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虹色創作部 雨の夜に流れていったもの

ある夜、激しい雨が降っていた。

打ちつける雨は地面を叩くだけでなく、耳の奥にまで響きわたり、私の体を冷やしていった。

傘を差していても意味はなく、髪も服も、すでにずぶ濡れだった。

ふと顔を上げると向かいの道路にに、ひとりの女が立っているのが見えた。

赤い傘に赤いワンピース。
雨がまとわりつき、その姿は夜の闇に浮かぶ血の染みのように、鮮やかで不気味だった。

私はなぜか、目を逸らすことができなかった。

女は私に気づいたようで、ゆっくりとこちらに手を振った。
細い指先から水滴が滴り落ちるたび、まるで私を呼んでいるように思えた。
恐怖に体が震えても、その場を離れることができなかった。

気がつくと、彼女は目の前に立っていた。
雨の帳をすり抜けて、距離が消えていた。
心臓が跳ね、息が詰まる。

――その顔には、ちゃんと目も鼻も、口もあった。
美人と呼ばれる部類だが、別段おかしなところはない。

混乱は残っていたが、少しだけ安堵した私は息を吐いた。

だが、次の瞬間。
その女は傘を置いた。

頬を伝う雨粒が、黒い筋のように広がりはじめた。
それは涙のように見えたが、すぐに異変だと気づいた。
彼女の目の輪郭が、口の形が、雨に溶かされるように崩れていく。

赤いワンピースが鮮烈に残る中で、顔のパーツは流れ落ち、やがて――真っ白な、のっぺらぼうとなった。

そこにはもう人間の表情も息遣いもなく、ただ雨に濡れた白い面が、無言で私を見つめていた。

声をあげようとしたが喉は凍りつき、足は地面に縫いつけられたように動かなかった。

雨音だけがやけに鮮明に響き、私は立ち尽くすしかなかった。

雨はますます激しさを増し、視界は揺らぎ、白い顔だけが浮かび上がっていた。

次に何が起きたのか、はっきりとは覚えていない。

気づけば私は、濡れたアスファルトに仰向けに倒れていた。
赤い影も白い顔も、どこにもいなかった。
ただ耳の奥で、雨音とは別の水音が、ずっと付きまとっていた。

それは彼女の足音なのか。
確かめようとする前に、意識は深い闇へと沈んでいった。

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