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優れた牛の能力を未来へつなぐ ~受精卵移植技術(ET)~

優れた牛の能力を未来へとつなぐ技術として、今、注目を浴びている受精卵移植技術(ET)。
NOSAI宮崎では、誰でも取り入れやすく、目的や経営規模に応じた柔軟な活用が可能なこの技術を積極的に展開中です。
和牛繁殖農家・酪農家の皆さんは必見の内容です!
ぜひ最後までご覧ください。


受精卵移植技術(ET)とは?

 受精卵移植技術(ET)とは、優れた遺伝的特性を持つ母牛から採取した受精卵を他の牛に移植し、妊娠させる技術です。
採卵方法には「体内採卵」と「OPU(経腟採卵)」の2種類があります。
どちらも優れた牛の遺伝子を効率的に残すための技術ですが、採卵方法や受精の工程に違いがあります。


受精卵移植技術(ET)活用のメリット

①優良遺伝子の拡散

どんなに順調に妊娠・出産しても生涯に得られる産子は10数頭です。母牛の能力が高いとわかっても、その時点で母牛は既に5歳・・・なんてことに。ET技術を活用することにより、優秀な母牛から多くの受精卵を得ることができます。この受精卵を他の牛に移植・妊娠させることで、農場内の改良スピードが飛躍的に高まります。

②農家の収益確保

AIは1本の精液ストローから1頭しか産子が得られませんが、ETを活用すると1本の精液ストローから多くの産子を得られる可能性があります。結果として、希少ストローの有効利用、市場性の高い産子の生産につながり、収益確保も期待できます。

③繁殖対策

繁殖成績の良くない雌牛はもともと卵子の状態が良くないこともあるので、授精しても受精卵が育たないことがあります。受精卵移植は1週間発育した正常卵を子宮内に移すので、そんな雌牛でも妊娠する可能性があります。また、繁殖成績は良くても、血統が流行遅れで、産子の値段がよくない雌牛に、人気のある受精卵を移植し、産ませることもあります。

AIとETの違い

• セリで高値で取引される流行りの血統の牛がたくさんほしい!
• 新しい品種を増やしたい 
• 肉質を変えたい(例:サシ・赤身・オレイン酸) 
• A2ミルクを生産したい 
• スリック遺伝子を増やしたい(暑熱耐性) 
• 和牛の受精卵をホルスタインに移植して付加価値を上げたい 
• 輸入精液や県外精液などの貴重な遺伝資源を活用したい etc.

といったことの実現に活用することができます。


体内採卵とOPU(経腟採卵)の違い

・体内採卵

体内採卵は、母牛にホルモン剤を投与し、多数の卵胞を発育・排卵させ人工授精します。母体内で発育した受精卵を1週間後に採卵することで多くの受精卵を得ることができます。

▼体内採卵のメリット・デメリット
メリット

①一度にたくさんの移植可能卵がとれる可能性がある
②比較的受胎率が高い

デメリット
①過剰排卵処置の注射回数が多い
②薬に反応しにくい牛がいる
③OPUに比べ、採卵間隔が長い
④妊娠中は採卵できない

▼体内採卵の流れ
①ドナーの選抜

受精卵を生産し、提供する雌牛(ドナー)を選抜します。
②過剰排卵処置
ドナーにホルモン剤を3日間かけて注射します。これにより、1回の発情で通常1個しか排卵しない卵子を多数育てることができます。
③発情確認・人工授精
通常の人工授精と同じですが、左右の卵巣から排卵されるため、精液を左右にわけて注入することもあります。
④採卵
子宮内に液体を還流して受精卵を回収します。ただちにET車内で検卵し、移植可能な受精卵を判定します。

子宮内に液体を還流して受精卵を回収します。
採卵後すぐに検卵し、移植可能な受精卵を判定します。

⑤受精卵の移植・凍結
同時期に発情した「借り腹」の雌牛がいれば、新鮮卵移植として使用。その他の受精卵は凍結して生産者のボンベにお渡しします。

受精卵を凍結させる様子

⑥誕生


・OPU(経腟採卵)

OPU(経腟採卵)とは、牛の卵巣に針を刺して卵子を直接採取する方法です。麻酔をかけて卵巣に針を挿入し、卵子を取り出します。この卵子を実験室内で人工授精、発育させることで多くの受精卵を得ることができます。

▼OPUのメリット・デメリット
メリット

①体内採卵に比べ、注射回数が少ない
②薬に反応しにくい牛でも可能
③妊娠3ヵ月程度まで実施可能
④卵子の採取結果を見て精液が選べる
⑤発情やAI(人工授精)のタイミングを気にしなくていい
⑥若齢牛からの採卵も可能

デメリット
①一度にできる移植可能卵は体内採卵に比べ、やや少ない傾向
②稀に過大児が生まれることがある
③県内精液は利用できない

▼OPUの流れ
①ドナーの選抜

受精卵を生産し、提供する雌牛を選抜します。
②卵子の採取
超音波装置を使って、経腟で直接卵巣に針を刺し、卵子を回収します。一つ一つの卵子を狙って刺すので、保定がとても重要になります。体内採卵とは違い、事前の注射はごくわずかです。

