齋藤論文が示した道と、僕が料理で実装していること|2026/1/10
読んでくれて、ありがとうございます。
土地を巡る旅も、日常の中の小さな発見も、僕にとっては同じ「旅」です。
その途中で出会った風景、人、気づきを、そのままの熱量で残しています。
【アナウンス📣】
🎙 hitokoto Radio 最新回配信中
Ep.78「雑談:hitokoto Radioメンバーの2025年を振り返る会!」
明けましておめでとうございます!今回は地方で活動するメンバー3人が、2025年を駆け抜けた一年を振り返ります。互いの現場を訪れて感じたこと、地域資源の違い、そして2026年に向けたテーマまで。人口1万人以下の農村で暮らす僕たちが、地域の魅力と日本の未来を考える40分。
🍽 2月のイベント
・2/12〜15 表参道「チーズ博」出店
・2/14 東京「羊を丸ごと食べる会」
・3/6〜8 鶴居村「羊まるごと食べ尽くす会(仮)」
詳細は記事末尾にて。
#これは完全に宣伝
■ 今、僕が見ているもの
美しい村連合の元学生サポーターだった齋藤貴宏くんが、奈良教育大学の河本大地先生と共に書き上げた「農山漁村におけるネオ内発的発展の実装に向けて」という卒業論文。
「内発的発展論」が限界を迎えた理由
論文は、まず「内発的発展論」という考え方から始まる。
これは簡単に言えば、「地域のことは地域で解決しよう」という思想だ。
地元の木材で家を建てる。
地元の農産物で加工品を作る。
地元の祭りを地元の人が守る。
外に頼らず、自分たちの力で地域を良くする。
でも、限界があった。
人が足りない。技術が足りない。お金が足りない。
そして何より、「外部との連携=悪」みたいな空気が生まれてしまった。
地域主義が強すぎて、都市との協力を拒む。
結果的に、「自分たちだけで」という理想が、逆に地域を孤立させてしまった。
これが、平成の大合併後の農山漁村の現実だった。
「ネオ内発的発展論」という希望
そこで登場するのが、「ネオ内発的発展論」だ。
論文にはこう書いてある。
「地域内外の能力の混合を理念に、都市と農山漁村の連携だけでなく農山漁村同士の連携・互助というニュアンスまでも内包している」
翻訳すると、こうだ。
「地域だけで頑張るんじゃなくて、足りないものは外から借りよう。でも、主導権は地域が持つ。」
#これが 「混合」の意味
料理で例えるなら、こういうことだ。
地元の食材を使う(内発的発展)。
でも、調理技術は都市のシェフから学ぶ(外部との連携)。
パッケージデザインはデザイナーに頼む(外部の専門性)。
でも、「何を作るか」「どう売るか」は地域の人が決める(主導権は地域)。
#僕のNarrative Catering(ナラティブケータリング)の姿勢にも近い
「テリトーリオ」という食の文化圏
論文の中で、最も心を掴まれた概念がある。
「テリトーリオ」。
イタリア語で「領域」を意味するこの言葉は、単なる地理的な範囲じゃない。
論文にはこう定義されている。
「同一の自然環境下で形成され共通の経済的・社会的・文化的アイデンティティ(生産品種、調理法、方言、建築材料など)を有する都市・農山漁村が広がる領域・範囲のこと」
難しい。
でも、料理人の言葉で言い直すと、こうなる。
「同じ気候・土・水で育った食材を使い、同じ発酵文化を持ち、同じ方言を話す人たちが暮らす地域のこと。都市も農村も、分断せずにひとつの『食の文化圏』として捉える」
例えば、庄内地方。
庄内平野で育つ米。
月山の雪解け水。
鶴岡の発酵文化(味噌、醤油、納豆、漬物)。
酒田の港町文化。
庄内弁。
これら全部がつながって「庄内」という食の文化圏を作っている。
そして、この考え方を実装しているのが、「庄内スマートテロワール」だ。
生産者だけ、料理人だけ、企業だけで頑張るんじゃなくて、みんなで手を組んで、庄内という「食の文化圏」を守り、発展させる。
「キロメトロゼロ圏域」という地産地消の進化版
論文のもうひとつの核心が、「キロメトロゼロ圏域」という概念だ。
キロメトロゼロ。
「生産地と消費地の距離を限りなく近づけよう」というイタリア発祥の運動。
畑で採れた野菜が、その日のうちに地元のレストランで料理になる。
牛乳は、隣町の牧場から届く。
魚は、朝、港に揚がったものを昼には食べる。
#これが 「0キロ」の意味
でも、日本の農山漁村の現実は違う。
地元で育った米が、一度都市の工場に運ばれて、加工されて、また地元のスーパーに戻ってくる。
