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38nekoneko
思い出を紡ぐ
母の大好きな青年のバイオリンを聴きに行く
五十人も入ればいっぱいの小さな会場に
母はクラッシックが好きである
父と良く演奏会に行っていた
父と二人で旅行を楽しみ
父と一緒に展覧会で絵の観賞をし
そしてクラッシックのコンサートに足を運んでいた
いつの間に
父がいなくなってからはその相手がわたしになる
でもわたしでは役不足…
ある時、わたしはひとりで絵を観賞したくて、母を置いて先に勝手に進んでしまう
母は置いてきぼりを喰らったと哀しそうに抗議する
「お父さんなら絶対にそんなことはしない」と…
それからは気をつける
母をひとりぼっちにしてはいけないと
バイオリンの上手な青年の小さなコンサートは夏になると開かれる
青年は欧州から夏休暇を使って年に一度帰国をする
母とは何回か彼のバイオリンを聴きに行く
母はとても彼のバイオリンの音色が好きである
でも母があの世に還る年には母はコンサートに行かないと言い出した
とっても具合が悪くなっていたから
あの年も猛暑だった
わたしはひとりでコンサートを聴きに行く
母の姿のないことに周囲の人には
「お母さんは…」と心配される
本当は行きたいはずの、聴きたいはずの彼の演奏を
演奏会には行けなかったけど
母は彼に会う機会があり
ちゃっかりと握手をしてもらっていた
うれしそうにはにかみながら
小さな会場で彼のバイオリンの音色が響いている
母はわたしに掴まって
一緒に聴いているはずだ
いつの間にか涙が溢れる
こうして母との思い出を紡いでいる
最後には会場となったお店のソフトクリームが提供される
わたしはひとりでミルク、抹茶、ミルク味とおかわりをする
わたしひとりじゃないんだよ
母の分も食べてきた
横にいた知り合いに
「何回おかわりしているの⁇」と呆れられたけど…
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