月見茶会
お師匠さんに誘われて
むっちゃんと一緒にお茶会へ
カルトナージュと茶箱のお茶会
どちらが当たるか分からない
むっちゃんと二人のはずがどんどんと一緒に行く人が増えていた
あの人もこの人も…知り合いをお連れする
あれまぁ…
お師匠さんは主催者側で茶室のあるお蕎麦屋さんに場を借りて月見茶会を催される
いつもお稽古場でお会いする姉弟子さんたちは着物姿で楚々として、お点前をする
曇り空の中、だんだんと日が暮れてゆく
和蝋燭の炎と庭から見える灯籠の仄かな光は月は見えぬとも
色濃い世界へ誘ってくれている
どこからか小さな声の松虫の音が響く
正客は表千家を長年お習いのアイさん
小さな花模様のお着物姿
お茶会にはやはり着物がお似合いだ
最初の席は茶箱点前
何度かお稽古場で練習を拝見したけれど、私はただ見つめるだけ
どのお茶道具たちも小ぶりで可愛らしい
お師匠さんの娘さんのミナ先生は茶箱点前の説明をして下さる
蒸したてのお饅頭を頬張るとあんこの中には栗の姿
むっちゃんは私よりも年上だから右側の上手にいざなう
「えっ、かなちゃんの方が姉弟子なのに」
「むっちゃんは年上だから、これでいいの」と二人でヒソヒソ
相変わらず二人の世界は浮いている
もしかしてそのうちこのお点前もやってくるのか…
まだまだ先だと思うけど
可愛らしい金色のハート形
ミナ先生が結婚式で使われたお茶碗が私の元へやってくる
茶碗を二回回すと飲みにくい
仕方がないと腹を括る
それでも熱いお抹茶は沁みてくる
大阪万博、トルクメニスタン館で買い求められたエキゾチックなお茶碗も使われていた
茶箱点前のお道具を穴の開くように拝見する
小さな羽根箒や珍しい形の茶杓を
全てにおいてコンパクト
ひと通り拝見を済ませて
また待ち合いに戻っていると
お師匠さんが顔を出す
正客のアイさんに挨拶をされた
むっちゃんと私には
「あなたたちもそのうちにこちら側の人間になるのよ」
なんとなく分かってはいたが着物を着て半東さんなんかをやるのかと…
横ではむっちゃんが
「絶対やらない!私は来世で」と言い張っている
前世だろうが来世だろうが今を楽しめればいいと思う
待ち合いから準備ができましたとお蕎麦を頂くお席に案内をされると
そこにはカルトナージュの箱がある
あっ、ここではカルトナージュでお茶を点てるんだ
温かいとろろのかかった小さめの器の月見蕎麦を頂きながら
慣れない右手での箸はとろろ芋が滑って上手く食べられない
悪戦苦闘をしていると
「食べるのが遅いのね」
隣りにいた正客のアイさんにいわれた
「本当は左利きなんですよ、お茶を点てる時の練習にお箸だけは右を使うようにしています」
言い訳がましいが、そう言っていた
お蕎麦が終わり
カルトナージュの綺麗な箱がアイさんの前に置かれている
箱の中には可愛らしいチョコレート掛けのクッキーとうさぎの砂糖菓子が並んでいた
懐紙に取り
お隣に回す
はぁ…と息つく間もなくお点前が始まっている
この方もお稽古場でお会いした姉弟子さん
やっぱりお点前は着物でなくちゃ…
本当は緊張しているはずなのに、そんな雰囲気も出さずに流れるようにお茶を点てている
こちらはカルトナージュを作られる方が説明をして下さる
ショートヘアの目のクルクルとした可愛らしいマダムの姉弟子さん
楽しい時間はすぐに過ぎていった
雨上がり真っ暗の中
滑らないようにとそろりそろりと五人で進んでゆく
帰りは駅までのタクシーを呼んでもらう
「お上品なお蕎麦ではお腹は一杯にならないね、何か食べて帰ろうか」」
「いいね」「いいね」と口々にみんなから言葉が出る
「中華が食べたい」と言う人がいて他の人も「そうしよう」
ところが五人座れる席はなかなか空かない
あんまり待たされるから他の店でもいいのにと私は心の中で思っていたが、一人の人はどうしても中華が食べたいらしい
待つことも訓練か
最後まで学びがある
二服の薄茶にお蕎麦がついて
お値段は破格だと言う
正客を務めたアイさんからみんなでお師匠さんへお礼をしましょうと
お茶には礼節が大切である
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