地元の牛乳が、県外の工場でヨーグルトになって、また戻ってくる。
地元にあるのに、地元で消費されていない。
これを論文では「漏れバケツ理論」と呼んでいる。
齋藤論文は、こう提言している。
「加盟町村地域にて生産された農林水産品は属するテリトーリオの飲食店や小・中学校、地域密着型の小売店などへ優先供給する体制づくりの構築」
翻訳すると、こうだ。
「地元で採れたものは、まず地元で使う。余ったら都市に出す。」
さらに、こう続く。
「都市の人が高い値段を出しても、まず地元の学校給食や地元の飲食店に優先的に回す。生産者が損しないように、自治体が補償する。」
#これが 「キロメトロゼロ圏域」の構築
そして僕がNarrative Catering(ナラティブケータリング)でやっていることは、まさにこれの文化的実装だ。
鶴居村のじゃがいもを使った料理を作るとき、僕はただじゃがいもを仕入れるんじゃない。
この畑の土はどんな土か。
誰がどんな想いで育てたか。
この土地の気候がどう影響しているか。
この村にどんな歴史があるか。
それらを全部、料理に込める。
「エノガストロノミア・ツーリズム」という五感の旅
論文は、もうひとつ重要な提言をしている。
「エノガストロノミア・ツーリズム」。
エノガストロノミア。
イタリア語で「ワイン(エノ)と美食(ガストロノミア)」を意味するこの言葉は、その土地の料理、酒、景観を、一緒に楽しむ旅のスタイルを指す。
料理だけ、酒だけ、景観だけじゃなくて、全部セットで体験する。
例えば、長野県開田高原。
御嶽山を眺めながら、そば畑で育ったそばを食べて、地元の日本酒を飲む。
ただの観光じゃない。
「この景色が、この食を生んだ」という物語を、五感で追体験する。
従来のグリーンツーリズムとは、決定的に違う。
従来のグリーンツーリズムは、農業体験がメインで、教育的要素が強くて、「勉強」っぽくなりがちだった。
でもエノガストロノミア・ツーリズムは、景観・食・酒を「楽しむ」ことがメインで、その背景にある自然環境や歴史も「学べる」。
娯楽と教育が共存している。
そして僕が美しい村フェアでやっていることも、hitokoto Radioで話していることも、すべてこれに繋がっている。
■ 企業との連携が生む、新しい可能性
ここで、もうひとつ重要な視点が浮かび上がる。
企業のCSRやSDGsとの接続可能性だ。
論文を読みながら、僕は気づいた。
美しい村連合の加盟町村は、それぞれが独自のテーマを持っている。
徳島県上勝町は「ゼロウェイスト」。
山形県飯豊町は「バイオマス循環」。
長野県木曽町は「景観保全」。
#これらは全部 、SDGsの目標と重なる
例えば、上勝町。
日本で初めて「ゼロウェイスト宣言」をした町として知られるこの町では、ゴミを45種類に分別し、リサイクル率80%以上を達成している。
もし、ここでNarrative Catering(ナラティブケータリング)をするなら、どうなるか。
食材の端材を一切捨てない料理。
器は町内で作られた再生陶器。
食べ残しはコンポストへ。
「ゼロウェイスト」をテーマにした食事会。
環境問題に取り組む企業が、社員研修や顧客イベントとして、上勝町でこの食事会を開催する。
食を通して、ゼロウェイストの哲学を体験する。
土地の物語を聞き、生産者と交流する。
そして、その体験を社内や顧客に持ち帰る。
同じように、飯豊町では「バイオマス循環」をテーマにした食事会。
木曽町では「景観保全」をテーマにした食事会。
それぞれの町が持つ固有のテーマと、企業のSDGs目標を掛け合わせることで、新しい価値が生まれる。
企業にとっての価値、地域にとっての価値
この取り組みは、企業にとっても、地域にとっても、メリットがある。
企業にとっては:
CSR活動の実績として対外的にアピールできる
社員のエンゲージメント向上
顧客との新しい接点の創出
SDGs目標の具体的な実装
地域にとっては:
関係人口の創出
地域資源の再評価
経済的な持続可能性の向上
若い世代への地域の魅力の伝承
■ 齋藤論文が示した3つの提言と、僕の実践
齋藤論文は、美しい村連合がこれから進むべき道として、3つの施策を提言している。
1. 地域資源の「再発掘」と「体系化」
地元の人が気づいていない宝を見つけて、ストーリーで繋げる。
鶴居村のタンチョウ、白糠の羊、鶴居村の牛乳。
