議なことが起きるんですよ。
怒られる。また怒られる。
またまた怒られる。
毎日それが繰り返されると
気がついたら自分が全部悪いと思い込んでいるんですよね。
少し前まで高校生だった18歳の自分には
「自分に能力がない」
「自分が悪いんだ」
そういうマインドが、静かに染み込んでました。
人間とはそういうものだと
今ならわかるんですけど。
当時の自分にはわからなかった。

救世主の登場
そんなとき
稀に手を差し伸べてくれる職人がいるんですよ。
仮に、職人Yとしておきます。
絶望の中に現れた救世主。
休日には釣りに連れて行ってもらって
仕事終わりには焼肉にも連れて行ってもらった。
仕事の不満も
正直に話せるような仲になってました。
職人Yのおかげで
少しずつメンタルが安定してきた。
仕事にも張りが出てきた。
そんなときあることがおきました。

電話が来た夜
職人Yから電話があったんです。
「10万円貸してほしい。娘のために使う。」
最初は断りました。
18歳の新人に10万は高すぎる。
当時の手取りは15万程度だったんですよね。
次の日、また電話があった。
今度は職人Yの弟からだったんです。
弟も同じ会社にいて
少し仲良くしてくれていた。
「Yが金に困っている。7万でもいいから、すぐに頼む。」
「すぐ」という言葉が
考える時間を奪ったんですよね。
今思えば
それも手口のひとつだったんでしょうね。
僕は「7万なら」と思って
用意しておくから
明日現場に取りに来てほしいと伝えました。

相談できなかった理由
本当は、上司に相談すべきだったんですよね。
でも当時の上司は、今でいうパワハラ寄りで。
昔ではいたって普通だったけど
18歳の自分には相談できる相手じゃなかったんですよね。
結局、誰にも言わずに7万を渡した。
それからだったんです。
会うたびに返してほしいと頼む。
そのたびに「今はないから来月」と言われる。
もう察しはついていた。
絶対に返ってこやんって。
上司に相談したかったけど、
怖くてできなかった。
最終的に僕は、お金をあきらめたんです。
そして、こう思い込んでいくんですよ。
「騙された自分が悪い。」

悪い大人が狙うのは、弱っている人間
僕の場合は叱られ、怒られ、罵声を浴びる毎日。
相談相手もいなかった。
そのまま時間が経つと
じわじわとマインドにかかっていました。
悪い大人が1人なら、まだ断れるんです。
だけど、その周りにも悪い仲間がいる。
グループから複数で囁かれると
「自分が間違っているのか」
そういうマインドにかかりやすくなるんですよね。
妬み、辛み、不満。
そういう漬け込みやすいところへ
言葉巧みに寄り添ってくるんですよ。
「こちらに来れば楽になるよ。仲間もできるよ。」
そういう囁きなんですよね。

狙われやすい人って、こういう人
相談できる相手がいない人。
1人で動いている人。
メンタルが崩れやすい。
今の現状に嫌気がさしている。
そういう状態の人は
特に標的にされやすいんです。
日本人によくあるのが
「これだけ大きな集団やから安心安全」
という思い込みが強い。
集団の大きさと、信頼性は関係ないんですよね。
でもメンタルが弱っているときは
そこに縋りたくなる。
それは、自然なことだと思う。
だからこそ怖いんですよね。

読んでくれたあなたへ
新社会人の方へ。
そして
今まさにこの話が当てはまるなと思った方へ。
人は信じすぎてもだめなんです。
でも、信じられる人は絶対に必要なんですよね。
大事なのは、冷静に自分で判断できるかどうか。
そして今
判断できる状態に自分がいるかどうかなんです。
メンタルが弱っているときって
まともな判断ができないことがあるんですよ。
それは弱さじゃなくて
人間の仕組みなんですよね。
悪い大人は、そこに寄り添ってくる。
だから少しでも怪しいと感じたら
少しでも怖いと感じたら。
絶対に、立ち止まってほしい。
一度足を踏み入れると
戻ってこれないことがあるから。

伝えたい言葉
家族でもいい。
友人でもいい。
どちらもいなければ、相談センターでもいい。
どこでもいいから
信頼できる場所に相談してほしいんです。
悪い方へ進まなければ、それが正解だから。
分からなければ立ち止まってもいい。
あの頃の自分に言ってあげたかった言葉を、
今ここに残しておきます。
今なら思える。
「7万円で、人生の大事なことを教えてくれてありがとう」と。

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