超音波装置を使って、卵子を回収します。

③卵子の成熟培養
OPUで採取した未成熟卵子を特殊な培養液を用いて、約1日培養し、受精できる状態にします。

④体外受精(IVF)
成熟培養が終わった卵子に運動性の高い精子を一定数ふりかけて受精させます。精子自身の力で卵子に侵入するので、より自然に近い受精方法です。

⑤発生培養
体外受精後、受精卵を洗浄して新たな培養液に移します。約1週間培養し、顕微鏡で良好な受精卵を選択します。

⑤受精卵の移植・凍結
同時期に発情した「借り腹」の雌牛がいれば、新鮮卵移植として使用。その他の受精卵は凍結して生産者のボンベにお渡しします。

⑥誕生


ETを活用している農家の声

①和牛繁殖農家:日髙和幸さん・里美さん(体内採卵)

日髙和幸さん㊨・里美さん㊧

和牛の繁殖においては、「どんな母牛を持っているか」が経営の根幹を握るといっても過言ではありません。受精卵移植を活用することで、一頭の優秀な雌牛から、より多くの優良な子牛を得ることができ、牛群全体のレベルを底上げすることができます。牛群改良を進めるうえで、とても心強い技術だと実感しています。
また、和牛の血統には“流行”があり、市場で注目されている血統の子牛は高値で取引されやすい傾向にあります。流行にいち早く対応していくためにも、受精卵移植は非常に効果的です。限られた期間の中で、優良な血統を持つ子牛を効率的に増やすことができれば、収益の向上にもつながりますし、何よりも質の高い子牛を安定して生産できます。
今後はOPUの導入も検討しており、より多様な形で受精卵移植を活用していきたいと考えています。これからも、肥育農家に選ばれる子牛づくりに取り組んでいきたいですね。


②酪農家:渡辺信也さん(OPU)

渡辺信也さん

乳牛の牛群改良に、OPUを活用しています。ゲノム解析(牛の体型や能力を決める遺伝情報)を取り入れて、牛の能力を見極めながら改良のスピードを上げたいと考えていたところ、NOSAIがOPUに取り組んでいると知り、技術的なサポート体制も整っていると感じたことから導入を決めました。
OPUは、優秀な母牛から効率よく採卵できるだけでなく、若い牛や妊娠中の牛からも採卵が可能で、牛への負担も少ないことが特長です。そのため採卵回数を増やしやすく、優良な遺伝子をスピーディーに次世代へつなぐことができます。特に、乳量や乳質に優れた牛の特性をより多く残せるのは大きな利点です。
今後は、ゲノムとOPUを組み合わせることで、リスクを抑えつつ生産性の高い牛群づくりを目指していきたいです。データが重視される今の時代、OPUはこれからの酪農経営に欠かせない技術だと感じています。


③酪農家:今村憲二さん(OPU)

今村憲二さん

OPUを活用しています。和牛から採卵した受精卵を乳牛に移植することで、和牛の繁殖効率を高めつつ、乳牛は搾乳もできる、そんな“二刀流”の活用法です。
和牛の繁殖成績があまり良くなかったことから、打開策としてOPUを導入しました。夏場はどうしても種が付きにくいので、不受胎対策としても効果を感じています。
OPUは体内採卵に比べて前処置が少なく、牛の負担も少ないのが魅力です。また、体外受精のため、排卵のタイミングを細かく管理する必要もありません。採卵数が多いときは、期待値の高い精液を使って高品質な受精卵を狙い、採卵数が少ないときはコストを抑えた精液を使うなど、状況に応じて柔軟に対応できる点も経営面で大きなメリットです。
 NOSAIには、発情の同期から移植、妊娠鑑定まで一括でサポートしてもらえるので、とても心強い存在です。今後は、和牛の繁殖だけでなく、乳牛の牛群改良にもOPUを活かしていきたいと思っています。


”こうなりたい”を技術でカタチに。

いかがでしたでしょうか?
NOSAI宮崎には、受精卵事業に関わる職員(獣医師、受精卵移植師、検査技師)が35名在籍しています。さらに、受精卵専用のET車を2台保有しており、現地で採卵・移植が可能です。普段の診療で顔なじみの獣医師と、専門スタッフが計画から移植まで一貫してサポートします。

”こうなりたい”を、技術でカタチに。

NOSAIと一緒に、未来の牛づくりを始めてみませんか?
まずはお気軽にNOSAI宮崎までご相談ください。

【お問い合わせ先】
NOSAI宮崎 生産獣医療センター 受精卵移植課(担当:畠中)
TEL: 0983-35-1116

NOSAI宮崎のETチーム

※おまけ~「媒精(ばいせい)」の様子~

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