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誰一人として置き去りにしないビジョンづくりーーレゴ®シリアスプレイ®

組織づくりや人の成長支援に向き合うなかで、それなりにたくさんの本を読み、いくつもの資格を取り、学び続けてきました。その中でも「これは効くな。使えるな」「有効な手札として手元に置いておこう」と思った思考のフレームや実践のヒントを、私の“仕事道具”として集めています。
道具を選ぶときに大事にしているのは、小難しくなくて削ぎ落とされていること、誰にでも(下手したら子供にでも)使いやすいくらいシンプルなこと、そしてちょっとユニークであること。
この連載「学び続ける組織屋のお仕事道具箱」では、そんな基準で選び抜いた道具たちを紹介していきます。
さて、今回は、私が組織のビジョンづくりやチームビルディングの場でよく使っている「レゴ®シリアスプレイ®」をご紹介します。
ひとことで言うと、「誰でも楽しくビジョンを共有できるツール」です。
言葉だけでは表現しにくい想いやイメージをレゴで形にし、それを言語化しながら共有していく。職場ではどうしても一部の人が議論をリードしがちですが、この手法は全員が参加者になり、全員の声を扱うことができる。私はそこに大きな魅力を感じています。


フレームワークの紹介――レゴ®シリアスプレイ®とは?

レゴ®シリアスプレイ®は、レゴブロックを使って自分の考えやイメージを表現し、それを言語化することで理解や創造を促す手法です。
たとえば、「理想のチームとはどんな状態か」「これからの職場はどうなっていたいか」といった問いに対して、人は何となくのイメージを持っています。でも、それをいきなり言葉にしようとすると意外と難しい。
そこでレゴを使います。
まずは手を動かして作品をつくる。そして、その作品が何を意味しているのかを語る。さらに他の人から質問を受ける。そのプロセスを通じて、自分でも気づいていなかった考えや想いが少しずつ形になっていきます。
私はこれを、「頭で考えるのではなく、手がしゃべる道具」だと思っています。
実際にやってみると、「なぜこの色を選んだんだろう」「なぜこの形にしたんだろう」と、自分でも後から意味づけをしていくことがあります。その過程で、自分の中にあった価値観や願いが引き出されてくるのです。
また、この手法は単に個人の考えを可視化するだけではありません。チームの現状やありたい姿を、参加者全員で共作していくところに特徴があります。言葉だけの議論では見えなかったものが、作品という形を通じて浮かび上がってくる。そこにレゴ®シリアスプレイ®ならではの面白さがあります。

この道具の良さは?──誰でも参加できる“平場”が生まれる

この手法の一番好きなところは、「誰でもできる」「全員参加」ということです。
レゴは子どもの頃に触れたことがある人も多いですし、特別なスキルも必要ありません。表現が上手でなくてもいいし、プレゼンが得意である必要もない。
だから自然と、平場になる。
たとえば社長も新入社員も一緒になって、同じレゴという素材を使って作品をつくります。作品説明と質疑を通して全員に発言機会が与えられます。
さらに面白いのは、「違い」が自然に見えてくることです。
基礎練習のひとつに、限られたパーツで「アヒルをつくる」というものがあります。同じ材料を使っているのに、誰一人として同じ作品になりません。
「そんなアヒルもありか」
「そういう使い方もありか」
そんな驚きが次々に生まれます。
組織づくりにおいて「違いを尊重しましょう」というのはよく聞きます。でも、頭で理解するのと体験するのでは大違いです。
レゴ®シリアスプレイ®は、「違いがあるのが当たり前」ということを体験として学べる道具でもあります。そして違いを面白さに転換できる。
そもそもテーブルにたくさんのレゴが並ぶだけで場の空気は柔らかくなります。仕事とか役割という普段の鎧がほどけて、微笑みながら自然と手を伸ばし始める。
楽しい。そして参加しやすい。
その入り口の低さも、この手法の魅力だと思っています。

