19時17分発のバスに乗って
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雨が小降りになるまで、とカフェでお茶を飲みながら本を読んでいたら、こんな時間になってしまいました。
お勘定を済ませてお店を出、坂道をだいぶ下ったところで私はふと立ち止まりました。地下鉄の駅とは反対方向に来てしまったようです。
この坂を登って戻るのはイヤだな、と思い、そのまま下って大通りに出ることに。
この道は前にも来たことがあるなと思いました。日が暮れて暗くなっていたので、すぐにはそのことがわかりませんでした。
この道沿いには不思議なバス停があります。1週間に1便、土曜日の19時17分にしかバスが来ないのです。なぜそのようなダイヤなのか、どんな人が利用するのか、全くの謎です。
そのバスの行き先は渋谷駅となっています。ここから渋谷までバス1本で出られるなんて便利。もっと本数を増やせばいいのにね、と思っていると、坂の上から1台のバスがスーッと走って来て止まりました。
ちょうどよかった。これで渋谷に出られれば楽です。ICカードを運転席のそばの読み取り機にかざして乗り込みました。
車内を見渡すと、座席はほぼ埋まっていました。乗客はお年寄りが多いでしょうか。シルバーパスで乗り放題ですものね。おととし亡くなった義母も、電車で行けば早いものを、電車賃がもったいないからとどこへ行くにも路線バスを乗り継いで出かけていましたっけ。
仕事帰りと思われる、ちょっとメタボなサラリーマン風のおじさん。なんだか疲れた感じの若い女性。小さな子供も乗っています。ひとりで大丈夫?と思いましたが、当人は慣れた風で首から下げたキッズケータイでゲームに興じています。
バスのエンジン音と、次のバス停を知らせるアナウンスの他は、とても静かです。これから家路に向かうのだというホッとした空気が車内に満ちていました。
山手通りから左折して、東急百貨店の跡地の辺りまで来ました。渋谷駅はもうすぐです。お盆休みで悪天候ということもあって、道は空いています。私が乗った後、誰も乗って来ることはなく、降りる人もなく、他のバス停には一度も止まらずに終点まで来ました。
「このバスはこのあと車庫に入ります。お忘れ物のないようお降りください」とアナウンスがあり、ドアが開きました。ドア近くに座っていた私はすぐに降りることができました。
振り向くと、灯りが消えて誰も乗っていないバスが走り去っていきます。
そういえば、終点で降りたのは私の他は誰もいなかったようでした。
この時になって、私はようやく気づいたのです。
今日は土曜日ではなかったことに。
今日は送り盆。

