[SS] 妄想は....から。
眠い、午後の授業。
お腹が膨れて、ただでさえ眠い。
内容が眠気を加速させる。
「というわけで、太古の地球。原始の地球は海に覆われていました。」
丸、地球だろうか。
青いチョークで塗りつぶされた球体。
「生命のスープ、そんな言い方もあります。」
スープ、コーンスープ、コンソメスープ。
給食のワカメスープは美味しかった。
全ての音が遠くに聞こえる。
起きているはず、はず。
頭の中に何かが浮かぶ。
眩い光。
光が収まると、球体。
太古の地球、真っ赤な星。
水が生まれる、海。青い星。
海の中にはたくさんの微生物。
種、そう、生命の種。
地球が過ごした、果てしない時間。
自分はそんな果てにいる。
「ねえ、橋本くん。橋本くん。」
隣の席。
関口さんが、俺の腕を引っ張っていた。
「ん?」
「ん?じゃないよ。先生が。」
こっちを睨みつけている、先生。
「橋本、授業中だぞ。」
「すみません。」
「全く....、で、続きだが。」
授業は続行。
なんだったんだ?
「橋本くん。ちゃんと授業受けないと。」
顔を近づけて、耳打ち話のトーン。
ん?
何か、何か。
太古の地球。
サイズは小さくなって、地球儀くらいだろうか。
スプレー?
虫よけスプレーだ。
俺は、そんな地球の一点。
そこに、ずっとスプレー。
朝が来て、夜が来て、海面が上がったり下がったり。
火山が噴火して、陸が沈む、新しい陸が生まれる。
タイムラプス、宇宙から撮影したそんな感じ。
微生物が、目に見える大きさに。
虫、魚、恐竜、猿、人。
生き物が生まれ、消え、生まれる。
そんな中ずっと一点にスプレー。
そこにだけ、生き物が見えない。
いや、いる。
でも、それは菌。
白、黒、青、赤、虹の様な様々な色の菌。
菌は菌同士で連なり、進化する。
今とは異なる世界。
そんな一点から、菌は風に乗り、世界に広がる。
菌が世界を、海を、生物を覆い尽くしていく。
青かった球体は、白い地球に変わっていく。
菌は地球を飛び出して、宇宙へ。
宇宙空間を飛び、別の星へ。
そこでも、広がって、連なって、進化して。
「橋本くん!」
大きな声と腕に何か。
「ん?」
「橋本くん、次美術!」
空になった教室。
関口さんは俺の袖口を引っ張っていた。
「ねえ、急がないと。」
「あ、ああ。」
美術の教科書を取り出す。
2階の教室から、4階の教室まで。
関口さんは俺の手を引いている。
二人で、階段を駆け上る。
ん?
これ?
「ねえ、なんか匂わない?」
足が止まる、3階の踊り場。
「え?なにそれ?臭い?私。」
焦っている関口さん。
「いや、そうじゃなくて。なんか、こう。」
「あ。」
虫よけスプレー。
関口さんがポケットから取り出した。
「あ。」
「これ?」
「多分。」
「そう…。そう、じゃなくて、急がないと!」
と、手を掴んで走り始める。
そうか、これのせいだ。
この匂い。
さっきの変な妄想は、これのせいだ。
先導してくれている関口さん。
必死、まあそうだよね。
ん?何か。
でも、虫よけスプレーとは違う。
そんな匂い。
そんな匂いがした。
匂いは色々なものを呼び起こしますよね。
そんな話でした。
こちらの企画に参加させて頂きました。
ありがとうございます☺️