実際どう使うの?──作品を通じて対話する

進め方にはいろいろありますが、私がよく使う流れをご紹介します。
まずは基礎練習です。
短時間で同じテーマの作品をつくりながら、「違いがあること」「正解はひとつではないこと」「作品を通じて対話すること」「レゴに慣れる」を体験してもらいます。
そのうえで本題に入ります。
たとえば、
「今のチームを表してください」
「理想のチームを表してください」
そんな問いを投げます。
参加者は作品をつくり、それぞれが説明します。そしてその作品に対して、周囲のメンバーが質問をしていきます。
ここで大事なのは、「人ではなく作品に質問する」ということです。
「この赤いパーツは何を表しているんですか?」
「この橋にはどんな意味があるんですか?」
そんなふうに作品に対して問いを向けます。
すると、不思議と安心して話せるんです。
「あなたはどう思うの?」と直接聞かれると構えてしまう人もいます。でも作品という媒介があることで、自分の考えを自然に語れるようになる。
とても安全なコミュニケーションの方法です。
そして質問されることで、本人の中にあるものがさらに引き出されます。
何となく置いたパーツだったはずなのに、「なぜそこに置いたんだろう」と考え始める。質問によって思考が広がり、自分でも気づいていなかった意味が言葉になっていくのです。
最後には、参加者全員の作品を持ち寄って「共有モデル」をつくります。
ここで大切なのは、共通点だけを残すことではありません。
共通というのは、みんなの意見の重なった部分だけを取り出すこと。でも、共有というのは、一人ひとりが大切だと思っているものを持ち寄ることです。
実際には、それぞれの作品の中から「これだけは外せない」という要素を取り出し、それらを組み合わせて一つの作品にしていきます。
違いを消して一つになるのではなく、違いを含んだまま一つの未来を描く
私はこの考え方がとても好きです。
ビジョンづくりというと、つい多数決や合意形成をイメージしがちです。でも本来は、一人ひとりが大切にしているものを持ち寄りながら未来を描くことなのではないかと思うのです。

どんな人におすすめ?──全員参加で未来を描きたいチームへ

この道具は、チームで未来を描きたいときに力を発揮
します。
たとえば、
・理念やビジョンを考えたいとき
・組織変革のスタート地点をつくりたいとき
・チームの現状と理想を整理したいとき
・エンゲージメントサーベイの結果を振り返りたいとき
・メンバー同士の相互理解を深めたいとき
そんな場面です。
特に、「みんな頭の中には何かあるのだけれど、うまく言葉になっていない」という状態には非常によく効きます。
会議では発言しなかった人が、作品を前にすると驚くほど豊かな話をしてくれることがあります。
だから私は、ビジョンづくりだけではなく、「みんなの声を引き出したい」ときにもこの手法を使っています。

最後に――誰一人として置き去りにしないために

私がレゴ®シリアスプレイ®を好きな理由をひとつ挙げるなら、「Lonely Guyをつくらない」という思想です。
組織の中には、自分の考えをうまく言葉にできない人がいます。大切な想いを表現する機会がなかったり、自信がなかったりして埋もれてしまう人がいる。
また、リーダーの立場にいる人も案外孤独です。理屈や分析や説得力のある言葉を求められるなかで、「なんとなくこう思う」という感覚を安心して話せる機会は意外と少ない。
レゴ®シリアスプレイ®では、全員が作品をつくり、全員が語り、全員が質問されます。
つまり、誰一人として置き去りにしない。
私自身も参加者としての体験で、「質問してもらえるってこんなに嬉しいんだな」と感じたことが忘れられません。
普段は質問する側にいることが多いのですが、自分の作品に興味を持ってもらい、問いを向けてもらうことで、「自分の考えが大切に扱われている」という感覚がありました。
ビジョンづくりというと、つい立派な言葉を考えたり、正解を探したりしがちです。でも、その前に必要なのは、一人ひとりの中にある想いやイメージを安心して表現できることなのかもしれません。
もしあなたのチームが、「みんなで未来を描きたい」「一人ひとりの声を活かしたい」と考えているなら、ぜひ一度レゴ®シリアスプレイ®を試してみてください。
きっと、思っている以上にたくさんの声と可能性が見えてくるはずです。

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