[SS] 激突!マカロニ vs ペンネ。
いつも、外に買いに出る昼食。
ふと、社食に行ってみる。
部下の子達が美味しい
と言っていたのが、刷り込まれたのかもしれない。
まあ、ただの気分転換。
12階。
エレベーターを出る、社食しかないこのフロア。
それなりに人がいた。
入り口。
今日のおすすめ、500円
そう書かれた紙。
おすすめは何?
気になって仕方がない。
今日のおすすめ。
食券を買って、列に並ぶ。
出されたトレイ。
カニクリームコロッケ。
ご飯、スープ、それにサラダ。
カニクリームコロッケ定食。
席を探していると
遠くの方から、大きな声。
「せーんぱい。こっちこっち。」
「先輩、こっちお願いします!」
立って手を振る、よく知った顔。
部下の、清水と山口だった。
同い年、25歳。仲良しコンビ。
嫌な予感。
が、それより私をみている周りの目線が怖い。
気は進まないが、急ぎで向かう。
4人掛け。
向かい合う様に座る二人。
「あのねえ、大きな声出さないの。」
私がトレイを置くと、やっと二人は座った。
「先輩、すみません。」
礼儀正しい口調、薄づきのナチュラルメイクの山口。
「先輩、社食って、珍しいですね。でもよかった、聞いてくださいよ。」
少し甘え口調、少し甘めのメイクの清水。
対照的な二人。
「はいはい。で、何?」
私は山口の隣に座る。
「聞いてくださいよ。私はペンネがいいって言ってるんです。」
「先輩。マカロニですよね。」
ん?
「だって、ペンネってスジついてるじゃないですか。」
「違います。マカロニはついてないから、いいんです。」
いや、だから。
なに?
私は二人の顔の前に
ぱっと手を出して、静止した。
「仕事と一緒、何の話かちゃんと説明する。」
「すみません。清水が急に変なこと言い出して。」
「変な事って?」
「中に入って転がるならどっちが早いって?」
は?
「私はマカロニの方がツルツルだから、早いって言ってるんです。」
「せんぱい!スジが入ってる方がグリップ力があるから早いですよね。」
いや…、あの…。
女の子二人で、恋バナでもしてるのかと思ったら。
中に?何の話?
まあ、二人らしいと言えばそうなんだけど。
「あのさあ。」
一瞬だけ、ちらっと横目で周りを見る。
数名、明らかにこっちを見ている。
「先輩、マカロニですよね!」と、山口。
「いや、ペンネですよね!」と、清水。
「まず!二人とも、もう少し、静かに。」
肩をすくめて、食事に戻る二人。
ほんと、何の話してるんだか。
マカロニとペンネ。
転がったらかあ。
雪のないスキー場。
その、頂上。
4mくらいの木の棒、2本。
棒の間に白い布。
マジックの黒い文字。
第148回: 限界まで転れ!!!
麓の草原のゴールテープをとにかく、早く切った方が勝ちレース!!!!!!!
これから始まる壮絶な戦い。
ここはそのスタート地点。
バリバリとローターの音を響かせるヘリ。
私はその中から、このレースを見守っている。
スタートと書かれたテープ。
その少し手前に転がる
人間大のマカロニとペンネ。
マカロニの穴から、山口の顔。
ペンネの穴から、清水の顔。
二人は緊張した顔で、スタートの合図を待っている。
盛大なファンファーレ。
パンという乾いた音。
いよいよだ。
赤い服の男性が、それぞれ
マカロニとペンネを急勾配の坂に押し出す。
お互いにゆっくり
転がり出すマカロニとペンネ。
中に入っている二人の顔。
真剣そのものだ。
転がる。
加速して行く。
ポンポン跳ねる、マカロニ。
地面に吸い付く様に転がる、ペンネ。
なるほど、スジって大事なのかも。
ヘリの窓からそんな事を思う。
転がって行くマカロニとペンネ。
加速、加速。
二人の表情はすでに確認不能。
ちょっとした段差でも大きく跳ねる、マカロニ。
徐々に跳ね始める、ペンネ。
二人とも頑張れ。
心で送るエール。
いよいよラスト
残るは、直線コースのみ。
ゴールに先回りし
地上で二人を迎えることにする。
草生い茂る、草原。
ゴールと書いた布。
スタートと同じく、2本の棒の間。
その下、白いゴールテープ。
持つのは、部長と課長。
どちらも60代越え、ゴルフ焼け。
筋肉モリモリの二人。
マカロニもペンネも一歩も譲らず
勢いが落ちることもなく
こちらへ向かってくる。
そして…..。
両者、ほぼ同時。
同時で、ゴールテープを駆け抜けた。
二人に送られる盛大な声援、そして拍手。
パンパン、乾いた音がゴールを知らせる。
正式な順位は
ビデオ判定になりそうだ。
と、アクシデント発生。
ゴールテープが切れていない。
マッチョ二人を端に、ブンブンと振り回しながら
マカロニもペンネもまだ転がり続けている。
観客も私も走って追いかける。
さらに500m先、コースの終点。
消防用のマット5枚重ねの緊急停止地点。
轟音と共に両者、激突。
そして、マットを駆け上がり
空に舞い上がる両者。
地面に落下し、マカロニもペンネも停止した。
救護班が駆け寄る。
二人とも無事な様だ。
目が回っている様でふらふらしているが
支えられてその場で立ち上がった。
追いかけて来た観客
私も、皆が惜しみない拍手を送った。
あれ?
部長と課長は?
二人の姿が無い。
空?声が上から聞こえる。
マットを駆け上がった勢いが止まらなかった様だ。
クルクルと回転する二人。
空高く、舞い上がる二人。
キラリ、二人は星になった。
合掌で見送る私。
「先輩?」
「せんぱい?」
二人が私の顔を覗き込んで心配そうにしている。
「ん?あ、ごめんごめん。」
「で、どっちですか?」
「ペンネですよね。」
さっきよりは遥かに小さな声。
でも、どっちも譲れない意思が汲み取れる。
「うーん、同着だったよ。結局。」
「途中マカロニは飛び跳ねるけど、ペンネはそうでもない。」
「でも結局は同着、つまり引き分けね。」
キョトンとした顔を見合わせる二人。
「だったよって?」
「せんぱい、見た事あるんですか?」
「ないない。そういう感じだろうなって。」
私はカニクリームコロッケをナイフで切って頬張る。
やっぱり、カニは入ってなさそうだ。
「ほらほら、二人も食べないと。休憩終わるよ。」
「まずい、午後一会議だ。先輩、お先です。」
「待った、それあたしも。せんぱい、また後で。」
二人は慌てて立ち上がると、ペコっと頭を下げ
返却口に食器を返して食堂を出て行った。
「なんの話してんだか....、ほんと。」
そう口には出したものの
クルクル回りながら空を飛んでいく
部長と課長。
声には出さなかったが、おかしくて仕方がない。
残りのコロッケを口に放り込む。
「さて、午後も頑張るかなあ。」
返却口に食器を戻して、食堂を出た。]
こちらの企画に参加させて頂きました。
今回もなんか変なところに行ってしまいましたが
楽しかったです。
