唐揚げと竜田揚げ、ザンギの違い決定版
唐揚げと竜田揚げはどちらも日本で親しまれている揚げ物料理ですが、近年では混同されがちです。
似た料理ではありますが、いくつか特徴的な差があります。
本稿では両者の違いを比較しながら、そして年々存在感を増している北海道のザンギについても御紹介します。
唐揚げの定義とは
唐揚げとは、肉・魚・野菜などの食材に下味を施し、粉をまぶして油で揚げる調理法です。
語源は江戸初期に見られますが、当時の「唐揚げ」は普茶料理における豆腐料理であり、現代のそれとは別物です。

したがって現在の唐揚げは、この料理の直系ではなく名称のみが継承されたと見るべきです。
江戸から明治にかけて揚げ物自体は存在しましたが、「唐揚げ」という呼称と現在の形式は一般化していませんでした。
転機は昭和初期です。この時期、都市部の洋食店や料理店において鶏肉を油で揚げる料理がメニューとして提供され始めます。
代表例としては、銀座の三笠会館の前身店舗で供された「若鶏の唐揚げ」が挙げられます。
下味を付けた鶏肉に軽く粉をまぶして揚げる点は共通するものの、当時の調理法は現在ほど定型化されていなかったようです。
仕上げにソースをかける、あるいは洋食的な付け合わせとともに提供するなど、和食と洋食の中間に位置する料理でした。
いわば「鶏肉料理の一つ」としての唐揚げであり、まだ家庭料理としての姿は持っていません。
また、この時代の鶏肉は現在ほど流通量が多くなく、価格も比較的高価でした。
そのため唐揚げは大衆的な惣菜ではなく、外食の中でもやや上等な料理として扱われていました。
特別な外食や会食の場で供される存在であり、日常的に食卓へ上るものではなかったのです。
このように昭和初期の段階で、「下味を付けた鶏肉に粉をまぶして揚げる」という基本構造は成立しますが、般家庭に普及してはいませんでした。
戦後、養鶏の普及により鶏肉が安価に流通すると、唐揚げは家庭料理として急速に広まりました。調理が簡単で保存性にも優れる点が普及を後押しします。
さらに昭和30~40年代には九州を中心に専門店文化が成立し、とくに大分県の中津・宇佐地域で発展しました。現在の持ち帰り専門店の形式は、この流れを源流とします。
現代では唐揚げは家庭・外食・惣菜のすべてに浸透した国民食です。
基本は醤油・にんにく・生姜による下味ですが、塩、甘辛だれ、スパイスなど多様な派生が生まれています。
この自由度の高さこそが、唐揚げが定着した最大の要因です。

名勝を背負う竜田揚げ
一方の竜田揚げとは、肉や魚に醤油・みりん・酒などで下味を施し、片栗粉をまぶして揚げる日本独自の揚げ物料理です。鯖・鰯・鮭・鯨肉など魚介類にも広く用いられてきました。
その名の由来は、奈良県を流れる竜田川にあるとされます。竜田川は古来より紅葉の名所として知られ、『百人一首』にも詠まれた名勝です。

醤油で色づいた揚げ衣の赤褐色と片栗粉が白く浮くまだら模様が、川面に散る紅葉の景観を思わせることから「竜田揚げ」と呼ばれるようになったとする説が有力視されています。
もっとも竜田揚げの発祥については明確な記録が少なく、名称の成立時期についても断定はされていません。
ただし昭和初期にはすでに一般化していたことが確認されており、例えば1937年(昭和12年)刊行の軍隊向け調理書『軍隊調理法』には竜田揚げの記載が見られます。
このことから、少なくとも戦前期には広く認知されていた料理であったと考えられています。
また、別説も存在します。そのひとつが旧日本海軍由来説です。
軽巡洋艦「龍田」の艦内調理において唐揚げを作る際に小麦粉が不足していたため片栗粉で代用したところ好評を博し、艦名にちなみ「龍田揚げ」と呼ばれるようになったという逸話です。
1937年刊の軍隊調理法に竜田揚げの記載が確認されますが、こちらは後世の口伝的要素が強く、史実として裏付けられたものではありません。
日本人の味覚や美意識が反映された、和風色の濃い料理といえるでしょう。

ザンギの成り立ち
さらに北海道を代表する鶏料理として知られるのがザンギです。
鶏肉や魚介類に醤油・生姜・にんにくなどで濃い下味を施し、粉をまぶして揚げる北海道発祥の揚げ物料理を指します。
外見は唐揚げと酷似していますが、よりしっかりとした味付けとタレへの漬け込み時間の長さに特徴があり、北海道では独立した郷土料理として扱われています。
発祥は昭和30年代の釧路とされ、鳥松(居酒屋、焼き鳥店)が起点として知られます。
骨付き鶏肉をぶつ切りにして揚げた料理が原型で、ここから現在のザンギへと発展しました。
名称は中国料理の「炸鶏(ザーチー)」に由来し、「運」を意味する音を加えて「ザンギ」としたと伝えられます。この独特の語感が料理名として定着を促しました。
昭和40年代以降、ザンギは北海道全域へ広がり、鶏肉に限らず鮭・鱈・蛸などにも応用されるようになります。

現在では北海道の代表的な郷土料理として定着し、「唐揚げ」とは別系統の名称として認識されています。
北海道独自の食文化として、唐揚げ・竜田揚げとはまた異なる歴史を歩んできた料理といえるでしょう。

結論としましては、全部食べたい。
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