【ノーフォークの旅】④WWTウェルニーで再会したオオハクチョウたち
前回からのつづきです。
地方の片隅で見つけた素敵なベーカリー
ティッチュウェルでバードウォッチングを終えたのがちょうどお昼時だったので、ランチのお店を探した。近くにカフェやレストランが密集した一帯があったので、行ってみることに。そこは、元々倉庫だった場所を改装しました、みたいな雰囲気で、辺鄙なところにしては小洒落ている。プレイグラウンドやグランピング場もあったりして、集っている人たちも若いファミリー層が多かった。
わたしたちが入ったカフェは、全英ベストベーカリー50にランクインする実力派のベーカリーだった。ご自慢のサワードウブレッドは確かにとっても美味しかったし、店員さんも非常に丁寧で感じがよかった。お客さんがひっきりなしに訪れる人気店なのも納得。ハンスタントンから近いとは言え、ハンスタントンも小さな町だし、電車も通っていないような場所なのに!

WWTウェルニーへ
ランチの後は、WWTウェルニーへと向かった。お昼前から空がだんだん怪しくなっていたが、車に乗り込んでしばらくすると大雨になった。午前中に降られずに済んでよかった!
わたしのnoteの熱心な読者の方なら(そんな方がいれば、の話だけど)WWT知ってるよ!となるかもしれないけれど、きっと何それ?って方が多いと思うので簡単に説明すると、
WWTとはWildfowl and Wetlands Trust(野生水鳥・湿地トラスト)という野鳥保護団体のことで、彼らが運営するウェットランド・センターは湿地や湖など多様な生育環境を持ち、多種多様な水鳥や野鳥を観察することができる
そんな施設です。わたしたちがウェルニーに行くことにしたのは、イギリスではこの時期にしか見ることのできないWhooper swan(オオハクチョウ)を見るためだった。夏にアイスランドで遭遇したオオハクチョウたちに、イギリスで再会できたら素敵だなと思って。

ティッチュウェルから車を走らせること約1時間。WWTウェルニーに到着したのは14時半頃だった。んだけど、すでに「もう夕方ですか?」という暗さだ。冬のイギリスは15時頃から暗くなり始める。こんなふうに天気の悪い日はなおさら暗い。
WWTの施設を訪れるのは今回が3箇所目なのだけど、ウェルニーは過去に訪れたロンドンやアランデルとはだいぶ様子が違った。というのも、ロンドンやアランデルは、飼育されている鳥の展示エリアと自然の湿地帯エリアが混在する動物園×野生のハイブリッド型だけれど、ウェルニーは自然の湿地帯とハイドがあるのみなのだ。

白鳥の湖にて
エントランスのある建物から橋で川を渡った先にメインの展望室がある。橋の内壁にはオオハクチョウよりレアなBewick's swan(コハクチョウ)に関するパネルが何枚も貼られていた。ハクチョウを売りにしていることが分かる。橋を渡った先の小川でさっそくMute swan(コブハクチョウ)の親子を発見し、期待が高まる。

アイスランドで見かけたオオハクチョウの大群が脳裏によぎる。あのときは、一斉に背中を向けてサーッと逃げていってしまったけれど、ここでは餌やりもあるとのことなのできっと逃げないオオハクチョウの大群が見られるはず…!と期待に胸を膨らませて展示室に入った。

あれ?ハクチョウはあんまりいないかも…?そのかわりにすんごい数のPochard(ホシハジロ)がいた。潜水性のカモなので水に潜っている子も多いのだけど、それでもこんなに水上にいる。
お目当てのオオハクチョウも確かにいた。コブハクチョウもいて、並べて観察すると違いが一目瞭然。それぞれの若鳥(シグネット)の姿もあった。オオハクチョウの若鳥は、アイスランドで生まれたはず。え、渡ってきたの??





メイン展望室で毎日15時半から開催されるSwan Talkが始まった。ガイドさんの解説がわたしの疑問をすぐに解消してくれた。アイスランドで生まれたオオハクチョウは、生後3か月で50時間ノンストップの飛行をして遠く離れたイギリスの地にやってくるそうだ。ここに若鳥がいるってそういうことだよね、越冬するために渡ってくるんだからアイスランドにはいないよね、って少し考えたら分かることだけど、まだ羽も生え変わっていない若鳥がそんな偉業をやってのけたのだいうことに改めて気づかされて感動してしまった。
そして、もう一つ気になっていたことも解消した。それは、コハクチョウはいずこに?ということだった。コハクチョウとオオハクチョウは、見た目はそっくりなのだが、大きさが一回りほど違うので素人でも判別できる(はず)。見当たらないと思っていたら、今年は飛来していないそうだ。背景には気候変動の影響があるという。

展望室からは空を飛ぶ鳥の姿も見えた。高い位置で隊列を組んで飛ぶ鳥はCommon crane(クロヅル)だそう。低い位置で群がって飛んでいるのはLapwing(タゲリ)で、あっちはCattle eglet(アマサギ)などとガイドさんが瞬時に見分けていて感心した。素人にはまるで分からない。双眼鏡は息子が使っていたし、カメラは電池が切れてしまったので、ただぼーっと窓の外を眺めながらガイドさんの話を聞いていた。アマサギも昔はもっと南の地域で生息・繁殖していたのに、温暖化の影響で生息域がどんどん北上してイギリスでもたくさん見られるようになったんだって。


ところで、思っていたほどいなかったオオハクチョウたち。今イギリス全土で問題になっている鳥インフルエンザが原因でオオハクチョウの一部が死亡してしまっていたことが分かった。(どのくらいの規模で発生しているのかは不明。)はるばる渡ってきた先で病気に感染して命を落とすなんてやりきれない。最後にしんみりした気持ちになってしまった。

渡り鳥の交差点に立って
アイスランドから渡ってきたハクチョウと、ヨーロッパ大陸から渡ってきたツルと、北極圏から渡ってきたグースと、温暖化の影響で北上してきたサギ。別々の方面からやってきた渡り鳥が出会う交差点に立っているのだと思うと不思議な気持ちになった。旅での出会いは一期一会というけれど、渡り鳥たち同士の出会いもまた一期一会なのだ。
一期一会。野生動物との出会いは基本的に一期一会だ。今日出会えた鳥に、明日も同じ場所で出会えるとは限らない。そこにいると思って会いにいった鳥に出会えないこともたくさんあるし、予想外の鳥に出会うこともある。そのギャンブル性も野鳥観察の面白さなのかもしれない。

と、書いてて気づいたけど、渡り鳥たちは、季節が巡れば基本的にはまた同じ場所に帰ってくる。春になったら「また冬に会おうねー」って別れるのかもね。人も旅先で親しくなった人と再会するパターンもあるしね。わたしももう一度会いたくてわざわざ追っかけてきたわけで。
オオハクチョウとの再会を果たし、ノーフォークの旅はおわり。旅行先としてはマイナーだけど、自然豊かで魅力的な地域だったので、少しでも興味を持ってくれる人がいたらうれしいです。
