【片想い文芸部】「心の中の落とし物」
ずっと好きだった。
お姉ちゃんの友達を、ずっと好きだった。
僕は小学四年生。
ノリちゃんは小学六年生。
身長も20センチくらい違う。
六年生から見たら、四年生なんて子供にしか見えないと思う。
叶わない思いだと、心のどこかで分かっていた。
好きになっても仕方がないって。
頭で分かっていても、心は分かっていなかった。
四年生で入ったクラブ活動。
偶然ノリちゃんも同じクラブだった。
嬉しくて嬉しくて、クラブの日が待ち遠しかった。
なぜかノリちゃんは、いつも僕に声をかけてくれる。
そしていつも僕をからかってくる。
「もう!ふざけないでよ!」
僕が言うと、
「怒ったの?怒ってる顔、かわいい〜。女の子みたい」って頭をナデナデされた。
「やめてよ!」
僕が大声を出すと、笑いながら逃げて行く。
僕はノリちゃんを追いかけた。
スポーツ万能なノリちゃんに追いつくはずもないのに、真っ赤な顔で追いかけた。
本当は怒ってなんかない。
『かわいい』って言われて、天にも昇りそうなほど嬉しかった。
頭ナデナデも、本当はもっとして欲しかった。
ノリちゃんの温もりが感じられるから。
追いかけっこも、ずっとしていたかった。
僕だけがノリちゃんと遊んでいるように思えたから。
もっと大人になれば、二歳年下なんて普通だよね?
小学生では大きな差かもしれないけど、中学生なら?高校生なら?大学生なら?
毎日そんなことを考えていた。
ある日、お姉ちゃんから、ノリちゃんが転校すると聞いた。
ずっと遠くの学校に。
もう会えないほど、遠くの学校に。
頭は真っ白……いや……
白もない……
からっぽ……になった。
何をしても楽しくなかった。
毎日夜が続く心の空に、太陽は昇らなかった。
ノリちゃんが旅立つ日……
「見送りに行くよ。来る?」
お姉ちゃんが声をかけてくれた。
でも、他に行く人は六年生ばかり。
僕が行ったら……完全に浮いてしまう。
「行くわけないじゃん」
本当は行きたかった。
一目だけでも会いかった。
お姉ちゃんが玄関を出る。
今なら一緒に行ける。
『待って!行く!』
そう言えたら、どれだけ心が晴れただろう。
太陽は昇らないとしても……
お姉ちゃんの影が視界から消えた。
僕は家でひとり、土砂降りの雨を抱えていた。
※
お姉ちゃんが帰ってきた。
「お前も来れば良かったのに」
そう言って僕に、一通の手紙をくれた。
ノリちゃんの字……
いつもからかってばかりで、ごめんね。
わたし兄弟がいないから、弟みたいでかわいかったの。
もし今度こっちに来たら、またいっしょに追いかけっこしようね。
目の前が霞んで見えなかった。
手でゴシゴシ目をこすって、何回も手紙を読み返した。
そのたびにまた目が霞む。
耐えきれなくて……下を向いた。
床の上に落ちる滴
それは
遠ざかる太陽が
置き去りにした雲の雨
僕の体を包み込み
波のように押し寄せる
優しく切ない思い出の日々
もう戻ることのない
心の中の落とし物
また参加させて頂きましたぁ!
ナルさん!この文芸部、切な楽しいです。
よろしくお願いします🙇
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップは活動費に使わせていただきます!