【ショート書評】「世界史の針が巻き戻るとき」マルクス・ガブリエル
さらっと読んでみたので簡単に書評。
ガブリエルの本はつい読んでしまう。テーマ設定は面白そう。でも内容は8割はおかしいと思う、1割は意味がわからない、1割はなるほどそういう着眼点もあるかと思う。
わかったのは(というか前からわかっていたが)、物理的な実在論以外に、人間的な実在論が存在できるように、「世界」や「現実」と言った用語を独自定義することで、自然科学を恣意的に不十分な存在として追いやり(しかもわざわざ「悪」の属性を付与する)、過去に存在せずデジタル化した現代に即したものの考え方として「新しい実在論」を(我田引水的に)構築している。
その為、現実を単に説明しているだけなのに、どんなことでも「新しい実在論が教えてくれる」となってしまう。私に言わせれば、現代科学を理解していない人同士が概念の遊びをしているようにしか思えないし、彼が批判している考え方は、それこそまるで19世紀の世界観を前提としているかのようだ。
だいたいカントの批判から始まっているのだから、そうなるのも仕方がない。哲学は一度過去の文献を一度歴史として精算した方が良いと思う。物理の勉強をするのにギリシャ自然哲学からやる必要はないし、熱力学も量子論も初期の混乱した議論から始める必要はないのと同じ。過去の偉人の業績には敬意を払いつつ、新しく構築した方が良い。
巨人の肩にいつまでも乗っていると、見えてないものに気づけなくなる。
科学に対する批判も私には的外れに思う。いかにも科学者は倫理に欠けるかのように書かれているし、「科学の進歩が人類を救う」などと素朴に信じている人なんて既に殆どいないと思う。
メイヤスーよりはマシだが、論理学や数学用語を使っていかにも論理的な説明をしているかのように装っているが、殆ど何も意味していない。
ただ、世の中をなんとなくしか理解していない大多数の人にとって、なんとなくすごいことを言ってそうに聞こえる話をうまく言っているとは思う。私も含めて少なくとも興味は持ってしまう。自分の中のロジックさえしっかりしていれば、(根本の所以外は)大抵何を聞かれても答えられるので。
むしろ疑問は、なぜ彼がここまで世界でもてはやされているのか、ということ。本当に「賢人」だと言えるのだろうか。さっぱりわからない。
「すべての宗教よりもさらに有害なのが近代(現代)科学です(p.86)」
と正面からケンカを売っている。
「エネルギー問題の解決を後回しにして宇宙の構造を調査する必要があるでしょうか」(p.153)
エネルギー問題に取り組んでいない人間は生きる価値がないとでも言わんばかりだが、、、。
こういうことを平気で言えてしまうあたり、見識を疑ってしまう。
それでもまた新刊が出たら買うと思う笑
