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【映画紹介】『ボウリング・フォー・コロンバイン』


主な感想はFilmarksへ。

笑いという攻撃には誰もが屈する

マーク・トゥエイン

マイケル・ムーア監督がよく引用する言葉らしい。
なるほどこれは面白い。
攻撃に屈するとは随分暴力的な響きだが、ユーモアには人を動かす力があると言いたいのではなかろうか。
その通りだと思う。世の中はこんなに悲惨であるとか、あなたは愚かであると言われても行動を変える人は滅多にいない。
あまり意識せずに観ていたが『ボウリング・フォー・コロンバイン』はテーマに対して随分ユーモラスなアプローチをしている。
弾丸がアメリカの歴史を語るアニメなど笑わずには見られないだろう。

この映画で最も驚かされたのは銃規制と射殺事件には関連性が無いという部分だ。
以前読んだ『0ベース思考』でもこのことは紹介されていた。
信じられずにいたのだが、カナダは1000万世帯に700万挺の銃があるが年間の銃による犠牲者は165件であると語られると流石に考えが変わる。
もちろん銃が一挺も無い場所では銃の犠牲者などいるはずがないので銃規制は有効な部分もあるだろうが他のアプローチもあるようだ。
これにはマイケル・ムーア監督もかなり意表を突かれたらしく、予定が狂ったのか映画内での行動に若干整合性が取れていない。

マイケル・ムーア監督の結論。
「恐怖の文化」こそが射殺事件が多い原因である。
メディアが恐怖を生み出し人々の心を満たしているからこそ誰もが銃を手放せずに発泡してしまう。
本当だろうか?
この映画で取り上げられるアメリカのニュース番組などは日本のものと大差ないように感じた。
そこに原因がありカナダは違うのだとしたら私たちは随分アメリカナイズドされているらしい。

更に今はSNSがある。2002年はマスメディアこそが諸悪の根源であったかもしれないが今や個人で発信ができる。
マスメディアは曲がりなりにも取材をしたりあからさまなデマは撒き散らさないシステムが一応はあるが、SNSはあからさまなデマが平気で罷り通る。
SNSが分断を煽りますます人々に恐怖を与えているのは間違いないだろう。どんどん世の中が悪くなっている気がするのも気の所為ではないのかもしれない。

振り返るとコロンバイン銃乱射事件はアメリカで起きる多くの射殺事件の一つという位置づけでそれほど掘り下げられていないように思う。
事件の原因と言われたマリリン・マンソンが知的で冷静なコメントを残しているのが記憶に残った。(今度曲を聴いてみよう)
マリリン・マンソン曰く、自分たちのせいにするのはわかりやすいからだ、と。
マイケル・ムーア監督は問う。犯人たちは事件直前にボウリングをやっていたのにボウリングが原因の可能性は考えないのかと。
わかりやすい結論に飛びつくのは人間の悪癖だ。(世界はシンプルだと力説する本など反吐が出る)
マイケル・ムーア監督はアメリカの重犯罪の多さの原因を恐怖の文化に求めたが、コロンビア銃乱射事件ひとつを取ってもそれだけで本当に説明することはできないだろう。
いじめ問題があったことなどはよく言われるが『ボウリング・フォー・コロンバイン』はその点についてはまったく掘り下げなかった。

気になったことは映画のラストにあるヘストンとの対話だろう。
これはあまりよろしくなかった。ユーモアも無いし有意義な対話とは思えなかった。

監督はヘストンに自衛の銃に弾を込めることを非難したり、襲われたことがないのに自衛することについて疑問をぶつける。
ヘストンの言う通り自衛の銃には弾を込めないと意味が無いし殺されてから銃を持っていれば良かったと後悔することはできない。
せっかくチャールトン・ヘストンと話しているのに短時間のインタビューでこんなやり取りをするのは無駄だ。
アメリカではなぜ射殺事件が多いのかという質問も意味はないだろう。
突然やってきて急にそんなことを聞かれても、「流血の歴史」みたいなアバウトで意味のない回答になってしまうのは仕方がない。しかもマイケル・ムーアはそれが間違いであると答える準備をしている。これでは誰もがヘストンと同じく「君はもうだいぶ追究したようだ」と答えるしかない。(話は逸れるがこれはやたらと政治の話をしたがる人と同じ問題がある。その手の話題を無闇にする人はただの愚痴を政治というカモフラージュで高尚な内容に見せかけるし、何より政治知識でマウントを取ってくる。政治というのは専門的な内容なので真面目に話すなら事前準備が必要だ。急に自分の土俵で話されても「君はもうだいぶ追究したようだ」としか言えない)
しかし、ヘストンのような立場の人たちは常に射殺事件の原因について考えておくべきだと言うのならば、同意見だ。

総評としてはかなり面白いドキュメンタリー映画だ。
日本人にはなかなかピンとこない銃とアメリカの関係について少しは知ることができたように思う。
この映画の論で行くと日本で銃規制が緩んだりした日にはそこら中で銃声が聞こえることだろう。
永遠に銃の手に入らない国であってくれ。

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