記憶の写真 : ベルギー ‘98 - 醸造所
ドイツでは、ビールの成分などが細かく法律で規定されている。
だが、何事にもゆるいベルギーでは、ビール醸造は基本的に何でもありだ。
そのため、ベルギーでは多種多様な製法や色んな味付けのビールが造られているし、醸造所は2千以上あるとされている。
25年前以上前にベルギービールの醸造所を巡るツアーに参加した。
ある醸造所で聞いた話は面白かった。昔、その村の各家庭でビールを飲み尽くすと、空の大瓶をぶら下げて醸造所へ買いに来るので、それを満たしてお金を貰う方式だったそうだ。
昔の日本でも、醤油がそういう販売形態だったと聞く。
だからベルギーには有名で大規模な醸造所もあるけれど、超小規模なところも多い。そう言う小さいところの実態は三ちゃん醸造だった。
つまり、爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃんの三人で作業にあたる。
兼業農家ならぬ兼業醸造家である。
ベルギービールのカテゴリ分けには色々な方法(軸)がある。
その中の一つに、生産者の系譜と言う種類で分けると言う分類軸がある。
味わいには基本的に関係ないので、意味があるかどうかはさておき、話の都合上それを紹介してみる。
まず修道院が醸造するトラピストビールと言うカテゴリがある。
こちらは基本的に有名で大規模な醸造所で、全部で10ヶ所ぐらいしかない。
シメイとかが良い例だろう。司祭はコンピューター制御の大規模な醸造機械を自慢していた。
次に、単に修道院にあやかっているとか、名前を貰っているだけのアベイビールと言うカテゴリも一応ある。だが、こちらの定義は曖昧で基本的には修道院と何か関わりがあればOKみたい。
この時訪れた Abbaye des Rocs (アベイ・デ・ロック) 醸造所も近くにあった修道院の名を冠した小さな醸造所だった。今ではビアカフェをオープンしたりして、少しは発展しているみたいだ。
当時は、爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃんの三人が家の敷地内で醸造していた (この建物を建てるのに使ったレンガが、元は修道院のものだったとか、そう言う関係だったと思う)。
彼らはツアーの一行数人を迎えてくれ、醸造所で製造過程を細かく紹介してくれた。その後、自宅の居間へ迎え入れてくれて、皆にビールを振る舞ってくれた。
とても美味しいビールで本当に感動した。
それで、カメラに Velvia を入れて、85mm F1.4を付けて、丁寧に画角を調整して、ポートレートのつもりで愛をこめて撮影した。
当時は、今みたいに(冷蔵装置の付いた)リーファーコンテナでの輸送がまだ一般的ではなく、外国のビールはほぼ例外なく少し劣化した状態で日本に届いていた。空輸は費用が高かったし量も少なかったからビールには適していなかった。
だから、現地で飲むビールのフレッシュ感は歴然たる違いがあった。
(今も少しあるけど)
ここの醸造所は、今ではこのブロンドのビールは造っていないみたいだ (確証はない)。
頑張って撮ったつもりだけど、私は頂いたビールをまず味わってしまうので、この絵は二口ぐらい飲んだ後のグラスだ。
いまだに、飲む前のビールグラスは一度も撮れたことがない。
注がれたビールを目の前にして、飲む前に撮る事は思いつかないのです。

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