※オカルトはない バタークリームケーキのかつてと今
バタークリームケーキは欧州で生まれアメリカで大衆化し、そして日本では昭和を象徴するケーキです。
今回は日本での歩みを軸にしながら、その変遷を紹介します。
バタークリームの誕生と洋菓子文化の中での役割
バタークリームは、バターに砂糖や卵を混ぜてホイップしたもので、形が崩れにくく、保存性と装飾性に優れているのが特徴です。
19世紀以降の欧州やアメリカでは、スポンジケーキやバターケーキにこのクリームを塗って仕上げるスタイルが広まり、誕生日ケーキや結婚式の多段ケーキに欠かせないものでした。

日本への導入と不二家の功績(明治〜戦前)
明治時代、港町を中心に欧米のケーキが紹介されるようになると、次第に日本人の口にも合うようアレンジが進みます。
1910年創業の不二家は、ケーキを日本の家庭文化に根付かせた先駆者で、バタークリームを使ったデコレーションケーキ普及の大きな原動力となりました。

昭和の主役となった時代(戦後〜1960年代)
戦後しばらくは生クリームが高価で入手困難。家庭にもまだ冷蔵庫が普及していませんでした。
そんな中で「常温でも日持ちする」バタークリームは時代に合った素材でした。販売側にとっても
バターや粉乳など、比較的手に入りやすい材料で作れる
固めで絞りやすく、バラの飾りなど立体装飾に強い
などの理由から、昭和30〜40年代には「クリスマスケーキ=バタークリーム」が当たり前という時代がやって来ます。
なおバタークリームと言いながら大部分が、今ほど洗練されていないマーガリン製のものでした。

“生クリーム時代”への交代(1960〜1980年代)
1960年代、家庭用冷蔵庫が爆発的に普及し生クリームを使ったショートケーキの製作が容易になると、流行は一気にフレッシュ志向へ。
バタークリームケーキは次第に「古い」「重い」「飽きやすい」というイメージになり、1980年代には店頭で見かけることが少なくなりました。

再評価の波(2000年代〜現在)
2000年代以降、「昭和レトロ」への関心が高まるとバタークリームケーキが再び注目され始めます。
しかも現在のものは昭和期のマーガリン主体とは違い質の良いバターを使用し、かつてより軽やかな新しい魅力を放ち始めました。
昭和の飾り付けを再現した“昔ながら系”
フランス式クレーム・オ・ブールを使う高級パティスリー路線
カップケーキやフラワーケーキのように、装飾性を楽しむ現代アレンジ
スタイルの多様化が進み、バタークリームは再び存在感を取り戻し始めています。

バタークリームケーキは技術・材料・生活スタイルに合わせて、姿を変えながら受け継がれてきた洋菓子です。
日本では
「戦後〜高度成長期の主役」→「時代遅れのケーキ」→「昭和レトロの象徴」
という三つの顔を持つ特異なお菓子。
そして現在は古風な魅力と新しい味わいの両方を備えた、“ネオクラシック”として静かに人気を伸ばしています。

あとがき
最近バタークリームケーキの昔話を聞きました。美味しくなかったと。
その方が口にしたのは年齢的にもおそらく、昭和のマーガリンクリームケーキだったのではないかと思います。
当時の技術ではコクや香りを出すのが難しく、生クリームのケーキとは比べものにならない味だったという評価も多く残っています。
まず現在のマーガリンが当時とは別物になっていまして、少量のバターを加えたり風味を工夫したりと改良が進んでいます。
マーガリンを使ったとしても、十分においしいクリームを作れるようになっています。クリーム用マーガリン、普通にありますしね。
話が逸れました。
大手小売店のクリスマスケーキ予約カタログにもバタークリームケーキが載るほどで、現代では一つの選択肢として立派に復権しつつあります。
昭和のマーガリンクリームケーキ、その実際の味を私は知りませんが、かつての記憶だけで令和版バタークリームケーキを避けてしまうのは勿体ないのではと思い本稿を書きました。
ぜひ今の味を試してみて欲しいです。私は好き。
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