これらをバラバラに紹介するんじゃなくて、「鶴居村の自然と共生する暮らし」というストーリーで繋げる。
#これが 「体系化」
2. 「キロメトロゼロ圏域」の構築
地元で採れたものは、まず地元で使う仕組みを作る。
3. 食と地酒をテーマとした「エノガストロノミア・ツーリズム」の推進
景観・食・酒を五感で楽しむ旅を、美しい村連合全体で推進する。
そして、ここに4つ目の提言を加えたい。
4. 企業のCSR・SDGsと連携した「テーマ型Narrative Catering(ナラティブケータリング)」の展開
各加盟町村が持つ固有のテーマ(ゼロウェイスト、バイオマス、景観保全など)を軸に、企業や団体向けの体験型食事会を開催する。
そして僕がやるべきことは、明確だ。
齋藤論文が「理論」なら、僕は「実装者」だ。
Narrative Catering(ナラティブケータリング)= 地域資源の再発掘と体系化の現場
美しい村フェア = キロメトロゼロ圏域の可視化
hitokoto Radio = エノガストロノミア・ツーリズムの入口
テーマ型Narrative Catering(ナラティブケータリング)= 企業CSRとの接続
■ 僕がこれから書くべきこと
この論文を読んで、僕は確信した。
僕が料理でやっていることは、ネオ内発的発展の文化的実装だ。
だから、これを書かなくてはならない。
noteで、「齋藤論文×ノマドシェフ」という形で、この内容を僕の言葉で再構成する。
そして、美しい村連合への提言資料として整える。
「食と農を軸にしたネオ内発的発展」を、具体的な施策として提案する。
#これが僕の2026年のテーマ 「経営と開発」
さらに、庄内スマートテロワールと美しい村連合の連携を模索する。
庄内の取り組みは、美しい村連合が全国展開すべきモデルだ。
そして、企業のCSR担当者や、SDGsに取り組む団体に向けて、「テーマ型Narrative Catering(ナラティブケータリング)」という新しい形を提案する。
上勝町でゼロウェイスト体験。
飯豊町でバイオマス循環を学ぶ。
木曽町で景観保全の意義を知る。
食を通して、持続可能な社会のあり方を、五感で学ぶ。
齋藤論文は、美しい村連合がこれから進むべき道を、学術的に整理したものだ。
そして庄内スマートテロワールは、その実装例。
僕がやっているNarrative Catering(ナラティブケータリング)は、その文化的実装。
理論と実践が、ここで交差する。
#これを書かなくてはならない
#2026年はこれを形にする年
#料理で地域をつなぐ
#企業と地域をつなぐ
では、また。
🍽 2月〜3月のイベント詳細
🧀 チーズ博 in 表参道|2月12日〜15日
場所: 東京・表参道
内容: 白かびチーズ、ショコラミルクキャラメルシュトーレンなどを販売予定
素材の背景ごと、持っていきます。
🐑 羊を丸ごと食べる会|2月14日
場所: 東京(場所調整中)
部位ごと、調理ごとに味わいながら、羊という素材を一晩かけて理解する会です。
#バレンタインだけど羊
🐏 羊まるごと食べ尽くす会 in 鶴居村(仮)|3月6・7・8日
場所: 北海道・鶴居村 ハートンツリー
今度は現地で、3日間。
料理だけじゃなく、土地の空気ごと味わってもらいます。
北海道への飛行機は、今なら安いです。
#これは本気の宣伝
#ノマドシェフ #TRANSROOTS #鶴居村 #美しい村連合 #ネオ内発的発展 #テリトーリオ #スマートテロワール #エノガストロノミア #CSR #SDGs
今日も読んでいただき、ありがとうございます。
また、お会いしましょう。
感想や質問があれば、コメントお待ちしております。
#気軽にどうぞ
丘の上のオーベルジュ ハートンツリー
ノマドシェフ 服部大地
Instagram: @hattori.daichi
ノマドシェフとは
世界中をフィールドとして、
食材や生産者に向き合い、
インスピレーションのままに料理する料理人。
TRANSROOTS(トランスルーツ)
土地の記憶(Roots)を掘り起こし、
異なる文脈を交差(Trans)させ、
未来につなぐ。
料理と言葉で、文化を再構成していく思想。
〒085-1200 北海道阿寒郡鶴居村字雪裡496-4
電話:0154-64-2542
営業時間:
ランチ 11:00〜14:00(ラストオーダー)
ディナー 17:00〜(要予約)
木曜定休
HP: https://heartntree.jimdoweb.com/
