見出し画像

【漫画臨界点②】シュトヘル|この漫画を知らずに〈文字〉を語るな:言語学者が断言する

人間にとって文字とは何か,などという帯文に出会える,恐るべき漫画全14冊.文字が人の身体にも焼き付けられるものであることを忘れた言語学や文字論は,やはり何かを忘れているのだ.

西夏,金,蒙古…ツォグ族の皇子だの,チンギス・ハンだの,西夏の女性戦士シュトヘルだの,魅力的な人たちが多々登場するのだが,主人公はなんと砂漠に埋もれた,かの西夏文字ではないか.

漫画にとっては命の,絵も高水準である.

野間秀樹が『言語存在論』(東京大学出版会)第2章でも論じたこの『シュトヘル』.
もちろん韓国語版もある.しばしユーラシアの風を浴びられよ.

====
本来,ここまでが1分間の記事だったのですが,以前 facebookに書いた記事が出て来たので,下記に再掲します:

痛い.疼く.而して希望は失わない.


★伊藤悠『シュトヘル11』小学館。2015.07.19.
以前にもこのfacebookでご紹介しました。講演などでもしばしば触れている『シュトヘル』ですが、11巻が刊行されています。

「シュトヘル」は「悪霊」の意。fbでご紹介申し上げたように、前の巻の帯に「人間にとって文字とは何か」などという驚くべきことばが記されていました。

この作品は期待を裏切らない。文字について、そして人間とエクリチュールについて、これだけ語り得ている漫画がこれまであったでしょうか。

人々のことばがまさに力によってあたかも焼き尽くされようとしている今日、私たちの胸の深いところに響きます。ことばと絵が、人間とことばと文字を語る。

痛い。うずく。しかして希望は失わない。漫画賞というものがありますが、今こそこういう作品に受賞してほしいと思います。それほどの傑作であり、かつ時代に共鳴しています。もっとも作品が既に、そうした地平を遙かに超えていますが。

どんな文字も焼かれてはいけない


この投稿では、ごくわずか、作品の一部を掲載、以下に引用しています。多くの方々と共にしたいという気持ちからです。宣伝としては至らないものかもしれませんが、作者と出版社にはお許しいただきたいと思います。けしからんということでしたら、すぐに削除致します。

「虎の牙でも時代を喰い破れはしない。」「殿が、モンゴルがすなわち時代そのものなのだ。」という時代の物語。
「いつも生が死の先を走る。」「死に方は生き方を汚せない。」シュトヘルのことばです。

滅び行く西夏の王子ユルールは大ハーンに向かって語ります。「背に苦しみを灼かれたこどもの。」「力になる。」「人と人とを結び。」「かけられる土砂をはねのけて。」「文字たちは人と生きようとする。」…「文字の形の火の傷が、ただの意味を持たない火の傷に変わるまで。」「その文字を焼き尽くし、この世から消し去ろうとする人がいるのだと、知った。」「それでも西夏の文字は…」「いや、」「どんな文字も焼かれてはいけない。」

A parallel line of thought in English unfolds here:
Words Do Not Contain Meaning — They Become Meaning | by Hideki Noma | Jun, 2026 | Medium


いいなと思ったら応援しよう!