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【本質を語れる人とは、時間を超えて再会する。】― 徳川幕府からAI時代まで。「人間」を問い続けた私の30年

昨日、大学時代の二つ上の先輩である河合さんと、久しぶりに杯を交わした。

不思議な再会だった。

学生時代、私たちは決して頻繁に交流していたわけではない。

共通の友人の紹介で、一度だけ夜を徹して語り合った。

それだけだった。

それでも数十年という歳月を経て再会すると、まるで昨日の続きを話すように会話が始まった。

終わって御礼を送ったところ、河合さんはこんな言葉を送ってくださった。

「学生時代にはそれほど多く言葉を交わしたわけではないのに、お互いに強く印象に残っていて、数十年後にこんな時間を持てたことが不思議で、素敵なご縁だと感じています。」

私は、この一文を何度も読み返した。

人は何を記憶するのだろう。

一緒に過ごした時間だろうか。

交わした言葉の数だろうか。

いや、違う。

人は、その人が「何を問いながら生きていたか」を記憶しているのではないか。

だからこそ、本質を問い続ける者同士は、時間を超えて再会するのだと思う。


本質を語る対話は、昔話では終わらない

河合さんは学生時代、経営学部でアジア研究会に所属され、フィリピンや中国をはじめ、アジア各地で留学や現地研究を重ねられた。

現在も、日本の外交に関わる最前線で責務を果たされている。

一方、私は経済学部で、第三世界経済の発展と格差是正、その打開策としての通貨制度を研究していた。

歩んだ道は違う。

しかし、その夜の会話は、驚くほど自然に一つの方向へ向かっていった。

組織。

哲学。

国家。

外交。

行政。

政治。

アジア。

安全保障。

AI。

エネルギー。

そして、日本の未来。

気がつけば四時間半。

互いの意見を戦わせたわけではない。

表面的な評論をしたわけでもない。

「なぜ、その意思決定が行われるのか。」

「なぜ、同じ失敗が繰り返されるのか。」

そこまで掘り下げると、不思議なほど見えている景色が重なっていた。


私が何度も徳川幕府を紐解く理由

私は、長期にわたり存続した組織を考えるたびに、徳川幕府を繰り返し紐解いてきた。

山岡荘八氏だけではない。

隆慶一郎氏をはじめ、史実を丹念に探究した歴史書や時代小説を読み、一つの史観だけに依拠せず、多面的に人物と組織を考えるよう努めてきた。

また、その終焉である幕末についても、司馬遼太郎氏の作品から多くを学びながら、その視点だけに留まることなく、吉村昭氏をはじめ、史料や現地取材を積み重ねて歴史を描いた著作にも触れ、複数の視点を往復しながら読み続けてきた。

私が歴史を学ぶ目的は、過去の英雄を称えることでも、断罪することでもない。

現代の人間を理解するためである。

歴史を読むほど、確信することがある。

組織は、課題があるから滅びるのではない。

課題を議論できなくなったときから、静かに衰退が始まる。


同調圧力は、組織を静かに壊していく

現場は気づいている。

管理職も気づいている。

経営者も薄々感じている。

それでも、

「今は言うべきではない。」

「空気を壊したくない。」

「もう少し様子を見よう。」

そんな言葉が積み重なる。

気づけば、課題そのものではなく、「課題を語れない空気」が組織を支配する。

私はこれまで、大きな組織にも、民間企業にも、医療の現場にも、営業の最前線にも身を置いてきた。

業界は違っても、驚くほど共通していることがある。

本音が失われた組織は、例外なく硬直する。

反対意見が消えた会議は、まとまっているように見える。

しかし、それは健全な合意ではない。

沈黙である。

企業も、行政も、政治も、国家も、本質は変わらない。


福島で教えられたこと

私には、この考え方の原点がある。

東日本大震災後、約一年間、福島で復興支援に携わった。

ある日、お会いした一人の女性が、ご主人と三人のお子さんを津波で亡くされたことを知った。

私は何も言えなかった。

励ましの言葉は、あまりにも軽く感じられた。

そのとき私は、自分の人生の中で最も大切な経験を静かに語った。

二十四歳で、がんのため旅立った親友との最後の時間。

彼が私に残してくれた言葉。

そして、生きるとは何かという問い。

話し終えた後、その女性は静かに涙をぬぐわれた。

あの日、私は初めて知った。

人は、正論では救えない。

知識だけでも救えない。

人は、その人が歩いてきた人生によって、人の心へ届く。

それ以来、私が営業を教える理由も、組織を考え続ける理由も、歴史を読み続ける理由も、一つにつながっている。

人生で本当に大切なものを、次の世代へ手渡したい。

そのためである。


AI時代だからこそ、人間にしかできないこと

AIは知識を瞬時に集める。

分析もする。

提案もする。

これから、その能力はさらに高まるだろう。

だからこそ、人間にしか担えない価値がある。

耳の痛い真実から目を背けないこと。

立場を超えて、本音で対話すること。

異論を排除するのではなく、未来への警鐘として受け止めること。

そして、自らの経験を知恵へと昇華し、次の世代へ受け渡すこと。

歴史は、そのためにある。

組織も、そのためにある。


結びに

昨夜、河合さんと語り合った四時間半は、単なる再会ではなかった。

それぞれの人生を持ち寄り、日本の現在地と未来について、本音で語り合う時間だった。

私は改めて思う。

本質を語れる人とは、時間を超えて再会する。

そして、その対話は、過去を懐かしむためではなく、未来への責任を確認するためにある。

歴史は、人間を学ぶためにある。

組織は、人間を生かすためにある。

そして人生は、そのすべてを、次の世代へ手渡すためにある。

これからも私は、その問いを持ち続けながら、自分の持ち場で歩み続けたいと思う。

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