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337.失敗ではない、失敗などしていない、失敗を失敗として認めない~

1.失敗を失敗として認めない雪印「スライスチーズ」の大失敗とは?


「失敗は成功のもと」なんてよく言われる言葉。
「若いうちは失敗をしなければ立派になれない」
「失敗を恐れずガンガンいけ」とか、とにかくがんばってみる。

そしてそのとおりに失敗する—。

結果、「バカヤロー何やってんだ」
「失敗しただと!!ふざけるな」こんな経験は誰にでもある。

そしていつの日か歳を取り、こう思うのである。

「失敗は決して成功ではない」と。

悔やむ、後悔する。恐れる、委縮する。思い切った発想や行動ができなくなる。いつも失敗を恐れビクビクする。

確かにビジネスという戦場は、失敗というものを簡単に許せるほど甘くはないことは確か。
ましてや一度失敗したビジネス、商品を再度売り出すには、相当の勇気と覚悟が必要また失敗したらどうしようか。
損失の穴埋めはどうしたらいいだろうか ー。

しかしこんなことを考えていたら何もできる訳もない。
そうしたあらゆるリスクから逃げ、闘わずして勝利もない。

ここに人間の共通の心理がある。つまり、
「失敗を失敗として認めくり返さぬ最善の努力をする」
「失敗したことに対し反省し、悔やみ次回につなげる」
これは一見前向きのようにも感ずるが、人間は失敗し、責められたり、責任を感ずるとまるでトラウマのように自己暗示にかかり、もう一度くり返してしまうのではないかという恐怖心まで育ち生まれてしまう。

またこんな人もいる。
「私は失敗をしたことはない」
「私は失敗する前に失敗しないように心がけている」
この言葉も一見優等生だが、私の場合。
こんな人は不安になってしまう。

なぜって、世の中に失敗したことのない人はいないこと、またもし失敗したことが実際になかったとしたならこんなに恐ろしいこともない。

本文の最初に書かれている一見「失敗は成功のもと」といっている人達のように、本当の失敗や、人の心の痛みのわからない人達の言葉でもあるからだ。

「失敗してもかまわない ー」といっても失敗したら怒りちらす。
ここには失敗の原因や、本当に失敗だったのだろうかという原因はほとんど掴み切ってはいない人達の言葉でもあるからだ。また怒られた側にはトラウマが残るといった具合だ。

また失敗=悪で、成功=善という一般的な図式もあり、その図式のみに基づいて人は行動している。
しかし失敗して得る財産もあり、成功して失う財産もあることは事実。


これらの図式のすべては、目先の利益中心。確かに今の日本は大不況。目先の利益も重要なこと。しかし目先の利益は人との信頼関係も失う恐れもある。

ならば何をどうすればいいかという問題が残る。
「失敗を失敗として認めない」
「失敗なんて世の中にない」(失敗などしていない)

これは成功のための十歩前進である。
一歩でなく十歩。
こう感じ、こう思うこと。

一生懸命努力し、全力で事を行い。苦しみ、戦い、嫌な思いをし行動したものには「失敗」の定義はあてはまらない。

つまり「成功しかない」大切なことはどうして成功しなかったのかという点のみ。それを研究し工夫することによってその失敗はすべて成功になる。


昭和36年 雪印 スライスチーズ」新発売の中吊り広告https://www.meg-snow.com/sliced-cheese/history/より



雪印乳業の大ヒット商品、「スライスチーズ」は過去に大失敗した商品であるという。
この話を知る人は少ない。
チーズというものは、切るのにとても手間がかかる。

チーズを切るとき包丁やナイフにくっついてしまったり、とても切りづらいため時間もかかる。
ならば、切る手間を省くために、最初からスライスしたものを箱に入れて売出したらどうだろう?

そんな提案から雪印が最初にスライスチーズを売り出したのが昭和37年のこと。このアイデアは社の内外から高い評価を受け、売れ行きにも絶対の自信を持っていた。

なぜならとても便利で、主婦の人達からも必ず喜ばれる手間のかからないチーズだからだ。

ところが結果は大失敗。

雪印は驚きを隠せない。
なぜなら、当時の出荷数とそのための宣伝費用、設備、投下資本は莫大だったからである。

では、その大失敗とは一体何か。
それはまるで売れなかったのだ。

またその原因もはっきりしていた。
それは消費者から次のような苦情が寄せられていた。

「せっかくスライされたチーズも、時間がたつとすぐくっついてしまう」
「すぐに固くなってしまった」
「スライスされていても取りにくい、はがしにくい」

販売はその場で中止された。
社内の誰もがショックを受けた。
大損害である。

しばらくあまりの衝撃のため誰も「スライスチーズ」の話題を社内ですら口に出ない時期があったという。

「大失敗 —。」
この3文字がまるで呪のように雪印全体をおおう。

しかし、この時社内全員が打ちのめされていたら、このまま「スライスチーズ」は二度と世に出なかったかも知れない。

しかし救世主が社内に一人。
この失敗を失敗と思わない社員がいた。

「スライスチーズを一枚、一枚フィルムで包んだらどうでしょうか?そしたら、くっつくことも固くなることもなく、取りやすく清潔に見える」

このアイデアは単純だが、消費者の苦情をすべて取り入れられ改良点もある。彼は社内会議でそう発言した。
しかし現実的に単純なアイデアだが問題点もある。
それは、商品化するためにさらに4億から5億の設備投資が必要。
社内のほとんどが大反対。
つまり、これ以上の投下資本はあまりにも危険すぎるという点だ。

「再び失敗したらどうするか、大変なことだ —。」社内は荒れる。

しかし、彼は失敗を失敗とは思っていなかった。
また失敗とは思いたくなかったのかもしれない。
またこのアイデアを取り入れれば大丈夫、という絶対の自信をもっていた。

そこで提案者の彼は、アメリカに出向く。
マーケットリサーチの開始だ。
するとアメリカでは同様の商品がよく売れていることに気づいた。
もともとチーズは他国から来たもの。

しかし消費者のニーズに日米の差はさほどあるまい。
便利なものはどこでも便利だという考え方だ。

自分のアイデアを認めてもらうために、上司である営業部長にも実際にアメリカまで脚を運んでもらい、ようやく社内の賛同も得られはじめ、さらに研究、実験を重ねて、「スライスチーズ」は再び世の中に再登場した。

現在、同社のチーズ部門の50%以上は「スライスチーズ」によって占められている。
このアイデアはとても単純だが、チーズに一枚一枚フィルムで包むことによってさらに商品価値が上がったことはいうまでもない。

ここに「失敗した」「大失敗してしまった」「取り返しのつかないことをしてしまった」、という者と、
「失敗ではない」「失敗などしていない」「失敗を失敗として認めない」「そして不足しているものは何か」という姿勢がこの雪印を救ったことは紛れもない事実。

たった一人でも、わずか一人でも会社組織全体を動かしてしまった、アイデアというものはものすごい。

しかし、この失敗というスイッチが、成功というヒラメキになったことも事実。


発売60周年に当たり、パッケージをリニューアル!https://www.meg-snow.com/sliced-cheese/history/より


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