長新太について読んでいく㉙ 絵本族インタビュー 月刊『絵本とおはなし』1982年10月号 偕成社
長新太さんのインタビューや対談、特集記事など、長新太さんついて書かれたものを読んでいます。
第29回目は、月刊『絵本とおはなし』1982年10月号に収録されている絵本族インタビュー。インタビュアーは、当時いわさきちひろ絵本美術館副館長の松本猛さんです。



長さんは、色を使える絵本の仕事は楽しいとおっしゃっています。
掲載のお写真も笑顔ですね。こんなに笑ってある長さんのお写真を見たのは、初めてです。
松本 長さんは、絵本とマンガやイラストレーションなどの大人の本と、二つの分野で活躍なさってますけれども、絵本は一年に何冊ぐらい描かれるんですか。
長 だいたい年に二冊ぐらいですね。
松本 仕事の割り合いとしては、どちらが多いんでしょうか。
長 そうですね、比較的イラストレーションや一枚漫画などが多いですね。それは大人の本の方ですけれどね。他にはコマーシャル関係とかね。
児童書の方は、絵本、童話のイラスト、それからときどき自分で童話を書く、そういうのがあります。量としては、半分ずつぐらいですね。
松本 どちらの本の仕事の方が面白いんでしょうか。
長 大人の本の仕事は、絵本のようには色を使えないんです。ですからそういう意味では、絵本の仕事は楽しいですね。大人の漫画家の仕事は、ほとんどモノクロで線だけですからね。
それから、自分で童話を書いて、それに絵をつける仕事も楽しいですね。というのは、絵描きだから、話作りのうえでも視覚的な発想があるんです。こういう絵を描きたいなあ、という想いがあって、視覚的なイメージでおもしろい話をつくるわけですから、これは楽しいですよね。
松本 たしかに『キャベツくん』(文研出版)などをみても、最初に広大な風景のイメージをもって作られたんだな、という感じがします。だから、本全体をとおしておおらかなユーモアとのびやかでゆったりとした世界がくり広げられるんですね。
長 ええ、だから、一枚漫画の場合でも絵を見ただけでもおもしろい、そういうのを描きたいんです。
僕は本来は一枚漫画がやりたくて、この世界に入ってきたんです。ですから、絵が主体で、絵を見るとおもしろい、そして、さらにキャプションを読むともっとおもしろい、そういうのがやりたいんですね。ですから、絵本の場合も、やはり見ただけでもおもしろいものをやりたいわけです。
そうすると、絵で語ろうとするから、キャプション、絵本では文ですが、それがどうしても短く、少なくなってくるんですよ。だんだんね。だから、絵描きの作った絵本は、絵はいいけど文章がなってないとか、よく児童文学の人なんかに怒られるんですけれどね。
でも、僕の場合も、視覚的イメージで出発して、文章で語らなくても絵で語ろうとするから、結局文章は「ブキャッ」だけになったりして、きわめて少なくなっちゃうわけで、それでもいいんじゃないかと僕は思っているんですけれども。
松本 絵本の文章と、児童文学の文章は同質ではないという気がしますね。
長 そうです。絵本というのは、児童文学でないと僕は思うんです。
後略
絵本族インタビュー
長さんは、インタビューの中で絵本の文について語られています。「絵本は児童文学ではないと思う」とはっきりおっしゃっています。
長さんの絵本の文に関するお考えを、内田麟太郎さんのエッセイ『絵本があってよかったな』(架空社・2006年)で読んだことがあります。
その頃、絵本のテキストを書いて生きていきたいと思っていたわたしにとって、かなりの衝撃でした。分かりやすくて、本当に納得で、長さんすごいなーと心の底から思いました。
その内田さんのエッセイの中に『長新太さんにもらった宿題』という章があります。こちらも、ぜひお読みになってみてください。

