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第12次職業能力開発基本計画で示されたキャリアコンサルタントの役割

みなさんこんにちは。日本キャリア開発協会(JCDA)公式noteです。
いつもご愛読いただきありがとうございます。

さて今回は、2026年3月31日に厚生労働省より公表された「第12次職業能力開発基本計画」をご紹介いたします。

第12次職業能力開発基本計画・概要版(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001683728.pdf
▼第12次職業能力開発基本計画・本文(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001683729.pdf

令和8年度から12年度までの5年間、国がどのような方向性で職業能力開発に取り組むのかを示した、いわば「これからの働く環境の設計図」ともいえる文書です。

この計画をひとつひとつ読み進めながら、キャリア支援の現場に関わる者として随所で立ち止まりたくなる言葉に出会いました。今回は、その内容と私たちが感じたことを、ご紹介できればと思います。

JCDAは設立以来、『人が自分らしいキャリアを歩めるよう支援すること』を使命として活動してまいりました。この計画が示す方向性は、その使命と深く重なるものがあります。だからこそ、会員の皆さまとともにこの文書を読み、現場の実践につなげていきたいと思っています。




今、何が起きているのか

計画の冒頭には、現在の日本が置かれている状況が丁寧に描かれています。

令和6年平均の完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.25倍。雇用情勢は緩やかに改善しています。名目GDPは600兆円を超え、賃金上昇率は33年ぶりの高さとなりました。一方で、物価上昇の影響により実質賃金はまだマイナスが続いており、回復の実感が個々の生活に届くまでには、もう少し時間がかかりそうです。

労働市場に目を向けると、2040年にかけて就業者数は全体として減少していくことが見込まれています。少子高齢化による人口減少は労働供給を制約し、AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展によって、求められるスキルがかつてないスピードで変化しています。

「変化が速い」という言葉は、日常的によく耳にします。
しかしこの文書を読むと、抽象的な言葉ではなく数字として示されているため、変化の重さはより切迫した形で伝わってきました。キャリアの支援者として、まずはその重さを受け止めることから始めたいと思いました。



計画を貫く3つの視点

この計画には、今後5年間の施策全体を貫く3つの視点が示されています。
それは、「個別化」「共同・共有化」「見える化」です。

個別化」とは、一人ひとりの事情や希望に合わせた能力開発を行うことです。
画一的な支援ではなく、その人の状況に寄り添った形で、学びや成長の機会をつくっていくという方向性です。

共同・共有化」は、一社では担いきれない人材育成を、産業や地域という単位で複数の企業が連携して行うことです。
特に中小企業においては、単独で職業能力開発に取り組むことの難しさが長年の課題としてあります。その壁を、企業の枠を越えた連携によって乗り越えていこうという考え方です。

見える化」は、スキルや処遇、職業能力開発の機会を可視化し、労働者が自ら情報にアクセスして選択・活用できるようにすることです。
この計画では、スキルが見えるだけでなく、そのスキルがどのような処遇につながるかという道筋、すなわちキャリアラダーの整備までを視野に入れています。
職業情報提供サイト(job tag)へのキャリアラダー情報の充実や、業界ごとのキャリアラダー構築が具体的な施策として挙げられており、「スキルを積めば、どこへ行けるのか」が見える環境をつくっていこうとする意志が感じられます。

この3つは、互いに深く絡み合っています。
スキルが「見える」からこそ個人が動ける――
個人が動けるよう、「個別化」された支援が必要になる――
そして一社では難しいからこそ、「共同・共有化」が意味を持つ――
この循環の中に、今後の職業能力開発の設計思想があるように感じています。

ただ、スキルだけではキャリアは前に進まない、という現実もあります。
だからこそ、「何を学び、どこへ向かうのか」という道筋を明確にすることの価値はますます高まっていくことでしょう。
それはすなわち、背景にあるその人の経験や価値観、「ありたい自分」にアプローチする『キャリアカウンセリング』の役割が、ますます重要なものになっていくと私たちは考えています。



キャリアコンサルタントに関わる施策

読み進めていくと、キャリアコンサルタントに直接関わる施策が、この計画の中に明確に位置づけられています。

一つ目は、キャリアコンサルティング機会の拡充とセルフ・キャリアドックの導入促進です。
セルフ・キャリアドックとは、企業が労働者のキャリア形成を体系的・定期的に支援する取り組みのことです。これが普及するということは、キャリアコンサルタントの活躍の場が「相談室の中」から「企業の人材育成の現場」へと広がっていくことを意味します。
個人に寄り添うだけでなく、企業が人を育てる仕組みそのものに関わっていく役割が、この計画の中では言葉として置かれています。
これを、私たちはどう受け取るか、改めて考えてみたいところです。

二つ目は、キャリアコンサルタントの専門性向上と、活用促進に向けた理解促進の取り組みです。
ここには2つの方向性が含まれています。ひとつは、私たち自身が専門性を高め続けることです。もうひとつは、企業や社会全体がキャリアコンサルタントをどう活用するかの理解を深めることです。
どれだけ専門性を高めても、活用される環境が整わなければ届かない——そういう現実への答えが、こうして示されたのだと受け止めています。

三つ目は、夜間・休日・オンラインで受講できる教育訓練給付金指定講座の拡大と、教育訓練休暇制度の普及促進です。
「学びたいけれど時間がない」「仕事を休めない」という相談者の声は、現場でよく耳にします。その声に、国が具体的に応えようとしている部分です。相談の場で案内できる選択肢が広がることは、支援の質に直結することでしょう。



「自律的・主体的」という言葉の意味を、ともに考えたい

この計画の中で、ひときわ印象に残るフレーズがあります。
それは「自律的・主体的なキャリア形成」という言葉です。
文書全体を通じて、繰り返し丁寧に記述されています。

この言葉は、時として「自分でなんとかしなさい」という意味合いで受け取られることがあります。しかしこの計画が描いているのは、決してそういうことではないと感じています。
必要な情報にアクセスでき、相談できる人がいて、学び直しの機会が整っている。そういう環境の中ではじめて、「自律的・主体的に」という言葉は生きてくるものではないでしょうか。

経験を受け止め、意味を見出し、次の一歩を自分のものとして踏み出していく。そのプロセスに伴走することが、私たちの仕事だと思っています。

この文書が示す方向性を、現場の実践とつなげながら考え続けることが、今の私たちに求められていることのひとつかもしれません。



キャリアコンサルタントとして一度読んでおきたい貴重な資料

この計画には、概要版と本文の2種類の資料があります。

まず概要版を開いてみてください。国がこの5年間で何を大切にしようとしているか、それだけで十分に伝わってきます。そのうえで気になる部分を本文で深めていくと、一つひとつの施策の重さが違って伝わってくると思います。

自分がやっていることは、この大きな流れの中のどこにあるのだろう——。そんなことを考えながら読める文書だと思います。キャリアの現場に関わる皆さまにとって、現場の実践と国の方向性を重ねて読む機会になれば幸いです。

JCDAは今後も、キャリアコンサルタントの専門性の向上と、社会への普及に取り組んでまいります。この計画の中に示された施策のひとつひとつを、私たちは他人事として読むのではなく、自分たちの活動の指針として受け取りたいと思っています。

この5年間を、キャリア支援の現場から誠実に支えていく。その思いを新たにしながら、この文書をご紹介させていただきました。

厚生労働省のウェブサイトより、どなたでも無料でご覧いただけます。

参考資料
第12次職業能力開発基本計画・概要版(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001683728.pdf
▼第12次職業能力開発基本計画・本文(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001683729.pdf


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