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家康に神算をなめさせた男vol.10-3『大谷吉継、庄内の乱の調停に乗り出す』

家康に神算をなめさせた男vol.10-3『大谷吉継、庄内の乱の調停に乗り出す』

「…のう、佐渡」
徳川家康は考えあぐねて、本多正信に答えを求めたが、正信は家康が何について悩んでいるか、おおよその察しはついていた。
「島津と伊集院の事にござりまするか?」
「島津に恩を売る為に、無法者の忠恒を無罪放免にしたが…」
「伊集院がここまでやるとは思いませなんだ…」
「どうしたものかの」
「島津に恩は売れた事は売れ申した。あとは…」
「あとは❔」
本多正信は、家康が何を言いたいかは見当はついていたが敢えて聞き返した。
「島津の力が弱まってくれれば、それはそれで…よいのじゃ…」
家康はニヤリと笑った。
「それにしても…実に絶妙な人選にござりましたな」
「何がじゃ」
「山口殿と寺沢殿…」
家康はニヤニヤしながら
「山口直友の叔父は島津家と縁が深い近衛前久の妹を嫁に迎えておる故、選んだ。寺沢は太閤の九州取次役じゃ。ただそれだけの事よ。」
「さりながら、あのお二人では…」
「無理じゃの」
二人は顔を見合わせて笑った。
「もっと島津家の火事を大きくせねば…。ところで、加藤清正と伊東祐兵に伊集院を助けるよう指示は出しておろうな」
「仰せの通り。加藤清正様や伊東様が京の茶屋四郎次郎より買い付けた兵糧や鉄砲などを伊集院に運んでおりまする」
「島津に気取られぬようにな」
「かしこまってござる」

「もし、ここで大谷刑部あたりが出てきてみよ。起こるはずのものも起こらぬは…」
「中納言様の時は…それがしも舌をまいたというか…」
「あのままいったら、宇喜多の騒ぎはうまーく、しずまっておったやもしれぬのぉ…」
その時である。家康の近習が本多正信に書簡を持って来た。正信は、その書簡を見て驚いた。
「なんと、大谷刑部様よりの書状にござり申す」
「噂をすれば何とやらじゃの。読んでくれ」
「島津と伊集院の庄内について話がしたいから席を設けてくれと…」
「仲を取り持ちたい、という事か❔」
「そのようで…」
「あの者…なぜ、そのような….まぁよい。いつがよいかの」
家康はそばに置いてあった茶を口に含んだ。
その時である。小姓が正信に駆け寄り、小声でこう申し上げた。

「畏れながら、言上したき儀がございます。」
「うむ、何じゃ。申せ」
「大谷刑部様、門前にてお目通りをお願いしてござります」

家康は思わず、茶を吹き出した。
「なんと」
正信も驚いた。
「まぁよい、通せ、通せ」
家康は驚き呆れたように、こう言った。

程なく、吉継は参上した。

家康の前に現れた大谷吉継は平伏して
「この度はお目通り、叶いましたる事、ありがたき仕儀に存じまする」
と言った。すると家康は、挨拶もそこそこに切り出した。
「此度、参られたのは、そちの書簡の件か?」
「如何にも。そろそろ書簡が届く頃と思いましたので…」
「何も左様に急がずとも…」
「善は急げ、と申しますし…」
「庄内を鎮めるは善か…」
それを聞いた大谷吉継はちらりと庭を見やった。
「蝶がつがいで飛んでおりまするな…。仲良き事は善かと存じまする」
「わぬし❔目が見えるようになったのか!?」
「今日たまたまかもしれませぬが…見え申す」
「このまま良くなるとよいの〜」
「庄内も良くなるとようござる」
家康は唸った。そして言った。
「…そこまで執心とあらば…薩摩へ下向してもよいぞ」
「有り難き幸せ」
「山口と寺沢にも会ってくるがよい」
「かしこまってござる。それでは旅の支度をする故、これにて」

吉継は挨拶もそこそこに退出した。

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