「最重要課題」と言うなら、3年後では遅くないか?
〜高市政権の給付付き税額控除は前進。しかし国民が知りたいのは、「いつ、誰の手取りが、いくら増えるのか」だ〜
はじがき
高市政権は7月29日、「社会保障国民会議」の中間とりまとめを公表しました。
2月の会議設置から、与野党8党による実務者会議を22回開催。令和11年度、つまり2029年度から「所得に連動したきめ細かな給付」を導入する方向を示しました。
長年動かなかった税と社会保障の一体改革が、具体的な工程に入った点は評価すべきです。
ただし、これは完成した制度でも、今すぐ始まる減税でもありません。
国民が知りたいのは制度の名前ではない。
「自分の手取りが、いつ、いくら増えるのか」です。
STEP1 家計の負担は「感覚」ではなくDataに表れている
2026年度の国民負担率は45.7%。財政赤字を加えた潜在的国民負担率は48.4%です。これは個人の給与から一律45.7%が引かれるという意味ではなく、税と社会保険料の総額を国民所得で割ったマクロ指標です。
一方、2026年5月の消費者物価指数は2020年を100として113.5。
物価上昇率が前年同月比1.5%まで鈍化しても、生活費の水準自体は2020年より13.5%高いままです。
インフレ率の低下と、物価が元に戻ることは別問題なのです。
STEP2 給付付き税額控除には合理性がある
一律給付は、高所得者にも同額が届きます。
所得税減税だけでは、納税額が少ない低所得者に十分な恩恵が届きません。
そこで、税額から一定額を控除し、引き切れない部分を現金で給付する。
この仕組みなら、低所得・中所得の勤労世帯を狙って支援できます。
ただし、制度効果を決めるのは「給付額」と「所得増加に伴う減額率」です。
給付を急激に減らせば、収入が増えても給付減と社会保険料増で手取りがほとんど増えない「高い限界負担率」が生まれます。
STEP3 「年収の壁」は税だけでは崩せない
年収の壁には、所得税、住民税、社会保険、企業の配偶者手当など複数の壁があります。
特に社会保険料が発生する境界では、年間負担が一気に増える場合があります。
給付付き税額控除だけで、すべての働き控えが解消するわけではありません。
政府資料自身も、現下の政策課題のすべてをこの制度だけで解決できるものではないと整理しています。
STEP4 最大の問題は「2029年度までの空白」
本格導入は2029年度。
今、食費、電気代、保険料に苦しむ家計にとって、約3年は長い。
政府は「つなぎ策」を検討していますが、具体策は意見が一致していません。
給付額、対象所得、世帯単位か個人単位か、財源をどう確保するのか。
制度の核心部分は、まだ未確定です。
STEP5 政治はモデル世帯の手取りを示せ
必要なのは理念ではなく、試算表です。
年収200万円、300万円、400万円、500万円。
単身、子育て、ひとり親、共働き、年金生活者。
それぞれ税、社会保険料、給付を合算し、年間手取りが何円増えるのかを公開すべきです。
全体総括
給付付き税額控除の議論が前進したことは評価します。
しかし、「導入方針を示した」ことと「生活が改善した」ことは同じではありません。
最重要課題と言うなら、2029年度の完成図だけでなく、今を支える「つなぎ策」を急ぐべきです。
制度名ではなく、手取り。
理念ではなく、数字。
高市政権の改革が本物かどうかは、国民の家計簿で判断されます。
