見出し画像

ぼくのカメラ

初めての一人旅はモンゴルだった。なぜモンゴルに決めたのかなどと聞かれても僕はうまく説明ができないのだが、真冬の1月に渡航したことと初めての一人旅が定番の旅行地からかけ離れているから、人々は興味を持ってくれるのだった。

真冬のモンゴルは氷点下マイナス30℃まで冷えることも珍しくないらしく、僕は長野の冬でも使ったことのない程の厚手のダウンをメルカリで買い、昔姉にあげたふわふわしたロシアン帽を返してもらった。

長野の田舎で普段見かけることのないであろう、ダウンとモコっとした帽子で大きくなった体の僕は東京へ向かう。
電車には無事乗れたのだが、普段電車を利用しない僕は、駅の入り口を勘違いして表の駅入場からではなく、駅の裏に到着した。丘の下から駅を見上げる。ここに駅へ続く階段があると思っていたのだ。2分後の電車に乗らなければ東京での予定に間に合わないと覚悟を決めた僕は、丘を駆け上がり柵を越え駅に入場した。
おかげで僕は汗だくだった。

東京ではどうしても買いたいものが一つだけあった。夕方前の東京で、友人のチイと合流しそれを伝えた。運が良ければ再会できる、、、。

この数週間前も別の用事で東京に訪れ、新宿の中古カメラ屋を何軒も回り、「FujifilmのX-pro2はありませんか?」と1人聞いて回り歩いた。最後の一軒に一台だけ、とうとうそのカメラを見つけた。しかし見つけたのは目当てのシルバーではなく黒色で、しかも値段が24万円だと知り、数十分悩んだ挙句買う決心がつかなかったのだった。

モンゴルへ行く前日の夕方。僕は祈るような気持ちで友人のチイとビルのエレベーターに乗り4Fのボタンを押した。
決心のつかなかった僕の背中を押したのは、やはり初めての一人旅と、未知の世界モンゴルだった。

カメラは数週間前に来た時と変わらず、ガラスケースを挟んで向こう側にいた。もうここまで来て迷うことなんてない。頭の中でモンゴルへの往復航空券とカメラの値段が浮かんできたがかき消した。心は決めている。

僕は初めての一人旅の前日に、カメラを買った。慣れない操作だったが、高揚感に包まれていた。

首都から東へ400kmのサインシャンドの雪原

いいなと思ったら応援しよう!